2020年01月09日
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UQ HOLDER連載第168回感想【ネタバレ注意】

Written By: 川俣 晶連絡先

「ああ、分かった!」

「何だよ」

「山田ミネコのパトロールシリーズのあの味を久々に味わえたんだよ」

「意味が分からない」

「つまりだね。最初に西塔小角は死ぬ寸前のセラフィムに会うわけだ。その後で若いセラフィムに会いに行くわけだ。タイムパトロールとして」

「あらすじがUQとぜんぜん違うよ」

「つまり、出会う順番が違う違う恋愛ものということさ。物語の組立が割と面倒くさいからなのか、あまり見かけないパターンだ。そうか、それを正面に据えてまさにそれだけに特化したエピソードとして見せてくれる訳か。面白いぞ、UQ Holder!」

「大人の雪姫が初恋の相手を子供として育ててしまう世界だね」

「刀太の視点から見ても、成長した刀太が出会うのが未熟なエヴァンジェリンだからな」

「すれ違って矛盾しているわけだね」

「それはさておきだ」

「まだなにかあるのかい?」

「心情描写が凄く良いので感心した」

「どのあたり?」

「刀太の【勘違い】発言のあたりなんか凄くいいぞ。こういう本気の羞恥心や後悔をきちんとストレートに描ける人は、実はそれほど多くないと思うよ」

「それは重要なところ?」

「そうさ。それが人の心だからね。もっとも、人の心がそういうものだという理解にすら達していない人も多いから話がややこしくなるけどね」

「他に良かったところはある?」

「覗き」

「えー」

「マシンロボレスキューに第35話【誠の初恋物語】というのがあってな。これが他人のデートをずっと見ているようなエピソードでな。そういうのがまた見られた気がするよ」

「覗くだけなら前にもあっったような」

「こういうストレートな恋愛エピソードで覗くから良いのだよ」

「じゃあさ。心をちゃんと描いた事例って、UQ Holderの他に何があるわけ?」

「一例をあげれば、山田ミネコの諸作品とか、マシンロボレスキューとか」

「もう聞いた名前だ」

「しかし、UQ Holder以外の話をしてもしょうがない。話をUQ Holderに絞るぞ」

「何かまだあるのかい?」

「実は、ここまでストレートに恋愛要素に絞り込んだエピソードはUQ Holderでは珍しい。珍しいのに、もの凄く良くできていてレベルが高い。確かにこれは読むに値すると思うよ。ちゃんと楽しめた」

「それは重要なこと?」

「なんとなれば、刀太がなすべき最も重要なことが雪姫の救済だからだ」

「そうか。刀太による雪姫の救済か」

「結局、UQ Holderは第1話からして話の内容が刀太による雪姫の救済だったからな」

「救済する前に追い詰めていたような気がするけど」

「最も懸念事項もある」

「なんだよ」

「雪姫が救済されてしまうと、実はUQ Holderの物語は終わってしまう可能性がある」

「なぜそれを懸念するんだ?」

「魔法先生ネギま!の時は、ネギがラカンに勝ってしまった時点で事実上物語が終わってしまい、後はオマケみたいになってしまった印象があるのでね。ゲーデルが出てきてもあまり物語が円滑に動かない感じで」

「美少女が多くてもダメ?」

「絵にはなるけど物語はビジュアルではない。抽象的なものだ」

「今回のUQ Holderにも懐かしの美少女達が出てくるよ」

「過去の存在。石像としてな。生身では出てこない。しかし、それでいい」

「なぜいいの?」

「だって、今回はあくまで刀太と雪姫の心が近づいたり離れたりする話だからさ。それ以外の人間はノイズなんだ」

「刀太はそのノイズに悩まされて道を誤るわけだね」

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