2020年02月27日
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三百字小説『トンネルの皆さんのおかげです』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 トンネルは考えた。

 自分が大切にされ、いつも綺麗にメンテナンスされるのは、みんなが使うおかげだ。

 「トンネルがこんなに綺麗なのは使ってくれる皆さんのおかげです」と言ってトンネルはいつも利用者に感謝していた。

 だが、ある日新道のバイパスが開通した。

 それっきりみんなトンネルを通らなくなった。

 トンネルは荒れ果てた。正規の道はバイパスになり、トンネルはメンテナンスの対象から外れたのだ。

 「俺はもうダメだ」トンネルは荒れ果てた。

 だが急に利用者が増え始めた。

 廃道マニアが集まってきたのだ。

 だが、トンネルが昔のように綺麗になることはなかった。

 廃道マニアは荒れ果てたトンネルが大好きだったからだ。

 トンネルはがっかりした。

(遠野秋彦・作 ©2020 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦