トンネルは考えた。
                     自分が大切にされ、いつも綺麗にメンテナンスされるのは、みんなが使うおかげだ。
                     「トンネルがこんなに綺麗なのは使ってくれる皆さんのおかげです」と言ってトンネルはいつも利用者に感謝していた。
                     だが、ある日新道のバイパスが開通した。
                     それっきりみんなトンネルを通らなくなった。
                     トンネルは荒れ果てた。正規の道はバイパスになり、トンネルはメンテナンスの対象から外れたのだ。
                     「俺はもうダメだ」トンネルは荒れ果てた。
                     だが急に利用者が増え始めた。
                     廃道マニアが集まってきたのだ。
                     だが、トンネルが昔のように綺麗になることはなかった。
                     廃道マニアは荒れ果てたトンネルが大好きだったからだ。
                     トンネルはがっかりした。
                    
                    
                    (遠野秋彦・作 ©2020 TOHNO, Akihiko)