Written By: 川俣 晶
ドラクエ2MSX版移植者が語る・あなたの知らないコンピュータRPGの1970年代史 ~始まりはWizardryでもUltimaでもなく……~
「これはなんだい?」
「新刊だ」
「何が書いてあるんだい?」
「近年の研究でコンピュータRPG(CRPG)の元祖はWizardry、Ultima、Rogueではないことが分かっている。00年代のあたりから分かっていたことだが、最近まで知らなかった」
「古い話だね」
「まあそうだ」
「それをあえて書こうと思った理由はなんだい?」
「Apple-IIより古いプラットフォーム、PLATOが気になったからさ。実は、マイコン文化に先行するTSS文化を扱った本は1970年代パソコンとBASICの歴史: Altair 8800やTK-80は始祖ではなかったなど少し書いていたがPLATOはノーマークだった」
「なぜノーマークだったんだ?」
「たぶん、BASIC文化圏にはいないから」
「BASICじゃないの?」
「TUTORという言語で書くのだ」
「無名だね」
「だが、留年生が出るほどTUTORで書いたCRPGは流行っていたらしい」
「そんなに?」
「PLATOの端末はモノクロとは言え512x512で、様々なCRPGやその他のゲームが生まれていた。マルチプレイヤーのRPGまであったという。明らかにこれは自分には無視できない世界だ。マイコン/パソコン文化が勃興する前にあったTSSホビーコンピューティング文化の有力な存在だよ」
「なるほど。でもそれだけでは本として書くには弱いのではないか?」
「そうだな。もう1つある」
「それはなんだい?」
「火星のプリンセスだよ」
「バロウズがどう関係するんだよ」
「それは読んでのお楽しみ」