蝉達が運営する鉄道会社は苦境に立っていた。ライバルのカブトムシ鉄道が運行するカブトッキュウに人気を取られてしまったからだ。
しかし、あれを越える速度の特急は無理だった。
そこで、蝉たちは、速さは劣るが停車駅がより多くて便利な蝉エクスプレスを運行することにした。
だが蝉エクスプレスにはすぐに苦情が殺到した。
「蝉におしっこをかけらた!」
トイレをケチってタンクを設置せずに車外に垂れ流す仕掛けがアダになった。
蝉エクスプレスはすぐに運行停止になった。
蝉の命は短かった。
(遠野秋彦・作 ©2020 TOHNO, Akihiko)