2021年06月14日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 675 count

三百字小説『挺身隊、進退窮まる!』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 挺身隊は敵軍司令部を奇襲すべく適地奥深くに潜入していた。

 だが、進退が窮まっていた。

 前方には警戒厳重な防衛線。

 後方には緻密な警戒網が敷かれていた。

 前にも進めず後退もできなかった。

 「隊長、いったいどうしたらいいんですか」

 隊長は考え込んだ。死ぬ覚悟をして挺身隊に志願したが、司令部と差し違えるならともかく、こんなところでは死にたくなかった。

 「自分に提案があります」と部下の一人が言った。

 「なんだ」

 「スマホの経路検索です。これで敵を迂回するルートを調べさせます」

 「なるほど! それは名案」

 敵を迂回して司令部まで行くルートは一つだけあった。

 「よし、行くぞ!」

 だが、スマホの電波を出したので既に敵に察知されていた。

(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦