2021年10月18日
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三百字小説『私の中野』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 「中野っていいよね」

 「わかるー」

 「私の中野、大好き」

 「わかるー」

 「中野サンプラザとか」

 「わかるー」

 「中野ブロードウェイも個性的でいいのよね」

 「わかるー」

 「でも線路の反対側のなかのZEROもSLが展示してあって渋くていいのよ」

 「わかるー」

 「JRの車庫もあって電車も見られるのよね」

 「わかるー」

 「東中野を通過する列車も中野なら停まることが多いし」

 「わかるー」

 「あとは、環七! やっぱり環七こそ東京の道路って感じよね。特にあの大和陸橋!」

 「……」

 「な、何よ」

 「そこ、中野区中野じゃないんで」

 「中野区じゃない」

 「でも、中野じゃない」

 「……」

 「……」

(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦