2021年12月13日
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三百字小説『ヒレ掴んだ卑劣漢』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 僕は人魚姫に恋をした。

 「人魚姫、一緒に水中デートをしよう。そのために酸素ボンベも用意したんだ」

 「まあ。王子様ではないけれど意外とイケメン。まあいいわよ」

 「やった!」

 「でも泳ぎが遅そうね。私の身体に捕まりなさい。私が泳ぐわ」

 「分かった」

 「でも、変なところは触っちゃいやよ」

 「もちろんさ」

 僕は人魚姫に抱きついた。

 「きゃっ! 変態!」と人魚姫が叫んだ。

 「えっ? ヒレしか掴んでないけど」

 「女の子のヒレを掴むなんて失礼よ! この卑劣漢!」

 僕はヒレを掴んだ卑劣漢になった。

(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)

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