土井ミミは貧乏だったので、サンドイッチ屋からパンの耳を買って食べて暮らしていた。サンドイッチ屋は、商品から耳を切り落として売っていたので、耳は全てゴミになっていたのだ。
ところが、あるとき、耳付きサンドイッチがブームになり、サンドイッチ屋は耳を捨てなくなった。
ミミは主食が消えてピンチに陥った。
止むを得ず、ミミはサンドイッチ屋に忍び込み、パンの耳だけ盗もうとした。
だが、店主が見張っていた。
「おまえにやる耳などない」
「じゃあ具を」
「もっとないわ」
ミミがすごすごと帰ると、死神が待っていた。「あらゆる美食が食べれる天国と、パンの耳が好きなだけ食べられる天国、どっちに行きたい?」
ミミは即答した。「耳」
(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)