2022年04月05日
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三百字小説『いなご対おなご』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 いなごは、おなごに一目惚れした。

 「お父さん、その麗しいおなごを嫁に下さい」といなごは結婚を申し込みに行った。

 「虫なんかに娘をやるのは嫌だな」

 「コガネ虫からもらった小判を千枚あげます」

 「ふつつかな娘だがよろしく頼む」父はすぐに手の平を返した。

 山奥のいなごの家におなごは連れて行かれた。

 「私はどうすれば良いのですか?」

 「私が死ぬまで山は降りないこと。ルールはそれだけだ」といなごは言った。「それより何か得意な料理を作ってくれ」

 「はい」

 おなごは得意料理の佃煮を作った。できあがったとき、なぜかいなごはいなくなっていた。

 おなごは佃煮をお土産に家に帰った。

 「うん、これは美味いイナゴの佃煮だ」と父母は喜んだ。

(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)

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