僕はミュージシャンだったがライバルが多くなかなか仕事がなかった。
そこで、泳ぎなら演奏するという技を特訓して、プールサイドで行われるパーティーに売り込んだ。
狙いは当たって、僕は防水電子楽器を抱えてプールに浮かびながら演奏を繰り返した。
だが、ある日、プールサイドで踊りたい酔客から「スイングをやれ」と言われた。
ジャズも囓っていた僕は泳ぎながらノリノリの音楽を演奏してみせた。
拍手喝采だった。
そんな僕に、水中バレエ団から声が掛かった。踊りの伴奏を泳ぎながら生演奏して欲しいというのだ。特にスイングが希望だった。
僕は喜んで、水中で踊る人魚達とプールの中で競演した。
僕は安定した仕事にありついたのだ。
(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)