リビアのトブルクには、飛行倶楽部があった。彼らの目標は、手製の飛行機で地中海を越えてクレタ島まで行くこと。
クレタ人が彼らにアドバイスした。
「クレタ島は遠くないよ。足を鍛えて人力飛行機で行けるって」
そこで、飛行倶楽部はみんなで身体を鍛え、人力飛行機を製造した。
郊外で何度も試験飛行を行い成功した。
飛行倶楽部で最も脚力がある少年が人力飛行機に乗り込んだ。
「では行ってくる」
しかし、彼は途中で地中海に墜落し、漁船に助けられて戻って来た。
「誰だよ、クレタ島は近いと言ったのは」
「クレタ人だよ」
「どのクレタ人だよ」
「さあ」
クレタ人は嘘つきだった。
(遠野秋彦・作 ©2022 TOHNO, Akihiko)