無謀解説宇宙戦艦ヤマトなどという企画をぶちあげたものの、ガンダムネタをガンガンやってる(←寒い)ために、さっぱり書く余裕がありません。
今日は別の話題を。
『宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ち』についてです。
ヤマトの諸作品は、様々なバリエーションがあるものの、少なくとも納得の行く筋の通った結末を付けた作品はほとんど無いと感じます。
当然のことながら、島、相原以下18名を除き全員殺した「さらば」は論外レベルとして、いったいどこに意味があるのか分からない「完結編」における沖田の最期や、ヤマトIIIにおける準主役級の二人の若者を死なせる結末など、「なんで?」ということが多すぎます。そして、テレビ第1シリーズですら、理由不明の森雪の蘇生や、ご都合主義としか言えない真田の「こんなこともあろうかと作っておいた空間磁力メッキ」で終わります。
これらと比較して、「新たなる旅立ち」は奇跡的に、まともな結末を付けていると感じられます。
では、「新たなる旅立ち」とはどんな作品なのか。
一言で言えば、軍事衝突が限りなくエスカレートする不毛な話と言えます。
ストーリー的に言えば、まず、ガミラス星に黒色星団帝国が有益な資源ガミラシウムを採掘しにやってきます。次にデスラー率いるガミラス星の生き残り艦隊がガミラス星に帰ってきます。すると、謎の船団が母なる星を掘っているというので、逆上してこれを攻撃します。攻撃された船団の方は、謎の艦隊に理不尽な襲撃を受けたと思って、味方の艦隊に連絡します。ガミラス星は戦闘の流れ弾で地下資源を誘爆して爆発してしまいます。この時点で、既に不毛です。
そして、デスラーは、ガミラス星と連星を組むイスカンダル星のスターシアを救おうとします。しかし、そこに黒色星団の艦隊が到着して、ガミラス艦隊を攻撃します。今度はガミラス艦隊がイスカンダルを守りつつ壊滅的な打撃を受けますが、そこに宇宙戦艦ヤマトが到着して、形勢は逆転します。
しかし、黒色星団は、巨大宇宙要塞ゴルバを投入します。圧倒的なゴルバの攻撃力と防御力の前に、デスラーもヤマトも為すすべがありません。そこで、デスラーは自分の乗る艦を宇宙要塞の砲口に突っ込ませ、防御装甲が閉じられないようにした状態で、ヤマトに自分ごと撃てと言います。
そこで、スターシアが、貴重な地下資源イスカンダリウムを提供すると宣言して、戦闘を収束させます。しかし、スターシアは愛する夫と娘を逃がすと、イスカンダルを自爆させ、ゴルバを道連れにします。
この結末のポイントは2つあります。
1つ目は、エスカレートする不毛な軍事衝突という男性の論理に対して、スターシアはむしろ女性的な論理で待ったを掛けたと見なせることです。戦えば戦うほど熱くなりエスカレートする戦いには、何の生産的な結末もあり得ません。何もかも破壊し尽くして終わることしかできません。そこに至る前に、待ったを掛けることができたのは、スターシアだけだったわけです。その点で、単純に敵と味方が戦い勧善懲悪になる他の作品とは明らかに異質です。
2つ目は、ゴルバを道連れにして自分ごと星を破壊するというスターシアの選択は、関係者や夫と娘の将来の繁栄という意味から、ある種の合理性を持った決断であったと言えることです。戦乱のタネとなるゴルバをここで破壊し、あわせて戦争の道具になりかねないイスカンダリウムを破壊し去ることは、戦争の可能性を減らします。そして、たとえ彼女自身が死んでも、イスカンダル人の血は、娘が伝えてくれるわけです。その意味でも、娘の将来を安全にすることは、イスカンダル人の血を残すという意味で、非常に意味のある選択といえます。
まあ、最後の死んだスターシアと生き残った人たちが会話するシーンは、明らかにやりすぎだと思いますが。
それでも、ヤマトシリーズの中では、唯一納得の行く結末であるように感じられます。
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