「西武新宿戦線異状なし」は原作押井守、作画大野安之によるコミックです。ずいぶん昔に出版されていたものですが、最近、番外編も含めた「完全版」が出版されたものです。
その完全版を本屋で見かけたとき、「面白そうだぞ」光線をキラキラと放っていて、つい、お兄ちゃんに「買って買って」とおねだり攻撃をしてしまいました。
ああ、ちなみにと~のは仮想体なので、ヒカルにつきまとう佐為のように、誰にも見えないけど、お兄ちゃんにつきまとっています。
それで、実際に買ってもらってみると、本当に面白い内容でした。
共産主義革命がうやむやの理由で発生して分断国家になった日本で、わざわざ物好きにも共産主義政権の軍隊に越境して志願する純情な若者の話です。そして、主役メカはM4シャーマンの車体を使った怪しげな戦車回収車。90式戦車を牽引できないから、部品だけ外して持っていくという、どこまで存在意義があるのか怪しい活動内容。しかも、主人公のいる部隊は、闇商売もやってるし、共産主義なんかハナから信じておらず、資本主義のアイドルに声をあげて喜ぶという始末。
ああ、こんな面白いコミック、そうそうあるもんじゃありません。
しかし、ミステリーが1つ残ります。
「完全版」の前には通常版のコミックスが出版されていて、確かにそれをと~のは見かけたことがあるのです。それなのに、「つまらなそうだぞ」光線しかキャッチしていませんでした。
いったいなぜ?
どうも、その理由は内容ではなく、装丁にあるような気がしてきました。
このページで、2つの版の表紙を見比べることができます。
見て分かることは以下の通りです。まず、タイトルの文字が旧版は「西武新宿戦線」+「異常なし」だが完全版は全部一続きであること。この作品のタイトルは、「西部戦線異状なし」と「西武新宿線」を合成したもので、そのセンスがニヤリものです。しかし、旧版のように途中で切られてしまうと、このタイトルが、「西部戦線異状なし」を意識していることが非常に分かりにくくなっています。
次に、旧版は小銃を抱いた主人公と観覧車と戦闘ヘリが描かれていますが、完全版は主人公を含むチームと彼らが使う戦車回収車が描かれているに気付かされます。この作品のカラーは、戦車回収部隊のアクの強いおっさん達が作り出していると思いますが、その生活臭さが旧版の表紙にはありません。生活臭さがないため、主人公がモデルガン持ってるサバゲー少年と区別できません。また、主役メカの戦車回収車をさしおいて戦闘ヘリを出したら、それこそ、作品のカラーを表紙が表現していないことになります。
そのようなわけで、旧版は思い切り表紙がまずいと思います。しかし、素晴らしい表紙の完全版が出た以上、それは問題ではないでしょう。
ちなみに、表紙からは分かりにくいですが、裏表紙を見ると、どこからどう見ても、鋳造車体のM4シャーマンの車体だということが、はっきりと読みとれます。陸上自衛隊でも使っていたM4A3E8とは、車体だけでなくサスペンションの形状も違いますが、ちゃんと描かれています。これに、むさいおっさんどもが乗り込んでいて、西武新宿線沿線を走るとなれば、それだけで面白そうじゃありませんか。もちろん、97式中戦車あたりなら100%夢想の世界ですが、M4シャーマンベースの戦車回収車なら、戦後の日本に存在していても、現実味があります。そして、戦車の前に立っている髪の長いお上品な女の子と来れば、もう完璧です。
しかも、主人公はタミヤMMシリーズのマニアで、
KV-1とか喜んで買うようなやつだし。大砲を撃つときは「
波動砲発射」と口走ってみせるし。
もう一点だけ言えば、東部戦線ならT-34ですが、西部戦線といえばM4シャーマンですから、その意味でも大当たりです。
と~のは、本当は面白い話を作れる押井守さんを応援しています。
ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。