2003年06月11日
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桃太郎に新たな可能性は残されているか?

Written By: 遠野秋彦連絡先

 やは、遠野だ。

 遠野の新作小説が最後に世に出たのは、2002年10月25日販売開始の電子商取引殺人事件( https://www.piedey.co.jp/pub/index.html#B102030014 )ということになるが、もちろん創作活動を停止したわけではない。

 いくつか、仕上げて刊行しなければならないものもあるし、発表の場が無くて浮いていた短いものはこのサイトで2週間ごとに公開することを予定しているが、それとは別に完全新作も企画している。

 現在構想しているものは、誰でも知っている桃太郎だ。

 なぜ、桃太郎なのか。

 それは、小説がコミュニケーションであるならば、書き手と読者の間に何か共通の基盤が必要だろう、という前提からスタートした結論だ。たとえば、拙作の代表作と言えるイーネマス!( https://www.piedey.co.jp/pub/index.html#B102030010 )はけしてつまらない小説だとは思わないが、読者との間に何も基盤がないという意味で、手を出しにくいという危惧がある。もちろん、そういう読者に読まれるように配慮して書かれているが、本を読む気になってくれなければ、その配慮は何の効果も発揮しない。

 そこで、何が基盤になりうるかと考えたが、世代を越えて基盤となる何かとなると、それはなかなか思い浮かばなかった。最終的にたどり着いたのは、昔話だった。その代表作として、桃太郎を選んだわけだ。

 しかし、少し調べると、桃太郎を自分流に書くという試みは珍しくなかったらしい。たとえば、芥川龍之介の桃太郎( https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card100.html )が見つかった。かなり大胆な内容で、これはこれで面白い。

 別の切り口から調べてみると、今、我々が知っている桃太郎は明治時代に成立したらしいという意外な話が出てきた。昔から伝えられる物語を全て事実であると見なして構築するというアイデアはこれで無意味になった。昔から伝えられていないからである。

 調べているうちに、柳田國男が「桃太郎の誕生」という本を出していることが分かった。一応、読んでみたいと思って調べたが、入手可能かどうかも良く分からなかった。しょうがないので、インターネット上の古書店で調べて、これが収録されている「定本 柳田國男全集 第八巻」という本をオーダーした。だが、相手は何と鹿児島の古書店だった。笑ってしまう話だが、21世紀にもなって、情報化が進んだ結果によって得られたのは、電子書籍として必要な本を手に入れるサイバー感ではなく、古書を鹿児島から気軽に買うことができる環境だった。

 この本は、実は時間が無くてまだ少ししか読んでいないが、面白いことも書いてある。桃太郎が本当は、誰もが知っている桃太郎ではなかったことも良く分かる。

 今、いろいろなことでドタバタしているが、それが終わったら読み通してみたい。

 というわけで、遠野は創作作業の手順を遂行中だ。しかし、創作作業とは、単にキーボードを叩くことを示すわけではなく、その前にやるべき膨大な作業が存在する。それが完了せずにキーボードを叩いても作品は出来上がらない。まあ、そういうものなのだ。

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