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2004年03月19日
川俣晶の縁側ソフトウェア技術雑記total 4089 count

SFUでもcygwinでもなく、他の選択を求める理由

Written By: 川俣 晶連絡先

 @ITのInsider's Eye SFU 3.5はなぜ無償化されたのか ―― Services for UNIX最新版を無償化したマイクロソフトのマーケティング戦略 ――という記事で、SFUが無料化されたことを知りました。まあMSDNに入ってきていたので、特に無料になっても私個人が利用する上で安くなる訳ではありませんが。

 この元UNIXミーハーが、この手のソフトに興味があるのは事実ですし、SFUをインストールしたこともあります。他に、cygwinも使ってみたことがあります。

 しかし、これらは日常的に使っていません。

 たとえSFUが無料になっても、どんなに出来が良くなっても、これをメインとして使うことはないでしょう。

 それどころか、NT版UNIX-like toolsなどというものまで、既存ソフトの移植という位置づけではありますが、自前で手がけています。UNIXとの互換度という観点から見れば、勝負にもならないほど負けているこのNT版UNIX-like toolsを使うのはなぜでしょうか。SFUが無料になってすら、それを使わない理由はなでしょうか。

全てはMS-DOSを256倍使う本とMS-DOS Toolsから始まった §

 現在、Windows上でUNIX風のツールを使う主な理由は、UNIX(やLinuxなど類似OS)に慣れた利用者がスムーズにWindows上で作業をするためであったり、UNIX用のソフトウェアをなるべく少ない手間でWindows上で実行可能にするためであったりします。

 しかし、これらとは異なる目的で、Windows上でUNIX風のツールを使うというやり方があります。

 これは、1980年代にアスキーから出版されたMS-DOSを256倍使う本というシリーズと、MS-DOS Toolsというソフトウェアにルーツを持つものです。これらは、MS-DOS用のUNIX風のツール群を比較的安価に販売し、かつ、それをどう使うかを、UNIX慣れしたベテランの手で書き下ろされた解説書も販売するという上手い構成の商品でした。

 これにグサッと胸を突かれてMS-DOS上でこれらのツールを使い、巧妙なバッチの数々を活用するようになったユーザーもけして少なくはないと思います。

 ここで1つだけ強調しなければならないのは、これらのUNIX風ツール群は、MS-DOSをUNIX互換にするために提供されたものではなくい、ということです。つまり、MS-DOSというOSの構造に忠実に従う構造になっていて、MS-DOSの構造を隠すような構造ではなかったということです。たとえば、SFUやcygwinは、Windowsのファイルシステムの構造を隠しますが、このToolsは隠しません。ファイルやディレクトリのフルパスを表示するツールを使うとすぐ分かります。

 たとえば、SFUでpwdを使うと、こんな感じの結果になります。

% pwd

/dev/fs/D/home/autumn

 このように、MS-DOSやWindowsのパスとは似ても似つかないパスが表示されます。本来あるはずのドライブレターはパスの一部に組み込まれてしまっています。

 しかし、MS-DOS Toolsでフルパスを表示するツールではそうではありません。C:\HOGEのような、MS-DOSネイティブなフルパス名を表示します。きちんとドライブ名がドライブ名として見えます。

 (本当はここでMS-DOS Toolsで表示した例を出そうと思いましたが、Windows XP上で動かしたらほどんとerror 2000: Stack overflowというエラーになって動きませんでした。残念)

 つまり、MS-DOS Toolsとは、MS-DOSとシームレスに連携して、それの使い勝手を改善するソフトであって、(作り手に近づけたい欲求はあったにせよ)UNIXと完全互換を目指すものではなかったと言えます。

 これはMS-DOSをとことんまで使い込むには非常に有効なものであり、command.comに対する技巧的なバッチは、どう見ても不可能と思われた機能まで実現していました。善良な意味でのハッカー魂が炸裂する幸せな時代であったと言えるかも知れません。

生まれでなかったその後継者 §

 このMS-DOS Toolsは、もともとMS-DOS 2.1用でしたが、その後MS-DOS 3.1用のアップデートが出てから完全に途切れてしまいます。

 その結果、ファイルシステムを扱う機能などが新しいOSで上手く機能せず、問題が起きていました。これに対して個別に対応するソフトを開発するユーザーもいました。

 この方向性が完全に断たれるのは、OSが長いファイル名をサポートした時点です。MS-DOSの8+3ファイル名を前提としたソフトは全て影響を受ける問題です。

 この時点で、何とか使い続けたMS-DOS Toolsの命運も尽きたかに見えました。

 そこに、彗星のように登場したのが、スーパーアスキーという雑誌です。32bit版のMS-DOS Toolsを提供すると嬉しいことを言うではありませんか。

 確かにNIFTYに、そのための会議室が出来て、少数にマニアがわっと集まりました。

 しかし、そこでユーザーが出した結論は、「またあんなこと(バージョンアップが途絶える)が起きても困らないようにソースを公開して欲しい」。すいません。私もその意見にしっかり賛成していました。

 さすがにそれは無理だったようで、結局、この32bit版のToolsの正規版は日の目を見なかった……と思います。

まあそういうわけで、手がけてみたわけですよ §

 その後、cygwinやSFUのようなソフトが出てきましたが、Windowsのコマンドプロンプトの使い勝手を改善するという観点から言うと、ニーズに適合しないものでした。要するに、pwdなどのコマンドでWindowsスタイルのファイル名が扱えるものが欲しかったのです。

 そういう観点から必要とされたものがNT版UNIX-like toolsということになります。

 そういうニーズも世の中にある、と言うことを、ひと味違うマニアを目指す若者は知っておくのも良いと思います。

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