2004年07月31日
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子供の頃に見た1/1000のウォーターライン空母プラスチックモデルの正体

Written By: 川俣 晶連絡先

謎の1/1000 ウォーターラインモデルの空母の思い出 §

 昔々。

 まだ子供だった頃。

 静岡4社によるウォーターラインシリーズという意欲的なプラスチックモデルの企画が始まりました。1/700という統一スケールで、連合艦隊を再現するという、一歩踏み外せば誇大妄想にも思える夢の企画。しかも、それまでの艦船模型と言えば、船底部まで再現されたフルハルモデルが常識であるのに、スパッと船底部を切って青い紙の上に乗せると海に浮かんで見えるというウォーターラインモデル(洋上模型)だと言います。

 私自身は、ごく僅かしか作っていませんが、父が(日本艦は)ほぼ全て作っています。

 しかし、ここに1つ奇妙な思い出があります。

 ウォーターラインシリーズが始まった頃だと思いますが、家に1/1000の空母のプラスチックモデルがあったのです。しかも、ウォーターラインモデルでした。なんだか変なものがあるな、でも面白い……などと思っていましたが。それの正体も分からず、いつの間にか忘れていました。

それはASKの1/1000連合艦隊シリーズだった? §

 モデルグラフィクス誌の2004年9月号の47ページ。20世紀のプラモデル物語の連載ページデスが、ここにASK 1/1000 駆逐艦秋月が紹介されています。

 この記事では、ASKというメーカーが、ソリッドモデルからプラスチックモデルの時代に掛けて、とんでもなく意欲的なチャレンジを行っていたことが書かれています。

 スケールは1/1000で洋上模型。そして、1960年から、昭和16年のハワイ交易機動部隊の全艦艇のモデル化を目指して商品化が進められていったそうです。

 発売されたキットの全貌は不明だそうですが、確認されているものに、空母翔鶴と瑞鶴が含まれていると書かれています。

 そうか、これなのだな!

 思わず、昔の思い出の模型の正体が分かった気がしました。

 正確な記憶は残っていませんが、何となく記憶にある空母は瑞鶴だったような気がします。とすれば、1/1000というスケールといい、ウォーターラインモデルというスタイルといい、まさにこの条件にぴたりと合います。

驚かされることは §

 この話で真に驚いたことは、思い出の模型のメーカー名が判明したことではありません。

 そりゃまあどんな模型にもそれを製造したメーカーがあるのは当たり前で、それが明らかになるだけでは驚きになりません。

 真に驚かされたのは、その模型が艦隊を成立させるだけのシリーズ化の対象になっていたことです。つまり、売れ筋の主力艦だけ模型化しました、という話ではなく、潜水艦、駆逐艦、軽巡、従順、戦艦、空母と1つのシステムとしての艦隊を模型化しようとしていたことが驚きです。確かに構想は途中で挫折したようですが、それでもけして無視できない多種類の艦艇が模型化されています。静岡4社に先んじて、それが行われたことが、大きな驚きなのです。

 現在の我々が常に過去の人間よりも進化していると思い込むと、足下をすくわれそうな気持ちにさせられるエピソードですね。

 もちろん、キットの内容について見れば、ウォーターラインシリーズの方がずっと優れていたという印象が残りますが。