謎のNHKアニメ感想家(笑)、実は眼鏡を取ると美少女(嘘)のトーノZEROのアニメ感想行ってみよう!
前口上 §
毎週楽しみに見ているけれど感想を書いていない作品はいくつか存在します。
トーノZEROの基本的な感想ポリシーとしては、(比較のために引き合いに出された他の作品に批判的になることはあるにせよ)、基本的には褒める言葉しか書かないことになっています。面白くないと思った作品は、単に私がそれを面白いと思うために必要な資質を欠いているか、あるいは本当に失敗作であるか、2つのケースが考えられます。前者の場合、面白さが分からないのに批判するのは筋違い。後者の場合、失敗したらプロなら自分で分かるはずなので、ことさら声を大にして批判する意味はない、と思います。つまりどちらのケースも批判を書く意義が無いので、褒め言葉しか書きません。
さて、こういうスタンスですと、私が感想を書いていない作品は、私が面白くないと思っている作品ではないか、という誤解を受ける可能性があると思いました。特に、好きであるが感想を書いていない作品に関して、そのような誤解を受けることは私自身にとって嬉しくないことです。
と言うわけで、たまには毎週感想を書いていないが気に入っている作品について書いてみたいと思います。
作品名 §
無人惑星 サヴァイヴ
概要 §
宇宙開発が盛んな未来の時代。宇宙旅行に出かけた少年少女達は、ちょっとしたトラブルから謎の惑星に漂着し、そこでサバイバル生活を始めます。
十五少年漂流記の宇宙版と考えると、7割ぐらいは雰囲気を掴めると思います。
むしろ、宇宙でありながら過度に十五少年漂流記的な話でありすぎる点が、1つの問題として上げられるでしょう。人類に知られていない惑星に来たはずなのに、まるで地球の未開の土地で通用するようなサバイバル技術が全て役に立ちます。そして、その惑星が地球に似すぎていることに誰も疑問を持ちません。
しかし、そのような問題を丸ごと差し引いても、極限状態で衝突しながらも協力して生き抜く少年少女達のドラマはあまりに魅力的です。
手放しでは勧められませんが、十分すぎる魅力があって、見る価値があるものだと思います。
キャラクター §
ルナ §
主人公。オレンジのショートヘアの少女。
幼いときに父を失い天涯孤独。
活動的な性格であり、ミニスカート姿で木の上にも登って意図せざる色気も感じさせてくれます。
みんなの行動にも目を配り、リーダー的な存在としても尊敬を勝ち得ています。
おそらくキャラクター原案の江口寿史氏の個性が発揮されているのだろうと思いますが、なかなかアニメでは見かけないタイプの強い好感の持てる少女です。
チャコ §
ルナと一緒に生活していた唯一の家族ともいうべき猫型ロボット。
関西弁を喋ります。
知識や分析能力など、彼らのサバイバルに必要な重要な機能を提供します。
果物など糖分の多いものを食べてエネルギー源にしているようで、専用の燃料などがなくても生きていけるようです。
メノリ §
当初の彼らのリーダーの少女。
バイオリン奏者。
堅苦しい性格で、途中からルナにリーダーを交代しています。しかし、頼れる人物であることは確かです。
シャアラ §
眼鏡をかけた内気な少女。
ルナの親友。
ベルが好きでしたが、ベルがルナに告白するのを聞いてしまいショックを受けたりする女の子らしい女の子です。
砂漠に飲み込まれそうになった瞬間に眼鏡が取れてしまいますが、そこで見えた素顔はあまりに可愛いものがありました。
ハワード §
金持ちのおぼっちゃまで、身勝手な少年。
まさに、この一文を書かねばならない必然性の9割を占める名キャラクター。彼が登場していなければ、この作品を見る価値はとても危ういものだったかもしれません。
人によっては、彼を非常に嫌っていて、彼が登場するだけで拒絶反応を示す場合もあります。
彼については、このあとで詳しく書きます。
シンゴ §
機械いじりが好きな少年。
やや年齢が低く、その分だけ感情に流されやすい面があります。
しかし、彼の技術力は、サバイバルに大きく貢献しています。
カオル §
無口な少年。
かつて仲間を死なせたという暗い過去があります。
社交性は低いものの、黙々とみんなのために食料を集めたり、実行力のある良い奴です。
ベル §
大柄で無口で温厚な少年。
サバイバルに関する知識も多く、頼れる男です。
カオルも無口ですが、ベルの無口はそれとは違います。カオルは勝手に自分一人でどこかに行ってしまう無口ですが、ベルは集団の中にあって無口な存在です。まったく印象が異なります。
アダム §
無人の惑星の遺跡で発見した異星人の少年。
この惑星は、アダムの種族が住んでいた惑星でしたが、人の住めない惑星になった過去がありました。そして、テラフォーミング技術で再生中の状態だったのです。しかし、彼自身は何も知らず、彼の両親を捜して旅をすることになります。
ここが面白い! §
ともかく、この作品の価値の最大の部分は、ハワードでしょう。
そもそも彼らが無人惑星に漂着する羽目になったのは、ハワードが勝手に避難シャトルのコクピットをいじってしまったためです。それによって避難シャトルは本船から切り離されてしまったのです。
その後にも、様々なトラブルの元凶として活躍するだけでなく、みんなが必至に苦痛に耐え、我慢しながら仕事をしている時に、「こんなことやってられるか」というようなことを言ってみんなを白けさせたり、怒らせたりします。
もちろん、そのような存在は視聴者にも強い不快感を与えます。みんなが一生懸命やっているときに、不平不満をぶちぶちと言う少年など、見れば不愉快に思うのが当然のことでしょう。
それにも関わらず、ハワードは可愛い奴です。魅力があります。
それはなぜでしょうか。
ハワードの言動とは、いわば他の少年少女達が必至に我慢している本音に他ならないからだと思います。
たとえば、意味があるかもどうかも定かではない重労働をしているとき、「こんなことしても、どうせ役に立たないぜ」と言って作業を放り出すことは、実はみんなもやりたいことでしょう。みんなで決めたことだから、やらなくてはいけない……、と思うことの対極として、こういう本音がきっとあるでしょう。それでも、この極限状況ではやるしかないと思い、恐怖も苦痛も必至に抑えてみんなは生きているわけです。しかし人間は無限に我慢することはできません。おそらく、全員が本音を抑えられるよい子であったなら、彼らのサバイバルは失敗していたことでしょう。しかし、ハワードが、みんなの本音を代弁することによって、それが一種の息抜きとして機能していた面があるのではないかと思います。
逆に言えば、ハワードとは彼らみんなが持っている心の弱い部分そのものと言えます。だから、彼らはハワードを切り捨てることはできません。心の一部を切り捨てることができないのと同じように、ハワードは彼らの仲間の一人なのです。
実はこの点で、十五少年漂流記と決定的に異なる展開があります。十五少年漂流記では、途中で派閥分裂が起こり、一部のメンバーは別行動を取ることになります。しかし、(初期の段階で、分裂する展開はあったものの)、この作品では、(少なくとも既に放送されている9月2日放送の第45話「お父さん! お母さん!」までの範囲で)、このような大分裂は起こりません。これは、社会性の低い問題児的なキャラクターの位置づけの相違でしょう。この作品では、問題児であろうと、彼らが仲間として抱え込み共存していく存在として描かれています。そして、ハワード自身も、自分の力で頑張らねばならないという現実に直面して、徐々に変わり始めています。
そのようなハワードの変化を見ることも、また心地よいことだと言えます。
この作品に一言 §
特にハワードが良いとは言っても、他の少年少女達もとても良い子ばかりです。みな、いろいろな問題を抱えていますが、誰も助けてくれないサバイバル状況の中で、それに直面して乗り越えていきます。逃げることができない極限状況を経験することは、人が大人になるときに、とても有益で価値のある出来事なのでしょう。それを、ストレートかつ魅力的に見せてくれるところがこの作品の良いところだと思います。
それはそれとしても、ルナ §
それはそれとしても、ルナにはとても魅力を感じます。
最近、アニメの美少女に強い魅力を感じる機会は減っていますが、極少数の例外がルナと言えます。カタログのように多数の美少女を並べたアニメがオタク向けにこれほどまでに送り出されているというのに、まるで魅力を感じられないと言うのも不思議なら、オタクにサービスするとは思えないNHK教育TVのアニメ作品の中に、例外的な魅力を感じるのも不思議なことです。
余談 §
この作品は、テレコムアニメーションフィルムが手がけているという点でも、注目する価値がありますね。(テレコムアニメーションフィルムの本作品のページ)
ちなみに、テレコムアニメーションフィルムとはルパン三世「カリオストロの城」や宮崎駿の「名探偵ホームズ」などを手がけてきたひと味違うアニメーション製作会社です。