謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!
今日の舞-HiMEの感想。
サブタイトル §
第3話 炎の舞/星の誓い
あらすじ §
怪物から巧海を守るため、舞衣は炎を手足にまとい、それによって怪物から身を守ります。
手足にまとったものは、姫の証、エレメントだと言います。
そこに、匂いをかぎつけた命が来ます。
命は剣を呼び寄せ、怪物を一刀両断します。
しかし、怪物は二つに分かれたまま暴れます。
舞衣は、姫の守り神、チャイルドを封印する剣を抜きます。
チャイルドは巨大な生き物で、怪物を攻撃して倒すと共に、彼らを爆風で吹き飛ばします。
翌朝、学園の裏山に大きな傷跡が残っていましたが、落雷という公式見解で納めます。
巧海は昨夜のことは覚えていませんでした。
理事長から呼ばれた舞衣は、会いに行きます。
理事長は、昨日会った(第2話)車椅子のお嬢様でした。
舞衣は奨学金のお礼を理事長に言いますが、理事長は舞衣が姫だと知って奨学金を出して呼び寄せたのだと言います。そして、オーファンと呼ばれる怪物と戦えるのは姫だけだと言います。
舞衣は戦うために呼ばれたことに怒ります。
理事長は、戦うかどうかは自分で決めて良いと言い、戦わない場合でも奨学金を返せとは言わないと告げます。
命は理事長から生活費と学費を出して貰い、舞衣と一緒に住み、学校にも通うことになります。
翌朝、舞衣は自分、巧海、命の3つの弁当を作り、みんなで登校します。
感想 §
何を感想に書こうか……、と考えているうちに、あることに気付きました。
一見、多数の美少女が戦う良くあるつまらないアニメに似ている……という雰囲気ですが、それは表面的なもの。その背後には、非常に重要な一本の筋が背景に通っています。
それが強く意識されるのは、舞衣が理事長と会うシーンです。
このシーンでは、3つの出来事が語られています。
まず、舞衣が奨学金のお礼をきちんと言うこと。奨学金やお礼が重要であることで、現実の延長線上にある物語であることが強く示されています。特に舞衣にとって、お金は重要な存在でしょう。どうやら親を失っているようですが、そんな舞衣が病気持ちの弟(巧海)を抱えて上手くやっていくためには、どうしてもお金が必要なのでしょう。それを意識し、きちんとお礼が言えるあたり、舞衣は同世代の少年少女達よりもずっと過酷な人生を生きて来たのでしょう。つまり、ずっと大人なのでしょう。そのような直接的に描かれざる物語が、この僅かな挨拶の背後に隠れています。
そして、その次に語られることは、理事長側にあった思惑です。奨学金は、善意で舞衣に提供されたものではなく、舞衣が「姫」であるから出されたという事情が明かされます。つまり、怪物と戦えということです。しかし、このような話を切り出す方法を、理事長は間違えたと言えるでしょうね。舞衣は突然のことに驚き、拒絶してしまったのですから。そのあたりは、この若すぎる理事長の至らぬところでしょう。車椅子生活であれば、普通の人よりも対人関係をい持つ機会が少なく、上手く人と付き合っていく能力も不充分であるかもしれません。いずれにせよ、理事長が美少女であると言うことは、その若さの弊害が存在します。その弊害が、ここに出現したのだと思います。
最後に、選ぶのは舞衣であり、もし戦わない場合でも奨学金を返せとは言わない、という話になります。理事長としては、このような選択を提示したかったわけではないと思います。おそらくは、舞衣に戦って欲しかったのだと思います。しかし、ここで「戦って下さい」と強く求めるとすれば、それは金(奨学金)で舞衣の命を買うことになってしまいます。もちろん、金と命を引き替える、という割り切りも可能でしょう。しかし、理事長はそれができなかったのでしょう。それもまた若さ故の弊害かもしれません。結局、選ぶのは舞衣であるとして、命を賭けるかどうかは舞衣の選択の問題にしてしまいます。また、金の問題を切り離すために、奨学金は舞衣の選択に関わらず出されることになってしまいます。繰り返しますが、おそらくそれは理事長の望んだことではないと思います。しかし、理事長は、自らそのような提案を行わねばならない立場に自らを追い込んでしまったのだと思います。
さて、このような理事長の若さ故の過ちは、もちろんドラマ構成上の魅力を構成するものです。完全無欠な人間などいないし、まして若ければ過つのが当たり前。いい大人でも年寄りでも間違うのだから、若い者が過たないわけがありません。それを自信を持ってストレートに描くことが、人間の魅力を描くと言うことにつながると思います。
だからこそ、このやりとりを通じて、理事長は「車椅子」「お嬢様」「お屋敷」「バックにメイド」といった記号によって構成される美少女から、苦悩し生きている一人の人間に生まれ変わったと言えるかもしれません。
感想その2 §
それはさておき。
戦うアニメという観点で見ると、いくつかハッとさせられるところがあります。
まず、舞衣がエレメントを装備した状態は、制服姿はそのままで手足に輪が付いているだけ、という描写が良いですね。よくある変身ヒーローもののパターンだと、さしたる根拠もなく服が全て入れ替わります。しかし、完全に別のものになってしまうのは、人間のドラマとして見た場合にはイマイチ面白みがありません。今回の舞衣は普段の服や自分をそのまま残しながらプラスαの力を活用して危機に立ち向かいました。それは、別のものになってしまわず、舞衣という人間が舞衣という人間のまま危機を乗り越えたことを意味します。そういう別のものになってしまわない話の方が私は好きです。
それから重要なポイントは男の子達の魅力ですね。特に凪の魅力。彼は軽い口調でからかうように舞衣達に声を掛けていますが、言っていることは辛辣です。このギャップが彼の魅力ですね。そして、その意図を正しく把握して命を賭ける決意をする舞衣。いろいろな人がいろいとなことを言っていますが、舞衣は封印の剣を抜く決断を自分で下しています。たとえ、その結果を把握していないとしても、彼女は自分がなすべきことを行うのにためらわないわけですね。
それから、命が剣を呼ぶシーン。立てかけてある剣にカーテンが重なって見えなくなり、そしてカーテンが戻るともう剣がない、という描写は良いですね。誰も持っていないのに宙に浮き上がって飛んでいくよりも、こういう洒落た不思議な描き方が好きですね。消える瞬間を見せないというのは夢が広がります。
祐一と歩く舞衣の「痴話喧嘩」も良いと思います。本当の意味で舞衣がリラックスできる唯一の時間……かと思いきや、うっかり「昨夜のこと」を口走りそうになって焦ってみたり。それでも、楽しいひとときですね。
舞衣が作る弁当もなかなか良いですね。3人分作っていますが、みんなきちんと作り分けています。極端に大きいのは命の分でしょうか。この弁当から分かることは、本来舞衣が支えている生活のリアリティとは、弁当を作ってルームメイトをたたき起こして学校に行く、というようなことだというです。けして、怪物との戦いなどではありません。であるからこそ、弁当作りに追われる日常の人である舞衣が怪物と戦うフィールドに立つことによって、ゲームのコマの戦いではなく、生活感のある人間達の戦いが成立するのでしょう。たぶん。
今回のベストショット §
エプロン姿の舞衣ちゃん!
これは予想外でやられましたね。
今回の名台詞 §
舞衣「これは手違いで」
命「おお、テチガイというのか。これは弥勒だ」
にしようかと思いましたが、こちらの方が強烈でした。
理事長「ごめんなさい、失言でした」
理事長、若さ故の過ちですね。