2004年10月16日
トーノZEROアニメ感想機動戦士ガンダムSEED DESTINY total 3224 count

思わず涙して、これが夢でないかどうかを問うてしまう奇跡的な良心的作品……かもしれない!?

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 今日のガンダムSEED DESTINYの感想。

サブタイトル §

PHASE-02 戦いを呼ぶもの

あらすじ §

 強奪された3機のガンダムは、インパルスガンダムと戦います。

 3対1でインパルスガンダムは不利となります。

 アスランは、インパルスガンダムを援護しようとしますが、同じコクピット内のカガリを負傷させてしまいます。

 強奪側はいつまでも戦っているわけには行かず、外で待っている艦に戻ろうとします。インパルスガンダムと応援はそれに食い下がります。

 コロニーの外壁が破壊され、彼らはコロニー外に出ます。

 ミラージュコロイドによって隠れていた強奪側の艦は姿を見せ、プラントの軍を攻撃すると共に、仮面のパイロットをMAで出撃させます。インパルスガンダムはMAと対決することになります。

 アスラン、カガリ、議長らはミネルバに乗り込みます。

 機密保持が無意味となったミネルバは宇宙に発進します。

感想 §

 第2話にして、やっとこの作品が描こうとしているものが掴めてきました。

 これは凄すぎますね。しかも、ラストシーンでは涙まで出てきました。

 ともかく、1つ1つ筋が通っています。いろいろな意味で多角的に。しかも、極めて大きな大胆さを持って。

 最大の見どころは、やはり、前作と逆転された状況でしょう。

 前作では味方だった制服を着た者達が、敵にまわっています。逆も真なり。しかも敵艦は、明らかに前作で主人公達の「家」であったアークエンジェルの発展形という形をしています。その上、敵艦に乗っている金髪仮面の男は、まるでムウ・ラ・フラガのような喋り方をして、乗っているのも人型ではないかつてのムウの愛機のような機体。ムウと言えば、前作において、キラのメンタルな面をカバーしてくれた兄貴分のようなパイロットです。最も安心して心を開ける相手と言っても良いでしょう。それなのに、まるで彼のような人物が仮面をかぶって理不尽な襲撃を行う敵にまわるという状況をいきなり視聴者に突き付けます。

 敵と味方の逆転は、安易な解決があり得ないという意思表示かもしれません。あえて難しい問題に取り組もう、という意志の表れなら、これほど素晴らしいことはありません。少なくとも、前作のラストシーンでは、単なる敵味方に色分けすれば済む問題ではないことが既に示されていたはずですから、期待しても良いのだと思いたいですね。

 しかも、敵と味方の逆転は、単なる反転にはなりません。ムウっぽい仮面の人が信じて派遣した3人のパイロット達は、前作で機械のように扱われ戦わされた者達とは性質が違います。この3人は、はるかに人間の心を持っています。仲間を思いやる気持ちもあれば、傷つけたことの痛みを分かる心もあります。そして、死を恐れる心の傷も。彼らとの戦いは、複雑な心を持った人間との戦いにならざるを得ません。今回でも、我を忘れて逃げようとするステラを仲間がかばうシーンがありますね。それを見ていると、主人公の対立陣営でありながら、ガンバレと応援したくなる気持ちも沸いていきます。

更に感想 §

 個別の部分を見ていくと。

 まずアスランの行動が良いですね。3対1で負けていく主人公機を見て助けに入ります。しかし、その行動がカガリを負傷させてしまいます。単座機に強引にもう一人載せているわけですから、激しい機動を行えば同乗者がどこかに頭をぶつけて血を流すのも当然。そういう「当然」に配慮した描写がなされているのが気持ちよいですね。

 そして、アスランは安全な場所を求めてミネルバに移動。これも、的確な判断です。議長が乗り込んだ戦艦であれば安全だと思うのは極めてまっとうです。アスランの行動は筋が通っています。もっとも、議長自ら戦場に出よう、などという非常識な事態が起こって状況は悪化してしまいますが。それは、アスランから見て予測不能の状況です。それは予測できないのが筋が通った描写というものです。

 更に、偽名を名乗るアスラン。彼の立場からすれば当然ですね。そして、うかつなカガリがうっかり「アスラン」と呼んでしまい、周囲の人間に疑念を抱かせるのも、いかにもカガリらしい態度です。

 3対1といえば、途中から応援に来る2機という展開も良いですね。あの状況でも、何とか使える機体を出撃させようと努力する者達はいるでしょう。それが、主人公を助けに来るのは当然の展開です。そして、1機が火を噴いて脱落する描写も良いですね。機械は常に動くとは限らないし、ましてあの状況で正常に動作するかどうかも分からずに飛ばした訳ですから、2機のうち1機が脱落するのは非常に筋が通った描写です。そして、この一連のシーケンスにより、3体1の戦いは、事実上ステラが戦力にならなくなった強奪側2機と、追撃側2機の2対2の戦いになります。これによって、強奪側はとりあえず敵を倒してから帰るという選択が取れなくなり、戦場はコロニー外へと移動します。つまり、追撃側優位に傾いたわけですね。しかし、そこに仮面の男がMAで飛んでくることで、再び強奪側が主導権を奪いに来ます。とはいえ、これは逃げだす前の時間稼ぎ、攻勢防御とでも言うべきものですね。この一連の戦いの流れは、筋が通っているだけでなく、明確に優位が入れ替わる起伏があって、見る者を飽きさせません。けして同じような撃ち合いが続いているわけではないのです。その点が、非常に優れています。

 「現時点を以てLHM-BB01ミネルバの識別コードは有効となった」という台詞も凄く良いですね。識別コードも有効になっていない軍事機密が、ここで機密のベールがはぎ取られたと言うことでしょう。識別コードの有効化というのは、敵味方識別を可能にするためでしょうか。つまり味方から撃たれないための処置でしょうか。戦闘の中に入っていくなら、それは必要なことですね。だからこそ、それは宇宙に出る前、出航前に行われねばならないわけです。有効化前に宇宙に出て味方に撃たれる訳にはいきません。

 もう1つ、議長の「私には権限もあれば義務もある。私も行く。許可してくれ」という台詞も凄く良いですね。この台詞は一見矛盾しているように見えます。議長は自分には権限があると主張しているにも関わらず、艦長に許可を求めています。権限があるなら許可など求める必要はないではないか、と思うところですが、おそらく違うのでしょう。艦長(船長)とは船の最高権力を持つ一種の独裁者であって、それは船内においては一般の権力を超える力を持つ、と言うことでしょう。その権力は、海(宇宙)という極めて大きなスケールの危険を孕むフィールドを乗り切るには必要なものです。

 この艦長もなかなか良いですね。プロの優秀な艦長のようです。状況判断力に優れるだけでなく、決断も素早いです。しかし、敵も優秀であるために、艦長の優秀さだけで問題は解決しそうにありません。こういう状況は見ていてドキドキしますね。

 更に議長も良いですね。自ら戦闘艦に乗って戦場に出ていこう、という態度も良いですね。それは、議長の態度に気持ちよさを感じるという意味で良いという意味ですが、議長という要職にある者の態度としては駄目でしょう。とはいえ、真に責任を意識する者であれば、自らが現場に出て行って対処しようと考えるのは当然のことです。褒められる行動ではありませんが、彼の行動は好感が持てます。

 その他、パニック状態の基地の描写も凄く良いですね。

今回の名台詞 §

「じゃあおまえはここで死ねよ」

 離脱しようとしないステラに対して一言。

 後退すべき場面で戦い続けようとする者達は、この手のアニメには山ほど登場します。しかし、彼らの敗北、あるいは死とは違う展開を描いた例はあまり多くないような気がします。離脱しないことが死につながるという明確な意思表示が行われるのは、ある意味で非常に良心的です。そして、死を恐れて後退する行為も、少しだけ人として正しい行動です。それが恐怖心に駆られた行動であったとしても。

余談 §

 これじゃ感想に文字を書きすぎだよ (笑い。

 このあと、まだケロロ軍曹もあるというのに、ペース配分ってものを考えないとアニメ感想家失格。