2005年01月21日
トーノZEROアニメ感想舞-HiMEtotal 2908 count

コスプレ カラオケに隠された重大な意味はエヴァンゲリオンを超えたか?

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 今日の舞-HiMEの感想。

サブタイトル §

第16話「Parade♪」

あらすじ §

 シアーズ財団が行ったことは新聞のニュースにもならず、日常だけが戻ります。

 前回、生死不明のまま終わった舞衣のことを、姫達は心配します。

 しかし、授業の開始時間ぎりぎりに舞衣は教室に駆け込んできます。

 理事長は、出張に出ますが、炎に姫たちのことを頼みます。

 命は、やっと帰ってきた舞衣を離すまいと、背中に抱きつき続けます。

 入院した詩帆を、楯は熱心に看病します。

 舞衣は花束を持って見舞いに行きますが、嫉妬丸出しの詩帆に追い返されます。

 碧は、研究時間がオーファン退治に割かれなくて済む、という理由で姫がチームとなって戦うHiME戦隊を提案します。そして、姫達を無理矢理集めて、シアーズのような敵が現れたら一人ではどうにもならないだろう、と言って説得してしまいます。

 碧はカラオケの店を予約済みで、HiME戦隊の面々は親睦のコスプレ カラオケ パーティーを始めます。

 カラオケに行きたいのをずっと耐えていた舞衣は、目を輝かせます。

 その頃、炎も屋上で歌っています。

 巧海は秘密の忍者へのお礼として、晶にご馳走を作ります。しかし、転んでしまい、料理で身体を汚してしまいます。着替えている晶を巧海は見てしまいます。女であることを知られた晶は、巧海を殺そうとします。

 カラオケ パーティーが終わったHiME戦隊に、炎は重大な情報を提供します。もうオーファンは出ないということ。そして、蝕が始まること。これから先、姫が倒さねばならないのは互いのチャイルドである、ということです。

感想 §

 参った。

 中身が濃すぎて、どう感想を書けば良いものやら。

 3~5話分の中身が詰まっています。

 前回も、3話分ぐらいの中身があったと思うし。

 だいたい、前回あれほど盛り上げて生死不明で終わった舞衣が、これほどあっさり戻ってくる状況はどうなってるのよ……という疑問も当然のこととしてありますが。

 しかしそれが構成ミスではないとすれば、実はどこが真の見どころであり、クライマックスであるかが、常識と食い違っているのではないかという推測もあり得ます。というより、ここまで来れば、そう考えるのが自然ですね。

 まるで最終回と言っても良いような前回の内容が、どうして最終回ではないのか。そして、ガンガン盛り上げうる余地を盛大に残しつつ、なぜあっさりと終わってしまったのか。

 その答えは、「それらは作品の主題でも何でもなく、単なる通過点、あるいは前菜に過ぎないから」と考えられますね。

 学園の日常をベースに展開されるドラマの中で言えば、宇宙にまで行って衛星を攻撃するようなシーンがあれば、それは最も盛り上がる箇所であると考えるのが自然でしょう。しかし、そうではないと言うことです。

 前回と今回のストーリー展開上の位置づけを考えれば、偽装されていた作品の構造が取り払われて、その裏に隠されていた真の構造が浮上している段階と言えるでしょうか。偽装された作品の構造とは、つまり、シアーズ財団という悪者がいて、正義の姫達が一致協力する団結を築き上げることでシアーズの陰謀を粉砕する、という内容です。単純な勧善懲悪的な分かりやすいパターンです。特別な能力を持った複数の者達がいれば、それが結集して団結するのが決まり切った黄金パターンと言えます。それゆえに、そのような方向性を示せば、誰も疑わずにそのような作品だと思い込むでしょう。

 しかし、冷静にこれまでの作品内容とシアーズとの決戦を比較してみると、確かに非日常的な決戦に勝利するカタルシスはあるものの、実はこれまでの作品内容で提示された謎の多くは未解決のままです。シアーズとは別に存在する1番地という怪しげな団体。それに、やがて来るとされる蝕という状態。シアーズとの決戦では、理事長の下に多くの姫が集まって戦ったものの、そもそもこの理事長も底の見えない怪しい人物です。しかし、シアーズとの戦いに際して、この理事長は自分のバックグラウンドをほとんど明かしていません。

 つまり、非常に分かりやすい最終回のムードで盛り上げた前回は、実は本来最終回でやるべきことの多くに手を付けていません。

 ここが最も重要なポイントになります。

 なぜ、最終回ではないのに、最終回のムードを盛り上げる必要があったのか。

 それは、おそらく、最終回の後に起こる出来事を描くためではないか、と推測します。

 つまり、強い力を持った者達が結集し、悪を倒してハッピーエンドという単純明快ではあるけれど、あまりに不健全である結末への異議申し立てであると言うことです。

 もっと分かりやすく言えば、「王子様とお姫様は一生幸せに暮らしました。めでたしめでたし。おしまい」という結末が全くのあり得ない虚構であるならば、では実際には何が起きたのかを描くということです。

 今回の内容に即して言えば、碧が提案するHiME戦隊というのは、彼女らに安定した安全確保をもたらすものであり、質的に「王子様とお姫様は一生幸せに暮らしました」と同様のものとなります。しかし、炎はそのような「めでたしめでたし」は存在しないことを伝えます。

 これは極めて野心的かつ良心的な作品の作り方です。

互いのチャイルドを倒すということの意味 §

 実は、今回の作中では明確に表現されていませんが、炎が示唆した互いのチャイルドを倒す戦いは、自分の命ではなく、大切な人の命を賭けた戦いになります。つまり、チャイルドを倒されれば、そのチャイルドのマスターの少女から見て大切な人間が消滅することを意味します。それは、日暮あかねとアリッサの事例から既に示されています。

 少女達は、大切な人を守るためには、戦いに勝ち続けねばなりません。自分のことならともかく、他人のことである以上、戦いを放棄するという選択はあり得ません。

 それにより、コスプレカラオケで仲良く盛り上がってスカッとした仲間達が、互いに全力で戦うことになります。とてつもなく凶悪な展開があり得ることになりますね。

 そして、カグツチが倒された時に消えるのは誰なのか。舞衣にとって大切な人とは、巧海なのか黎人なのか楯なのか、という謎も残ります。

しかし、信じて良いのだろうか? §

 もっとも、はたして炎がどこまで本当のことを言っているのか、そこは完全に信じられない面も残りますね。そもそも、彼は最も重大なことを告げていません。それは、彼女らが互いのチャイルドを倒すために戦わねばならない理由です。理由もなく戦いが始まるわけがありません。その点で、現時点ではまだ炎の言う戦いは、何ら現実味がありません。まだまだ、隠された秘密がありそうですね。

それにしても面白いのは §

 面白すぎるのは、ずっと舞衣の背中に抱きつき続ける命。

 まさか、ファミレスのバイト中まで、背中に抱きつき続けているとは。

 アニメならではの可笑しい表現ですね。

 こんな凄い表現を見られただけでも、大収穫という感じです。

 (もっとも、詩帆の病室に入る時だけは背中から降りていたのは、さすが)

オタクの碧ちゃん §

 HiME戦隊の結成を提案する碧ちゃん。

 いかにもオタクっぽい言動から当然の帰結かと思いきや、実は自分が楽をしたいという裏の本心がありましたね。前にも少し推理しましたが、やはり碧ちゃんの変な言動は本心のカモフラージュという側面がありそうです。

生きる伏線 §

 カラオケの店で涙を流す舞衣。ずっと前で敷いた伏線がここで行きましたね。

 かつて、舞衣はカラオケに誘われても一緒に行けないことを悔やんでいました。

 しかし、今ここで、カラオケに行くことができて涙まで流します。

 その上、なかなかルーレットが舞衣に止まらずにじらされるという味な展開まで。

コスプレ カラオケに隠された重大な意味はエヴァンゲリオンを超えたか? §

 新世紀エヴァンゲリオンというのは、最初からつまらない失敗作だと思っていましたが、その理由の1つが、メンタルケアという概念の欠如、具体的には上司(葛城ミサト)と同居する主人公(碇シンジ)という展開にあります。いかに若い美女であろうと、家に帰ってすら上司と一緒というのは、あまりに過酷でありすぎます。本来なら、息を抜ける場所というのを作るのが当然の対応です。しかし、誰もそれが必要だと主張しない点で、ネルフという組織は異常です。そして、その異常環境によって与えられる強烈なプレッシャーは、いくつもの悲劇を発生させていると言っても良いような気がします。つまり、新世紀エヴァンゲリオンの中で起きる悲劇のいくつかは、常識的な組織運営を行っていれば回避できた可能性のある人災に過ぎません。

 そのような観点から、今回の杉浦碧の行動を見ると、新世紀エヴァンゲリオンにおいて葛城ミサトが見せた行動とは全く対称的で優れていることが見て取れます。

 まず、碧が用意したのは精神論や、連携訓練などではなく、親睦のためのカラオケです。それが意味するところは、メンバーが1つの思想を共有することや、1つの規則によって行動することではなく、メンバーが忌憚なく本音を言える関係を作り出すため、と言えます。これを重視したのはある種のセンスを感じさせます。本音が言えるというのは、組織が円滑に動くためには重要なポイントです。

 そして、他のメンバーに先んじて、リーダーの碧自身がべろんべろんに酔っぱらって、リーダーではなくただの酔っぱらいオネエチャンになってしまったのも価値ある行動です。それによってメンバー達は精神的にゆとりを持てます。逆に言えば、この段階で碧は見かけほど酔ってはおらず、演技しているだけという可能性も考えられます。

 更に、ルーレットとコスプレという付加価値を付けたところが、最大の見どころだと思います。碧の人扱いの優秀さを示しているとも言えます。男が一人もいない場所で、男が好むようなコスプレをさせて誰が喜ぶのか、という意見はこの場合不適切です。なぜなら、この場で行われたコスプレの意味は、男を喜ばせるためではなく、彼女らに恥ずかしい思いをさせるためだからです。志村けんの白鳥(?)のような、お笑い芸人か変態しか着ないようなコスチュームも含まれることから、おそらくは間違いないでしょう。ここでは、全てのメンバーが全員、恥ずかしい格好をして他のメンバーにそれを見られてしまうことに意味があります。それによって、本心を見せるのは恥ずかしいという気持ちのハードルを解消しようとしているように見えます。

 このような点から見て、部下を預かるリーダーとして杉浦碧は葛城ミサトに勝ったと。そのような、いかにも当てにならない仮説を立ててみました。当てにならないので、けして信じてはいけないぞ (笑。

そして楯 §

 楯、最高です。

 彼がしっかりと描かれていることが、この作品で最も気に入っているところです。

 今回、楯が詩帆の看病に付きっきりであるのは、楯が自分の判断ミスで詩帆を入院させたという責任感ゆえのことですね。

 そのような行動が、舞衣の気持ちを遠ざけるとしても、責任を果たそうとする楯の態度は好感します。楯自身も、とても苦悩しながらであるにせよ。

 安易に力を使えてしまう姫達よりも、むしろ楯の心の方が重くて大きいかもしれません。

今回の名台詞 §

舞衣「ちょっと遠くに行ってたもので」

 宇宙まで行っていた状況を、その一言で終わらせる舞衣。しかし、その言い方が凄く良いのですよね。

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