2005年03月04日
トーノZEROアニメ感想舞-HiME total 3470 count

こじれる同性愛問題、破滅を自ら希求するぶぶづけ生徒会長!?

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 今日の舞衣-HiMEの感想。

サブタイトル §

第22話「くずれゆく……」

あらすじ §

 舞衣は授業にも出ません。そして、楯にも冷たい態度を取り、突き放します。そして、炎に協力すると称して接近します。舞衣は、全てのHiMEに勝利した後の得られるものを確認したいと主張し、黒曜の君に合わせろと要求します。しかし、炎は舞衣の本気を確かめると言います。

 碧は、これまでずっと隠していた彼女の本音、好きな人のことをシスターに告白し、封筒を校医に託します。そして、理事長から渡された鍵を使います。しかし、彼女を神崎黎人の命令で動く命が襲います。

 珠洲城遥は、一人で生徒会を支えようと必死になります。黎人から生徒会長の居場所を雪之が知っていると聞かされ、二人は生徒会長に会いに行きます。そこでは、眠り込んだなつきの唇を奪おうとする生徒会長の姿を目撃します。更に、生徒会長は意識のないなつき相手に性行為に及んだという告発がなされます。遥と生徒会長は激しい口論になります。その結果、生徒会長はHiMEの力を発動します。立ち聞きしたなつきは、自分の身体が同性に奪われたことを知り、衝撃を受けます。

 シアーズ財団のジョン・スミスは黒曜の君を訪問しますが、黒曜の君に取り入りたいジョン・スミスに対して、黒曜の君はそれなりの受け答えをしつつ、実際には全くシアーズ財団を相手にしていません。

感想 §

 面白い!

 面白いねぇ!!

 見終わってあらすじを書いているうちに、第1印象と食い違うドラマが浮かび上がってきて2重の衝撃を受ける凝りに凝りまくった構成ですね。

 どこから手を付けるか迷いますが。

 まずは、舞衣ちゃん。あまりに辛く、そして冷たい。主人公が、こんなに冷たい態度を見せて良いのか、というぐらいの冷たさですね。しかし、彼女の行動や態度そのものが一種のフェイクです。冷たい別人に変わってしまったわけではありません。彼女に与えられた選択は2つ。HiMEどうしの戦いで勝ち残って力を手に入れるか。それとも、黒曜の君を倒すか。一見して、前者を選択したかのように見せ掛けつつ、真の狙いは後者。どこの誰かも分からない黒曜の君を倒すためには、彼らに味方するふりをしなければなりません。

 しかし、そのための必死の演技も、炎には既に見透かされている感がありますね。これほど苦しい立場に置かれてなお、舞衣ちゃんにはもっと大きな苦難がありそう。

こじれまくる同性愛問題 §

 珠洲城遥は最高です。

 この作品では、炎凪と並んで個人的に最も好きなキャラと言えます。

 今回を見て、その印象が更に確かなものになりました。

 背後に雪之を背負って生徒会長と向かい合うことになる遥ちゃん。

 彼女は生徒会長がなつきに取った同性愛的態度を糾弾しますが、実は背後に背負った雪之が同様の同性愛的な態度を遥自身に対して持っていたりする可能性が示唆されています。つまり、遥は、目の前の生徒会長を糾弾しつつ、同時に大切な雪之をも責め立てていることに気付かないという悲劇的な構図が存在します。

 そして、本来なら痴話喧嘩やスキャンダルという水準で収まるはずの事態に対して、HiMEの力を発動する生徒会長の態度は、明らかに常軌を逸しています。彼女は、一見して自らの破滅を希求しているようにも見えます。それはある面では真実でしょう。彼女の置かれた立場を考えれば、彼女が最も大切にしているものを守るためには、自らの人間としての立場を破滅させ、修羅にもなる必要があります。つまり、なつきを守るためには、彼女は全ての戦いで負けることができません。

 そのような立場に立った彼女にのしかかるストレス感は、並大抵のものではないでしょう。それをはね除け、自分を維持するためには、常軌を逸した行為、たとえばなつきの身体を求めるような行為を自ら止めることができないのでしょう。むしろ、修羅になった彼女には、それを止める理由など無い、と言った方が良いのかもしれません。

 しかし、なつきを大切に思うあまり、実は彼女はなつきの気持ちというものが視界からすっぽりと抜け落ちている可能性があります。なつきの身体を奪うという行為が、その気のないなつきに対して、大きな嫌悪感を抱かせる可能性について、どれほど彼女が意識し、尊重していたと言えるのか。

碧ちゃんの本音 §

 既にこれまでの感想で、碧ちゃんは自らの本音を奇抜なパフォーマンスで隠してきたことを述べています。

 しかし、今回は、その本音がいともあっさりと吐露されています。

 これはもう、彼女も死を覚悟したということでしょうね。

 校医に託した封筒も、それを示す態度の1つです。

 そして、使う鍵。なかなか趣のある面白い錠前と鍵です。

で、戦いは? §

 実は、HiMEの戦いと言いながら、実は戦いのシーンがほとんどありません。

 これも興味深いところですね。

 この作品において、実は戦いなど、大した価値がないと見なされているのかもしれません。

 ではいったい何に価値があるというのか?

 もちろん、戦いを意識する乙女達を描くことにこそ、大いなる意義があるわけですよ。

今回の名台詞 §

不良「あんたも空気読めよな」

 あくまで規律を正す遥ちゃんに対して不良生徒が一言。

 「空気読め」というのは嫌いな言葉なのですよね。誰かが言葉や言葉ではない方法で明確に示したことを読めと言うならともかく、そうではない状況であれば分からないのが当然。むしろ、誰もが空気だと思っていることの方が間違っている可能性すらあります。ゆえに、遥ちゃんの態度は正しいです。ある意味、学園に残された最後の理性と言っても良いかもしれません。