2005年03月11日
トーノZEROアニメ感想舞-HiME total 3200 count

楯は男だ! 男は愛だ!! 遥は女だ! 女は度胸だ!!

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 今日の舞-HiMEの感想。

サブタイトル §

第23話「愛情と友情、非情」

あらすじ §

 碧は、深優・グリーアを目覚めさせようとします。

 命は、それを妨害しようとします。

 碧は自らのチャイルドで深優・グリーアの入った装置を守りきりますが、チャイルドは消失します。深優・グリーアは復活し、どこかに消えます。

 炎の示唆を受けた舞衣は、その場にやって来て、命と戦うことになります。

 生徒会長と向かい合った珠洲城遥は、HiMEではないのに、一歩も引きません。雪之と生徒会長の戦いは、あっさりと生徒会長の勝利に終わり、遥は消え始めます。しかし、執行部の腕章を雪之に渡し、最後まで生徒会長への強気の態度を崩さずに消えていきます。

 生徒会長は他のHiMEを倒しに行きます。

 なつきは、街を彷徨い、倒れて救急車で病院に担ぎ込まれます。それに遭遇した楯は、なつきから事情を聞き、舞衣の本当の気持ちに気付き、舞衣のところに走ります。雨の中で待つ詩帆は楯によって置き去りにされますが、病身は危機的状況に陥ります。

 黎人は、あの老婆達がいる限り同じことの繰り返しと言い、彼女らの思惑と離れることを示唆します。

 舞衣は、碧が残した手紙から、最後に残ったHiMEは黒曜の君の妻になることで力を手に入れるということを知ります。

 そして、シスターは実は過去に怪我をしていないということを知ります。HiMEの戦いの発端になったシスターの襲撃はフェイクだと知った舞衣は、シスターに会いに行きます。しかし、シスターの幻術に取り込まれてしまいます。

 奈緒はなつきを待ち伏せ、身体の自由を奪います。

感想 §

 いろいろ内容が盛りだくさんで、思うことも多いのですが。

 あえて、1つの話題、2人の人物に限って語りましょう。

 それこそが、最大の面白さ、価値であると思うからです。それも、飛び抜けて大きな。

 その1つ話題とは何か。

 それは、HiMEでも、黒曜の君のような特殊な存在でもない人間こそが最も生き生きとした生き様を見せてくれているということです。

 その2人とは誰か。

 楯祐一と珠洲城遥です。

 強烈な精神的なプレッシャーと、それを解放するために行使できる超常の力を持ち合わせたHiME達の精神は、どんどん崩壊していきます。彼女らは、とても普通の視聴者が感情移入できる対象ではなくなっています。

 そのような状況下で、作品が崩壊せずにつなぎ止められているのは、つまりはこの2人の功績だと思います。

 いかに異常な事態が進行しようとも、その事態の中で、当たり前の健全な感覚を保持している者が一人いれば、彼/彼女を拠り所にして、見ている者は作品世界の中に踏みとどまり、鮮烈なイメージを体感することができます。(ということを、映画AKIRAを見た時に思いましたが、今回の舞-HiMEも同じでしょう)。

 厳密に言えば、楯祐一と珠洲城遥は、これまで事態の中の立場に立つ人物ではありませんでした。彼と彼女は、事態の外に常に置かれてきたのです。

 しかし、今回、なつきから事情を聞いた楯は、そこで舞衣の本当の気持ちに気付くことができます。事態の中に足を踏み入れたのです。それは、類い希なる他人の心情を思いやる能力と言えるかもしれませんが、ただの人間である彼は視聴者と同じ世界の住人です。視聴者は、彼を通して、事態に関わる視点を持つことができます。つまり、ズタズタになった舞衣の心を見て傷ついた視聴者は、楯という舞衣の理解者を通じて、彼女を癒すという可能性を与えられたわけです。これは、大いなる救いであり、そして楯というキャラクターの独特の魅力です。これほどまでに、女の子の心を思いやり、理解する力を持った男性キャラクターは、非常に希有な存在であり、そして1つの男の理想像とも言えると思います。単に戦いに強いであるとか、イケメンであるというのとは違う、別の男の理想像です。

 そして、珠洲城遥は異常なる戦いをその身を持って受け止めることになります。しかし、彼女は悲鳴を上げ取り乱すことなく、最後まで彼女らしい意地を通します。彼女は最終的に消えてしまいますが、消えていく過程を通じて、この異常状態に対して、いかなる態度で向き合うべきかという姿勢を鮮烈にアピールしたことになります。

 更に、ここが最も重要なポイントですが、珠洲城遥はただの人間として、この異常状態を前にして、けして心が敗北することはなかったということです。それに対して、HiMEという複雑な立場があるために同列には比較できないにせよ、生徒会長は心が敗北してしまったのです。

 二人が向き合うドラマを見て、はたしてどちらが勝利者と言えるのか。

 確かに、珠洲城遥は消滅させられてしまったものの、だから生徒会長が勝利者に見えるのか。

 もしかしたら、生徒会長は状況と自分自身に負けた敗北者に過ぎないのではないか。

 敗北者であるからこそ、珠洲城遥を消してしまう必要があったのではないか。

 そこまで考えると行き過ぎでしょうが、そんな妄想まで誘発するような面白い展開です。

 そして、あえて言えば、珠洲城遥というのは戦う美少女の1つの理想像を体現していると言えるかも知れません。戦う美少女に期待される真の価値とは、けして破壊力などではなく、進むべき道を(それが修羅の道であろうと)指し示す断固たる信念であるかもしれません。歴史的にジャンヌ・ダルクが果たした(かもしれない)立場です。そして、フィクションの世界でも、たとえば、キューティーハニーはパンサークローを倒さねばならないという不退転の信念を持っていたし、セーラームーンの月野うさぎは軟弱であるかのように見えつつ重要な決断を仲間から託されるような最後の精神的拠り所としての側面があります。

 つまり、まとめると、超常の力を手に入れたHiME達よりも、それらと向き合うただの人間にこそ、真の強さや優しさが見える。それが、今回の最も印象的な特徴ではないか、と思うわけです。

今回の名台詞 §

命「本当の好きってなんなんだ」

 痛々しい台詞ですね。ただ盲目的に戦っていれば、単に可哀想な子、という印象で終わるのに。こんな台詞を言われると、命も救われて欲しいと願ってしまいますね。