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2005年04月14日
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メイドのプリンセス メイディー・メイ 第7話『恐怖するメイド達とドクロのご主人様』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 君は知っているか。

 美しく可愛く献身的な少女達からなるメイド達。

 そして彼女らのご主人様となるオターク族。

 その2種類の住人しか存在しない夢の中の世界を。

 ある者は、桃源郷と呼び。

 またある者は、狡猾なる悪魔の誘惑に満ちた監獄と呼ぶ。

 それは、どこにも存在しないナルランド。

 住人達がボックスマン・スーフィーアと呼ぶ世界。

 そして、悪魔と取引したたった一人の男によって生み出された世界。

前回のあらすじ §

 新人メイドとご主人様達の初めての顔合わせの会場。

 入場するご主人様達を迎えたメイド達だったが、どういうわけか、時代遅れのメイド服を着たメイにだけ注目が集まる。

 そのことで、他の新人メイド達に取り囲まれ、嫉妬の炎をぶつけられてしまうメイ!

 第6話より続く...

第7話『恐怖するメイド達とドクロのご主人様』 §

 新人メイド達の視線は、もはや離れつつあるご主人様達には向けられていなかった。

 彼女らの視線は、全て、メイただ一人に集中していた。

 「どんな卑怯なトリックを使ったのさ」とメイドの一人が、底冷えするような冷たい声で言った。

 その口調のあまりの低さに、メイは背筋が凍るような気がした。

 「そうかトリックなのね」と少し気弱そうな別のメイドが言った。

 それでメイド達に火が点いた。抑えていた思いが次から次へと、口から飛び出してきたのだ。

 「そうよ、トリックでなかったら、どうしてこんな古いメイド服を着ているメイドをご主人様が欲しがるのよ!」

 「そうよね。これって古着だし」

 「その上、デザインが古すぎるのよ」

 「そうそう。いったい何年前の流行りよ」

 「私なら、こんなデザインのメイド服を着ろと言われたら、首をくくって死んでしまうわ」

 メイの目に、涙がジワッと湧いてきた。確かにメイの思いも、このメイド達と大差ない。これほど古いメイド服を、誰が望んで着たいと思うものか。しかし、首をくくるとまで言われると、それは行きすぎだ。いくらなんでも、クビをくくらねばならないほど悪いとは思わない。少なくとも、メイドの仕事を効率的にこなせる服ではある。

 その時、メイの背後で、太くて低い声が聞こえた。

 「とんだ期待はずれだな」

 それは、メイドの声ではあり得なかった。

 メイドは、こんなに引くく太い声を出さない。

 この世界で、そのような声を出す存在と言えば、ご主人様しかあり得ない。

 だが、ご主人様達は、既にメイ達から離れたはずではなかったのじゃ。

 メイはゆっくりと振り返った。

 他の新人メイド達は、既にメイの背後を驚いたように見つめていた。

 そこには一人のボックスマンガ立っていた。

 白きプリンスやレッド・ダンディのようなファッショナブルなスマートさは無かった。

 そのボックスマンは、ドクロをあしらった黒いTシャツを着ていた。ドクロの下には、SDG-1 SKULL ELEVENと書かれていたが、SKULLとELEVENの単語の意味は分かっても、全体としてそれが何を意味しているかは全く分からなかった。

 しかし、そのボックスマンで目を引くのは、ドクロのTシャツよりも、肩に掛けていた鉄の太い鎖だった。

 それは、とても禍々しく凶悪にメイには見えた。

 白きプリンスやレッド・ダンディのメイドになれば、喜んでご奉仕する日々が訪れそうな気がするが、このボックスマンのメイドになれば、残酷に扱われ、暴力で酷使される日々が訪れそうだった。

 しかし、どうしてこのボックスマンは他のボックスマンのように、会場の奥に進まないのだろうか。

 少しだけしっかり者、という雰囲気の新人メイドが言った。

 「あの、ご主人様。どうぞ、会場の奥の方へお進み下さい。お飲み物やお食事も用意してございます……」

 その言葉をボックスマンは遮った。

 「オレはパーティーなどはどうでも良いのだ。お目出度いと言ってお祭り騒ぎにするバカ共の仲間ではないのでね」

 「では、いったいどうしてここに……」

 「メイドだ。労働するためのメイドに欠員ができたから、補充に来た。それだけだ」

 ああ、そうか。メイは思った。このボックスマンに指名されれば、単なる労働に酷使される日々が待っているのだ。ご主人様との甘いロマンスなど、けしてあり得ない……。

 「しかし、これはどうだ」とそのボックスマンは言った。「とんだ見込み違いだな。地方会場とはいえ、白きプリンスやレッド・ダンディが足を運ぶというから、さぞ質の高いメイドが揃っていると思えば……。メイド服の目利き1つできないのか」

 「あ、あの、メイド服の目利きとはいったい……」と彼に声を掛けたメイドが、声をかすかに震わせながら言った。

 「いいか」とボックスマンはメイをビシッと指さした。

 指をさされて、メイは心臓が止まるかと思った。怖かったのだ。

 ボックスマンは、メイの気持ちには関係なく続けた。

 「こいつが着ているメイド服は、ビクトリアン・コンバージョン 2199 モデル2だ。しかもレプリカではない、オリジナルの本物だ」

 「そ、それはいったい……」

 メイは、衝撃を受けた。

 このメイド服は、メイン・ティーが修行のためにお古のメイド服を強制的に着せたものだとばかり思っていた。しかし、そうではないというのか。何か特別の価値があるメイド服だというのだろうか。

続く.... §

 レプリカではないビクトリアン・コンバージョン 2199 モデル2。どうして、そのメイド服にボックスマン達は目の色を変えるのか。そのような特別なメイド服がメイに与えられた意味とはいったい? そして、この鎖男はいったい何者なのか?

 次回に続く!

(遠野秋彦・作 ©2005 TOHNO, Akihiko)

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