2005年04月24日
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試論・アニメブーム30年戦争 つまりアニメブームとはファン対ファンの意識されざる戦争であったのか!? 《後編》

Written By: トーノZERO連絡先

前編より続きます。

逆転現象・新世紀エヴァンゲリオンの悲劇 §

 1995年10月4日より放送開始された新世紀エヴァンゲリオンは、大人指向派と子供指向派の境界が消失したことから、思わぬ展開を引き起こした、と解釈できるかもしれません。

 この作品は、一見して大人指向派向けのように見えつつ、実は強く子供指向派を指向した作品です。つまりは、何か凄いことをしているかのような気分になれるが、実は中身がない「衒学」的な作品でしかありません。(「衒学」とは庵野監督自身が自作を語る際に使う言葉)

 しかし、TVシリーズの最後の2話において、突如として子供指向派の世界観では受け入れられない、むしり裏切りとしか言いようのない内容を語り出します。

 1980年代の状況であれば、大人指向派がアニメファンの言説の主導権を取り、それがいかなる社会的な意義を持つものかを説くことで、アニメファン世論の流れを作ることができたかもしれません。

 しかし、もはやそのような論理を必要としない多数派の子供指向派は、監督非難の大合唱を起こし、大人指向派の言説はほとんどかき消されてしまいました。(あるいは、エヴァンゲリオンは大人指向派から見て語るに値するだけの価値を持たなかったのかもしれません。少なくとも、私にとっては、最初から語る価値の無い作品でした)

 この後、アニメファンにおいて子供指向派は最も影響力を行使する多数派となるだけでなく、周囲からもそのように認識され始めます。

 その結果、必然的にアニメファンを主たる客層として想定したアニメは、子供指向派に特化した内容への偏りを見せ始めます。

大人指向派アニメの抵抗と敗北 §

 アニメファン向けのアニメ作品が子供指向派への特化を進める中、それに抵抗するかのような作品も生まれています。

 しかし、それらはことごとく敗北の海に沈んだと言えます。(詳細は略します)

 そのような状況下で、最後の抵抗、あるいは最大の和解勧告とも言える究極の作品が出現します。

 それが蒼穹のファフナーです。

蒼穹のファフナーという相互理解への最大限の取り組み §

 2004年7月5日より放送が開始された蒼穹のファフナーは、非常にコミュニケーション指向が強い作品であると言えます。人と人とがコミュニケーションするとはいかなることか。そして、それと対比する形で、コミュニケーションを行う必要がない「全てが1つであり時間の流れを持たない」存在であるフェストゥムと呼ばれる存在が描かれます。

 このようなテーマ性を持った作品が作られねばならなかった必然性は、特にエヴァンゲリオン以降、大人指向派アニメの語る言葉が、ことごとく多数派のアニメファンに届かないという現実があってのことでしょう。つまり、何かを語る前に、他人の言葉を聞くということはどういうことかを示し、相互理解の糸口を求めねばならなかったのです。もちろん、大人指向派アニメは、そこまで追いつめられていたということです。

 結果的に、蒼穹のファフナーは、現在のアニメにおいてなし得る最大級の良心的な分かりやすさを通じて、相互理解とは何かという問題を、娯楽作品という体裁を維持しつつ示すことに成功した希有の傑作であると私は評価します。

最後の相互理解の試みは潰えた……まるで当然のごとく §

 しかし、このような最終的な相互理解への取り組みは、アニメファンの多数派からは全く理解もされず、支持もされません。

 このような結末に至ったのは、当然のことと言えるでしょう。

 アニメファンの多数派である子供指向派は、痛い思いをしてまで相互理解をする必要など存在しないのです。ただ待っていれば、彼らを気持ちよくしてくれるアニメが次から次への作られます。彼らはそれを消費し続けるだけで良いのです。消費が続けば、そこに市場が出現し、供給者が現れます。子供指向派アニメファンは、うま味のある商売の顧客として存在が肯定されており、いわば小さな王子様なのです。何も、その小さな王子様の地位を捨ててまで、荒野に出て痛い思いをする必要などないのです。

 ですから、ファフナーが示したような相互理解の試みは当然のごとく失敗します。片方だけの都合で必要とされる相互理解は、成立しないのが順当な結末です。

 しかし、ファフナーという作品に存在意義が無かった、とは言いません。これだけの作品を作り得たということは、日本にアニメ界にとって誇るべき成果であると胸を張って良いと思います。

 それと同時に、最も良心的な相互理解の試みが潰えたことは、アニメブーム30年戦争の終結という象徴的な意味合いをもたらしてくれたと思います。

 そのような意味で、蒼穹のファフナー最終回が放映された2004年12月26日を、アニメブーム30年戦争において、大人指向派の完全敗北が確定した日であると位置づけてみたいと思います。

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