大方の森ファンとおそらくは違って、私はこのシリーズ、好きです。
つまり好きの度合いから言えば、
となります。
大方のファンは、犀川と萌絵がいちばん好きなのだろうと推測しますが。
むしろ、超人でありすぎる犀川の活躍など読んでもつまらないし、萌絵もヒロインとしてのある種のかわいげが欠落していると感じます。
この本も、犀川と萌絵の出番がもっと少なければ、もっと良かったと思います。
何が良いのかと言えば §
私が良い!と思う、このシリーズの特徴は主に2点あります。
1つは、加部谷、海月、山吹らの若者達がいかにものびのびと描かれているところ。この、のびのび感は犀川と萌絵にはないものです。特に屈託のないかわいげのある加部谷というヒロインの存在意義は大きいと思います。
もう1つは、確定的な結論が得られていないこと。そのことに、推理ショーの主役が有自覚的であり、かつ、それを明示していること。そして、作品そのものが、犯人の逮捕や自白を描かないこと。そういう意味では、海月は「知性の巨人」というに値するし、知力の行使者としての誠実さにおいて、犀川を上回ると思います。
おそらくは、そのような解釈は多くの読者には手の届かないところにあるかもしれないと思いつつも、そのことの価値を書かずにはいられないわけですね。