謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!
2005年7月14日放映の「裂空の訪問者デオキシス」の感想。
タイトル §
劇場版ポケットモンスターアドバンスジェネレーション 裂空の訪問者デオキシス
あらすじ §
宇宙から仲間を捜してやってきたデオキシスは、成層圏に住むレックウザに縄張りを荒らされたと勘違いされ、攻撃されます。
そのバトルにより、トオイはポケモン恐怖症となる体験をします。
デオキシスはレックウザに敗北し、海底に沈みます。
宇宙から来たデオキシスが探していた仲間となる物体は、ロンド博士に回収されます。
4年後。
ハイテク都市、ラルースシティでは、ロンド博士がレックウザを復活させる研究をしていました。
サトシ達は、ラルースシティに来ます。
レックウザに敗北したデオキシスは自分を復元して、ラルースシティに来ます。それに気づいたレックウザもラルースシティに来ます。
ラルースシティでは避難が行われますが、サトシやトオイ達は逃げ遅れます。
レックウザはラルースシティに侵入し、壮絶な戦いが始まります。
サトシ達は、デオキシスが探していた仲間を復活させるしか、戦いを止める方法がないと考えます。彼らは風力発電機を動かし、デオキシスを復活させます。眠っていたデオキシスは、トオイの友達であった謎の物体であることが分かります。
2体のデオキシスは再会します。
しかし、ラルースシティのキューブロボットが過剰反応し、デオキシスとレックウザを襲います。
2体のデオキシスは、レックウザを守ります。
サトシとトオイは、ロンド博士より彼らしかキューブロボットを止められないと教えられ、必死にそれを止めます。
トオイは落下するプラスルとマイナンを必死に抱き留め、ポケモン恐怖症を克服します。
レックウザは成層圏に戻り、2体のデオキシスは宇宙に帰って行きます。
感想 §
おおおお!
なんという面白い映画だっっっっっ!
これほど面白い映画だとは思わなかったぞ!!
それもこれも、前情報や伝聞の感想に誤った印象を植え付けられたためです。前情報では、ハイテク都市や、デオキシスとレックウザの戦いばかりが強調されていたし、伝聞では戦ってばかりのつまらない映画だという意見も聞こえてきました。
それゆえに、そのような映画だと何となく思い込んでいました。
しかし、見てびっくり。
まるで違います。
実は戦闘シーンはさほど多くありません。
しかも、サトシ達が戦うシーンは特に少ないのです。
ほとんどの戦いは、デオキシスとレックウザの戦いを描いていて、その状況でのサトシ達は、戦いの当事者ではありません。
そう、ここが最も「おおっ!」と思わせるところですが。
サトシ達の立場は、異常事態に襲われた都市でサバイバルを行う子供達であって、けして侵略者と戦う正義の戦士ではありません。そこがもう、最高にワクワクする面白いところですね。たとえば、隠れる場所を探したり、食料や水を調達する描写は、「悪い宇宙人」と戦うドラマよりも、はるかに切迫感があり、ドキドキします。
そして、もう1つ。この異常事態で、絶対的な悪者が存在しないことも、特筆に値します。デオキシスは、仲間を探しに来ただけであって、けして他人に害をなそうとしていたわけではありません。結果的に人間を襲っていますが、それは悪意によるものではありません。喋る言葉は分からなくとも、デオキシスには感情移入できるところがあって、むしろ暴力的にデオキシスを襲い続けるレックウザの方が悪者に見えます。とはいえ、レックウザとしても、何かの悪意によって行動している訳ではなく、やはり本能的なやむを得ない行動という雰囲気があります。
つまり、両者の戦いは、不幸なすれ違いによって起こったことに過ぎないと言えるのです。
人間とポケモン達は、それに巻き込まれたに過ぎないのです。
更に、暴走するキューブロボット達も、けして何かの悪意によって動いているわけではありません。
つまり、この映画には悪人がいません。
悪人は存在し得ない世界なのです。
克服されるべき問題とは、悪を倒すことではなく、和解し互いに触れ合うことです。だからこそ、2体のデオキシスは出会い、デオキシスはレックウザを助けることで和解し、そしてトオイはプラスルとマイナンを抱きしめてポケモン恐怖症を克服するのです。
であるからこそ、この映画には、ロケット団のいるべき場所がありません。彼らがほとんど活躍しなかったことは、当然成り行きと言えますね。
更に感想 §
他に、特に良かったと思うのは、一緒にサバイバルを戦うゲストキャラの少年少女達です。
彼らは、みな魅力的です。
この映画の中でしか活躍しないというのに、かなり多くの人数が出てきています。しかし、一人一人が異なる魅力を与えられているために、(双子の女の子の区別は別として)、誰もが印象深く思い出せます。
中でも、いつもパソコンを持っている眼鏡の女の子(ヒトミ)は、独特の味がありますね。パソコンの画面に見えている映像が映し出されることで、別の印象が与えられる演出が面白い、というだけでなく、彼女自身に面白い魅力があります。
また、バシャーモを使うサトシのライバル的なキザ男(リュウ)も、妹に気を使うところを見せるなど、人間的な奥行きがあって魅力がありますね。
風と風車という演出 §
デオキシスのバリアが街を囲むと、風が止まります。
風力発電機の風車も止まります。
それなのに、どうやって風車で電気を起こすのかと思ってみていると、人力で引いて回転させていますね。これはびっくり。しかし、みんなで力を合わせて風車をまわすというのは、非常にビジュアル的に分かりやすく良い描写だと思いました。絵的にインパクトがあります。
それだけでも面白いのですが。
更に、バリア崩壊後に、風が吹いてきて自然に風車は回り始めます。それによって電力が供給され、キューブロボットが復活してしまいます。それによって新たなピンチが訪れるわけですが、それらの一連の流れが、風、バリア、風車の関係で自然に生み出されているのは、極めて高い構成力が発揮された成果でしょう。実に素晴らしいですね。
今回の一言 §
良質な昔の怪獣映画のようだ、という印象を持ちながら見ていました。
つまり、人類の味方、正義の怪獣が出てこない映画です。凶悪な怪獣が2体出てきて戦っているのだけれど、人類には為す術がない。いや、それでも非力な人間は必死で問題を解決するために努力するのだ、というようなタイプの怪獣映画に近い印象がありました。これは、とても好感できる特徴です。