読み始めて愕然。
これ、本当に谷甲州さんの小説!?
素人が偉そうに言ってしまいますが、プロの小説として失格でしょう。
というような作品が並んでいて泣けてきました。
おかげで、途中でだいぶ長い間読むのを中断していました。
しかし、それでも読むのを再開してみました。
SFは人間が描けていない §
SFは人間が描けていない、という批判がありますが、その意味が良く分かりました。
まさに人間が描けていない小説が続きます。
人間はやはり重要です。特にSFでは重要度が高いと思います。なぜなら、未知の世界を描くということは、読者に理解可能な存在は作品中に人間しかないことになり、それを通じて受け入れるしかないからです。それゆえに、人間に説得力がないと、SF(言うまでもなく小説のことを意味します)は崩壊します。
もっとも、これはブンガクのように人間を描けという意味ではありません。それは無意味かつ無駄かつ有害な試みでしょう。読者に説得力のある人間を提示できれば良いのであって、ブンガクであろうとする必要は全くありません。
だが読み進めた甲斐はあった §
最後の2作だけは納得しました。
これは良く書けています。というか、本当は書ける作家のはずですよね。
ガネッシュとバイラブ §
初期作品の全面改稿だそうです。
最初、この結末に違和感を感じました。
絶対命令を死守するためにあらゆるものを犠牲にした存在が、あっさりと絶対命令を捨ててしまうのです。
しかし、彼の人格のモデルとなった者の行動を思い返すと、それがいかにも正当な人間性であることが分かります。彼は、不意打ちを食らって仲間が死ぬと、本来命に代えても貫徹する必要があったはずの政治犯の釈放や恒星船の獲得を放棄し、自分が乗っている宇宙船で地球まで戻ろうと画策します。つまり、最終局面で背負ったものを捨ててしまう人格であるということが示されています。だからこそ、最後の結末で、やはり背負ったものを捨ててしまう描写は正当であり、筋が通っているのです。
まあ、この内容を全肯定するかという問題は別として。
星空の二人 §
文庫書き下ろし。
時間がずれ、仮想人格を通した数十日の遅れのある恋愛……、という話も面白い味付けになっていますが、何よりなぜ二人が愛し合うようになったのかが納得いくように描かれていたので、納得しました。
仮想のものとはいえ、図書館の書庫での恋愛ドラマというのも嫌いではないしね。
まあ、この内容を全肯定するかという問題は別として。
5月に買った本なのに…… §
やっと読み終わりました。
しかし、次に読んでいるのは、もっと前に買った本だったり…… (汗