敵本部「本部より掃討部隊。状況を報告せよ」
敵部隊「こちら掃討部隊。どこももぬけのカラだ」
グリム「混線? 敵の通信が!」
スノー「気にするな。ユークの通信が筒抜けなのは毎度のことだ」
グリム「いえ、この敵はユーク兵ではないかもしれません」
スノー「どういうことだ?」
グリム「ユークトバニアの元首はニカノール首相ですよね?」
スノー「その通りだ。で、オーシアの元首はハーリング大統領だ」
グリム「そうです。誰も総統という称号は名乗っていません。それなのに、総統直属を思わせる総統部隊という敵が出てくるということは……」
ナガセ「まさか。彼らは、ユーク兵に偽装したベルカ兵だというの?」
グリム「その可能性はあると思います」
スノー「しかし、総統直属の部隊が、わざわざ北ベルカからユーク領内まで出て来たというのか?」
グリム「それは十分に考えられますね。核兵器といえば、おそらく国家の最重要機密兵器でしょう。それを取り戻すために、エリート中のエリート、総統の直属部隊が出てきたとしても不思議ではありません」
スノー「しかし、ベルカの国家元首は総統という称号で呼ばれているのか?」
グリム「核を起爆させて立てこもる前は、首相と呼ばれていたはずです。ですが、そのあと政治システムを変えた可能性はあります」
スノー「つまり、ワイマール憲法下のドイツの選挙でナチス党が大勝利して、ヒトラーが総統になったのと同じようなことか?」
グリム「その通りです。追いつめられた国家では、国民が自ら喜んで独裁者に権力を渡すものです」
スノー「しかし、総統と言われてもピンと来ないな。ヒトラーのような男だろうか」
グリム「顔が青くて、デスラー総統みたいな人だったりして」
ナガセ「ドップラー総統のような人なら、いいのにね」
グリム「ナガセ大尉、ドップラー総統って誰ですか?」
ナガセ「惑星ロボ・ダンガードAの登場人物よ。惑星プロメテへの移住を競う一方の勢力のリーダーだわ。ああ、異星への移住を目指す総統って素敵。ついでに、部下に金髪美形のエースパイロットがいれば完璧だわ。ああ、トニー・ハーケンは私の初恋の人なのよ~。パイロットになろうと思ったのも、もともとはトニーに近づくためなの」
ブレイズ「……」
グリム「……」
スノー「……」
グリム「敵機です。この前の偵察写真の奴だ!」
ナガセ「気をつけて。おやじさんがいっていた、ベルカ人のエースよ」
グリム「オヴニル戦闘機隊……。ユークのアグレッサーか!」
ナガセ「まさにダンガードAならトニー・ハーケンの役柄に相応しいわ!」
スノー「空戦で確かめるぞ! 奴らが金髪美形の存在なのか!」