とっくに読み終わっていました。
まあ、いろいろな理由で、感想を書くのが遅れていたわけです。
第35章『満月』 §
これは大傑作ですね。
他者の視点から描くというのは、自分と他人の区別がしっかりできていないと不可能な表現です。しかも、「証言」という言葉の積み重ねでドラマが構築されるところが、非常に面白いムードになっていますね。
科学で怪異に立ち向かう §
興味深かったのは、HAMMERです。
科学で怪異に立ち向かうと言う割には、あまり理性的な人たちには見えません。
そこで連想したのは、コミック版のデビルマンです。あれに出てくるデビルマンを研究する科学者達も、このような雰囲気ではなかったかな、という気がしました。
とはいえ、デビルマンを読んだのは30年ぐらい昔の話なので、記憶は極めてあやふやです (汗。
この印象が正しいという保証は全くありません。
ジエメイの自己犠牲の理由 §
実は、長い間積まれて放置されていた「百器徒然袋 風」を読んでいるところです。
そこで、興味深い説明に出会いました。
p86より引用
「そう。火車伝説には鍛冶、製鉄が関係している可能性がある。鉄を鍛える際に人間の屍体を炉に入れると具合がいいのだそうだ。人骨に含まれる燐などの成分が炉の温度調節などに影響を与えるらしいのだが----製鉄関係者が非合法に遺体を持ち去るということは実際にあったらしい」
つまり、ギリョウが「獣の槍」を鍛える際にジエメイが自分の身体を捧げるという行為は、呪術的効能の他に、このような物理的な効能が存在した可能性が考えられます。
この作品、見かけのおどろおどろしさと裏腹に、合理的、論理的に作られている要素が強いのが面白いところですね。