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遠野秋彦 | ドメイはメイド ドメイはメイド お屋敷のメイド 大きな大きなお屋敷の 100人もいるメイドの中で いちばん可愛いメイドさん ドメイの噂は世間に流れる ドメイの噂は世間に流れる とても可愛いメイドがいるよ あのお屋敷にドメイがいるよ ドメイも仕事でお使いに出る お屋敷の外にお使いに出る それはメイドの普段のお仕事 当たり前のお仕事 でも、ドメイの場合、ちょっと違った ドメイを目当てに男達が やって来ては口説こうとする ドメイ、ドメイ 僕とデートしておくれよ そして、僕のために その素敵なメイド服を脱いでおくれよ もちろんドメイは 男達を拒絶する それはメイドの仕事ではない ドメイの仕事ではない それでも、ドメイは良い気持ち 男に言い寄られて良い気持ち ドメイの生家は芋掘り農家 ドメイは三女 冴えない三女 貧乏農家の 冴えない三女 口減らしのために 奉公に出された 冴えない三女 姉にも妹にも負けて ただ一人奉公に出された 冴えない三女 それが今やどうだ 男達はドメイを口説く 姉たちの結婚相手より ずっと金持ちの男まで ドメイを口説く 熱心に口説く いつしかドメイは自信を持った コンプレックスの裏返し 過剰すぎる大きな自信 ある日、ドメイは叱責された 仕事の不始末を叱責された 女主人はこう言った 仕事ができないメイドなど もはやメイドではないと そして、メイドの証したるメイド服を 今この場で脱いで去れと 冷たく言い放った それは一時の感情 流れの中で飛び出した 売り言葉に買い言葉 しかし、ドメイは思った 今こそ、男達の求愛を受け入れるとき 男達は望んだ ドメイがメイド服を脱ぐことを ならばどうして 脱いで悪いことがあろうか メイド服さえ脱げば ドメイは自由の身 ドメイは脱いだ メイド服を ドメイは脱いだ あらゆるしがらみを ドメイは屋敷を飛び出した もう怖いものなど何もない さあ男達よ ドメイは自由になってここにいる いくらでも好きなだけ 愛を囁いておくれ だが男達は誰もが逃げ出した ドメイは男達を追って走った だが男達から逃げられた ドメイは混乱しながら走り回った ついに逃げない男が現れた 純朴な町の警官 ドメイに愛を囁く男の一人 誠実そうで ドメイも好感を持っていた相手 ドメイは、警官に駆け寄る 警官は、いきなりドメイの手に 手錠をはめた 冷たい冷たい手錠をはめた なぜ……、どうして!? 叫ぶドメイに警官は答えた 服を脱いで町中を走り回ったら 公衆面前全裸わいせつ罪の現行犯 今やドメイは囚われ人 ドメイは牢屋の中 ネズミだけが チューチューと ドメイに愛を囁く チューチューと たぶん愛を (遠野秋彦・作 ©2005 TOHNO, Akihiko) ★★ 遠野秋彦の長編小説はここで買えます。 |
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