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遠野秋彦 | 世の中には とても不思議なことがある テレビの番組表を見たら トランスの専門番組が目に付いた 深夜の番組 トランスを愛するという意味のタイトル どうしてトランスなのだろう? トランスはそれほどまでに素晴らしい? ハウス食品のレトルトカレーを食べながら 僕はしばし考えた 素敵なトランス 電線が巻かれ巻かれて 100ボルトを入れると 12ボルトが出てくる 12ボルト出力は セレン整流器につなごう これで交流も直流に 変換される ところがどっこい もはやセレンは売っていない 今の時代はダイオード ダイオード4本を ダイヤモンドに組んでみる そしてつなぐはレオスタット 可変抵抗器 電流をカットしてやれば 流れる電流を制限でき 接続したモーターの速度も変わる これで完璧 鉄道模型のパワーパック キーになるのは素敵なトランス …… こんなことでテレビ番組が できるのだろうか 視聴者は喜ぶのだろうか 何かが間違っている 僕は最初から考え直すことにした 気分転換に プールに行こう ユーロで料金を払い ビート板で泳ぐ プールで口説いた女の子はジュリといい 職業はアナだと胸をはった 無い胸を張った 彼女はとても見栄っ張り アナウンサーというのも見栄の嘘 彼女は単なる無線オペレータ そこで僕は思いついた そうだトランスだ! アイエフティーだ 中間周波数トランスの略 6石スーパーを作ったら ドライバーで調整するぞ ラジオの選択度をアップする 素敵な素敵なトランスだ 僕は喜んで ジュリに語った トランスの話を 素敵な中間周波数トランスの話を ところがそこで、奇妙な間 ジュリはすっかり白けていた 僕は慌てて質問した 無線オペレータの仕事の途中で こんな間ができたらなんて言うの? ジュリは応えた ラジャというの 了解という意味よ そうか こういうことか 間はラジャ! そこにアメがパラパラ降ってきた あ~ん、傘持ってきてない そういう彼女の言葉を聞いて 僕は心に決めた 彼女を家まで送っテクノだ 心臓ドキドキ160BPM (遠野秋彦・作 ©2006 TOHNO, Akihiko) ★★ 遠野秋彦の長編小説はここで買えます。 |
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