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2006年03月02日
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オルランドの小雀戦闘機隊 (前編)

Written By: 遠野秋彦連絡先

 マイネは緊張していた。

 100M級駆逐艦のパイロット待機室は狭く、息苦しかった。

 なぜ、これほど狭いのだろう……、とマイネは思った。もちろん、それには理由がある。100M級駆逐艦は、本来なら対艦攻撃機MARK-VIアタッカーと呼ばれるべき存在だったのだ。しかし、超光速駆動エンジンを装備するものは「艦」、装備しないものは「機」または「艇」と称するという分類規定により、攻撃機ではなく駆逐艦に分類されたものに過ぎない。そして、敵艦への突撃を妨害する迎撃機を排除するために搭載される2機のMARK-Iファイターは、100M級駆逐艦にとって補助装備に過ぎず、それを運用するスタッフのための部屋は極限まで切り詰められていた。むしろ設計者からすれば、独立した部屋を用意できただけでも有り難く思え、といったところだろう。

 だが、それをマイネが知るよしもない。それはマイネの生まれる遙か以前の経緯であるし、正規の軍人ではないマイネにそのような歴史が教育されるチャンスも無かった。

 そう。

 マイネはもともと軍人ではない。

 オルランド人の心の痛みを和らげるために作られたハイパー・アンドロイド……、通称ハイプの一人に過ぎない。

 「大宇宙の守護者」と自らを称するオルランドは、高い倫理性、高度なテクノロジー、圧倒的な軍事力、不介入の原則などを貫き、まるで神の代理人であるかのように振る舞ってはいるものの、それは欺瞞に過ぎない。

 現実のオルランド人とは、地球を守るために命を捧げた戦士達であったはずなのに、意図せずして1種族を滅ぼし、地球からは殺戮者として帰還を拒否され、更には委細不明の高次元存在との邂逅を通じて老いない代わりに子を成せない身体に作り替えられてしまった哀れな者達。

 オルランド人が故郷とするのは、本来は移動可能な軍事拠点として建造された自然のカケラもない金属の固まりに過ぎない人工惑星。

 そして、かろうじて受け入れを認めさせた女子供を地球に帰した結果として、オルランドには男しか残っていなかった。女子供だけは地球に戻すというのは、もちろん最大限の騎士道精神の発露と言えた。しかし、それと引き替えに残ったのは、男だけで人工惑星に住む集団、しかも老いない身体を持ち、そのような集団を永遠に生き続けねばならない宿命まで背負わされているのだ。

 オルランド最大の変人とも言われるドクター・キガクは、そういうオルランド人を慰めるために、物質に擬態するエネルギーフィールドによって、まるで女性であるかのように見える存在であるハイプを生み出した。

 マイネも、量産されたハイプの一人ということになる。

 そして、マイネが初等教育で教えられた決定的な事実。

 それは、「ハイプはオルランド人の痛みを和らげることはできても、けしてオルランド人の心の痛みを癒すことはできない」ということだ。

 ハイプとは、オルランド人からすれば人工の代用品に過ぎないのだ。

 マイネ達ハイプも、達成不可能な目標のために努力し続けるという宿命を背負った悲しい存在なのだ。

 そして、オルランド人が「大宇宙の守護者」を自認することも、実は心の痛みを和らげ、永遠に生き続けている意味があると「自分を騙す」ために行われている欺瞞に過ぎない。

 歴史的経緯から軍人だけで構成されるオルランドにあって、ハイプは擬似的な「民間人」という役割を与えられていた。

 オルランド人が生々しい現実を忘れるためには、オルランド人の職場から癒し手たるハイプを隔離しておく必要があったのだ。

 ゆえに、皇帝の愛人用として特注されたアヤが、その後SSN(スペシャル・スター・ネービー)所属となって特殊任務に従事するようになったような特殊な例外を除けば、ハイプは軍に属してはならない存在だった。

 だが、今のマイネは、まさに軍人たる戦闘機乗りに与えられるパイロットスーツを着て、パイロット待機室に座って戦闘機に乗り込む時を待っている。これは、本来ならあってはならない状況だった。

 そして、この着慣れないスーツが、マイネの緊張を高めているのは間違いなかった。しかも、このスーツはどうだ。全身の肌に密着し、まるで第2の肌のようにうねりながら光沢を放っている。それは、マイネの小柄だがグラマーな肢体の曲線を余すところなく強調していて、たまらない官能性を放っていると言っても良かった。一ヶ月前のマイネがこの服を手に入れていたら、間違いなく自らの官能性を強調するために着ただろう。それがオルランド人を慰めるすべの1つだと知っているから。

 だが、今はマイネの身体が持つ大きく膨らんだ胸もくびれた腰もふくよかな腰も大きな瞳も小さく桜色の唇も、その全てが要求されてはいなかった。

 そう。

 今のマイネは、オルランド正規市民達のプライベート・パートナーではないのだ。新型戦闘機のテスト・パイロットであり、これから行われるテスト飛行を成功させることだけが期待されている。かつて、日常的に意識していた服の持つ官能性など、カケラほども評価されることはない。

 ここでの主役は、マイネではない。これからテストされる新型戦闘機こそが、オルランド人が注目する主役だった。その戦闘機に全力を発揮させるには、パイロットとしてハイプを乗せるしかない……という理由により、たまたま偶然にいくつかの適正に合致したマイネが急遽スカウトされたというだけの話だ。

 だが、マイネがスカウトを受けた理由は、軍人になりたかったらからでも、戦闘機を操縦したかったからでもない。これが、オルランド人の心の痛みを和らげることになると気付いたからだった。

 故郷の者達にオーバーキル・ウォー(過剰殺戮戦争)と蔑まれた祖国防衛戦争の時代から、オルランドは『戦闘機』と通称される高機動小型宇宙戦闘艇に対して様々なトラウマを抱えていた。これは、それのトラウマを解消できるチャンスかもしれないのだ。

 オーバーキル・ウォーの時代、最初に投入された戦闘機『シャーク』は、右も左も解らない時代の実験機の改修モデルに過ぎず、数時間以上母艦を離れる運用があり得ないにも関わらず、機内に寝泊まりできる居住設備が備わっていて、それらは全くのデッドウェイトであった。

 その後、戦訓を取り入れられて整備された第3世代と呼ばれる兵器ラインナップの一角をなすMARK-Iファイターは、実は主力戦闘機として設計されたものではなかった。本来主力となるべく計画された戦闘機の開発は全て失敗したのだ。MARK-Iファイターとは、反物質弾頭ミサイルを敵艦に肉薄して撃ち込むために開発された攻撃機MARK-Iアタッカーの装備として開発された簡易戦闘機だったのだ。しかも、最初から計画されたものではなく、アタッカーの攻撃が敵戦闘機に妨害された場合成功率が非現実的なまでに低くなるという予測結果が出た後に、敵戦闘機を排除するためにアタッカーの腹に抱えて戦場まで運べる簡易戦闘機を急遽追加設計したものに過ぎなかった。それでも、極度にシンプルな構造が高い実用性に直結し、MARK-Iファイターはオルランドを代表する戦闘機となった。

 しかし、MARK-Iファイターは最初から主力戦闘機としてパワーも火力も不十分だった。これを解消するために開発されたMARK-IIファイターは、アタッカーの格納庫に納めるためにMARK-Iファイターと同じサイズに高性能を押し込めようとして、結果として構造の複雑化を招いてしまった。つまり最前線でのラフな扱いに耐えるものではなかった。結局、最前線を支えたのはMARK-Iファイターであった。

 使える強力な戦闘機を作るためにはサイズの制限を取り払わねばならない……ということで、機体の大型化を許容して開発されたのが、MARK-IIIファイターだった。アタッカーは無理でも、大型艦にはこれが問題なく搭載できるはずであった。しかし、依然としてアタッカーにはMARK-Iファイターを搭載する必要がある関係上、複数機種の混在搭載による面倒を嫌った現場は、MARK-IIIファイターには消極的だった。機体の大型化に伴い、搭載機数が減ることも忌諱された理由の1つだ。かくして、MARK-IIIファイターは事実上使われることのない機体となった。

 最終的に、戦闘機はMARK-Iファイターと同じサイズでMARK-IIIファイターと同じ性能を発揮させねば実用に耐えない……という認識が持たれた。そして、技術革新を重ねてまさにそれを実現するMARK-IVファイターが生み出された。だが、技術革新は、MARK-IVファイターの性能を向上させるだけではなく、MARK-Iファイターの性能も向上させていた。繰り返し適用されたMARK-Iファイターの改修キットにより、MARK-Iファイターの性能も上がっていたのだ。確かにMARK-IVファイターの方が高性能ではあったものの、MARK-Iファイターをスクラップにして入れ替えるだけの圧倒的な魅力は無かったのだ。

 かくして、未だにオルランド宇宙軍の大半の部隊では、MARK-Iファイターが主力戦闘機として君臨するという事態が続いていた。

 あらゆる戦闘機の開発に失敗し、唯一の成功作であるMARK-Iファイターですら、実はアタッカーの設計の途中で意図せずして産み落とされたオマケのような存在なのだ。これは、まさにオルランドにとって、トラウマというべき事態だった。

 そのトラウマが解消されるか否かの重大なテスト。その責任を、マイネは正しく理解した上で自ら望んで背負ったのだ。

 壁のスピーカーが鳴った。

 「マイネ特務少尉、時間だ。格納庫へ」

 マイネは立ち上がった。

(中編へ続く)

(遠野秋彦・作 ©2006 TOHNO, Akihiko)

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