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2006年12月21日
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まテば海路の日和あり

Written By: 遠野秋彦連絡先

 パラレルワールドという言葉をご存じだろうか。

 我々が存在するこの世界と平行して別の世界が存在するという仮説だ。

 世界は可能性に満ちている。

 どちらに転んでもおかしくない確率的な出来事の宝庫だ。

 そして、実際に選ばれるのか1つの可能性でしかない。だが、選ばれなかった可能性はどこへ行くのだろうか?

 実は、確率的な出来事が発生すると、世界は2つに分かれるというのが1つのアイデアだ。片方が選ばれて、もう片方が選ばれなかった……と僕らが思うのは、僕ら自身が別れた片方の世界の住人だからだ。分かれたもう1つの世界では、別の可能性が選ばれているというわけだ。

 それがパラレルワールド仮説だ。

 否、仮説ではない。

 僕は、パラレルワールドの存在を理論的に証明した。

 あとは、それを証明するだけだ。

 幸い、その手段はすぐに見つかった。ノイマン型の半導体コンピュータに代わって今や幅広く使われる超々量子コンピュータの基礎となる超々量子理論に僕のパラレルワールド仮説を適用すると、興味深い事実が発覚したのだ。

 1つの世界が2つの世界に分かれるときに、全てのエネルギーや素粒子は複製が作られ、2つの世界に分かれていく。超々量子も例外ではない。

 ところが、超々量子が持つ曖昧なゆらぎ性質のために、非常に低い確率ではあるが、超々量子が行き先の世界を間違えるという現象が発生するのだ。

 その結果、その超々量子は、パラレルワールドで与えられた影響を受けて自分の状態を変化させる。しかし、その変化はこちらの世界で観察できるのだ。

 つまり、入れ替わり超々量子を探しだし、それに与えた影響とは異なる状態の変化を検出できれば、パラレルワールドは存在するという証明となるのだ。

 僕は、さっそく入れ替わり超々量子を探しに出かけた。非常に希な存在ではあるが、何しろ自然界の超々量子の数は莫大だ。自転車で移動可能な圏内に少ないとも1つ以上の入れ替わり超々量子が存在するはずだった。僕は探知機を作り、自転車で走り回った。しかし、反応はなかった。

 ところで、僕は周囲から引きこもりだと思われている。何回、マッド・サイエンティストだと強調しても理解されない。

 その僕が自転車で毎日走り回るようになると、周囲が好奇の目で僕を見るようになった。

 実は近所でこういう会話があったことを僕は知っている。

 「引きこもりは卒業したのかしらね」

 「でも、頭に変な帽子をかぶって(探知機のことだ)、おかしいのは相変わらずじゃないかしら?」

 「ともかく、自転車で走ってるだけじゃだめね。もっと社会に溶け込まなくちゃ」

 「何か切っ掛けになる仕事とかあればねぇ」

 「あの人、頭は良さそうだからパソコンの修理ができるのじゃないかしら?」

 「そうね。パソコンが壊れたら修理を頼んでみようかしら」

 そういう近所のおばちゃん連中の意図を知っていた以上、パソコン修理の依頼が来たら冷たく断る気でいた。マッド・サイエンティストを修理屋風情と一緒にされてはたまらない。

 ところが、いざ修理依頼が来たとき、僕はあっけに取られた。

 やって来たのはやたら可愛い服を着せられた幼女だった。

 幼女はたどたどしく言った。

 「ひきこもりのおじちゃま、うちのパソコンをしゅうりしてくださいな。パソコンつかえないと、たんしんふにんのパパにメールがだせないの」

 いい年をした中年のおばちゃんがマッド・サイエンティストのなんたるかを理解しないのは罵倒されても自業自得であるが、幼女の切実なお願いに応えないのは人として失格である。

 「で、どこがどうおかしいんだい?」と僕は質問した。

 「『ま』をへんかんすると、かならず『テ』になっちゃうの」

 「ふうむ。かな漢字変換の辞書が壊れたのかな。その程度なら僕でもすぐに直せるか」

 「わーい、ひきこもりのおじちゃまだいすき!」

 幼女の笑顔を見て僕は思った。この顔を見て依頼を断ったら、それは人ではない。

 だが、僕は自分の甘さを呪うことになった。

 どうしても故障の原因が分からないのだ。

 昔ながらの半導体のパソコンなら自信はあったが、最先端の超々量子パソコンは分からないことだらけだった。ともかく、どこにも異常が見あたらないのに、『ま』を変換すると、必ず『テ』になってしまう。

 結局、僕は「やっぱりひきこもりはダメね」という幼女の母親の視線に見送られて、すごすごと幼女の家を出る羽目になった。

 僕は、家の前に止めておいた自転車に乗ると、いつものクセで探知機のスイッチを入れた。

 その瞬間に探知機がアラームを鳴らした。

 驚いて、幼女と母親が家からできた。

 だが、驚いたのは僕も同じだった。

 待てば海路の日和ありというのは正しかった。

 探知機が指し示す方向は、幼女の家の中だった。僕は、母親があっけにとられているのを良いことに、そのまま家の中に舞い戻った。探知機の指示を頼りに部屋から部屋に回っていくと、あまりにも意外な場所で立ち止まる羽目になった。さっきまで修理できずに考え込んでいたパソコンの前だった。

 その瞬間に僕は本能的に真相を察知した。

 僕は自分の愚かさを呪った。

 そうさ。

 これは故障なんかじゃない。

 入れ替わり超々量子の仕業だったのだ。

 超々量子パソコンに詳しい友人の応援を得て、何が起きたのかはすぐに突き止められた。

 問題の入れ替わり超々量子は、おそらくパソコンの製造段階から含まれていたらしい。しかし、当初はあまり重要ではない処理を担当していたらしく、問題が顕在化することはなかった。しかし、定期的に実行されるシステムの自己メンテナンス機構がシステムの最適化を行った結果、入れ替わり超々量子はかな漢字変換の一部を担当するようになったのだという。つまり、『ま』を変換すると、必ず『テ』になってしまうのではなく、僕らが打った『ま』はパラレルワールドにある同じパソコンに表示され、僕らが見ている画面表示された『テ』は、パラレルワールドの僕らが打った『テ』だということだ。

 では、なぜ『ま』以外の文字は影響を受けないのかというと、それらの文字の処理は別の超々量子(もちろん入れ替わっていない)が行うためだ。

 僕は泣きじゃくる幼女からパソコンを取り上げると、自分の研究室に持ち込んだ。そして、パソコンに詳しい友人を軟禁してシステムを改良させた。つまり、全ての文字の変換を入れ替わり超々量子経由で行うようにさせたのだ。

 これで、僕らが変換した文字は全てパラレルワールドに表示され、僕らが画面で見る変換結果の文字はすべてパラレルワールドの誰かが変換した文字ということになる。

 さっそく僕は、功労者の友人を証人として横に座らせ、初めてのパラレルワールドとの通信を開始した。

入力: はじめまして

表示: はじめテして

 僕は歓喜した。「向こうも挨拶しているぞ!」

 「でも、やっぱり『ま』は『テ』なんすね」

 「きっと向こうの世界ではそれが普通なんだろう」

 僕は更に入力した。

入力: そちらでも入れ替わり超々量子に気付いていますか?

表示: そちらでも入れ替わり超々量子に気付いていテすか?

 「おお、向こうも同じことを聞いてきたぞ」僕は喜んだ。

入力: もちろんです。

表示: もちろんです。

 「向こうにいる奴も、当然のように入れ替わり超々量子に気付いているんだな。きっと、あれはパラレルワールドの僕だよ」

入力: この世界のそちらの世界の違いは、『ま』と『テ』が入れ替わっているだけなんでしょうかね?

表示: この世界のそちらの世界の違いは、『テ』と『ま』が入れ替わっているだけなんでしょうかね?

入力: その可能性は高そうですね。だから、僕らも『ま』と『テ』以外は全て同じ行動を取っているわけです。しかし、他にも違いがあるかもしれません。

表示: その可能性は高そうですね。だから、僕らも『テ』と『ま』以外は全て同じ行動を取っているわけです。しかし、他にも違いがあるかもしれテせん。

入力: これからいろいろな情報を交換して、違いを確認していきましょう。

表示: これからいろいろな情報を交換して、違いを確認していきテしょう。

入力: 了解です。お互い、頑張りましょう。

表示: 了解です。お互い、頑張りテしょう。

入力: このパソコンを見せれば、パラレルワールドをトンデモと決めつける奴らも考えを変えるでしょうね。

表示: このパソコンを見せれば、パラレルワールドをトンデモと決めつける奴らも考えを変えるでしょうね。

 「ちょっとまテ」と横で見ていた友人が言った。

 「なんだい?」

 「これって、本当にパラレルワールドが実在する証拠になるのか?」

 「何を言うんだ。今まさに君はその証拠を見ているところじゃないか」

 「いやさ。こうして横で見ていると、不良量子のあるメモリを使ったパソコンで、文字化けした一人チャットしてるようにしか見えないんだけど……」

 「え……!?」

 僕はそのままパソコンの電源を切った。

 友人は量子メモリを正常動作品と交換してパソコンを幼女に返した。

(遠野秋彦・作 ©2006 TOHNO, Akihiko)

 本作は読者の要望に従い書かれたものです。

せっかくだから、このネタで1本小説をかいてくれ(^^ > 「ま」を変換すると「テ」になる(^^

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