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2007年01月04日
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ウォーキング(歩く王)対ウォーキング(戦の王)

Written By: 遠野秋彦連絡先

 とある国に、たいそう美しい娘がいました。

 彼女は、国王が所有する格式あるレースチームのレース・クイーンに抜擢されて世間に知られるようになりました。彼女は、絶妙な曲線と美しい白い肌を持つ身体を、端切れのごとく小さな布だけで覆いました。しかし、いくら肌を見せても、品の良さを失うことはありませんでした。

 そして、弱き者には慈愛に富み、強き者には厳しさを見せる美しい心を持っていました。彼女の励ましの言葉は、レースチームを鼓舞し、チームを優勝に導いたのです。

 国王はこの娘にいたく惚れ込みました。可能ならば我が息子の嫁に……と思ったのですが、生憎と王子達は全員既婚の身。

 そこで国王は、この娘との結婚を望む全ての国民独身男性の中から、最も優秀な男に娘との結婚を許すことに決めました。そして、最も優秀な男を決めるために、国王はゲームを主催することにしました。

 この考えに国王はご満悦でした。しかし、娘の方は困りました。彼女にも自分の望む結婚というものがあるのです。特定の結婚相手の希望は無かったものの、勝手に相手を決められるのは御免でした。

 しかし、娘の抗議は国王に届きませんでした。国王は、お気に入りの娘の未来で頭がいっぱいであり、当の娘の言葉すら届かなくなっていたのです。

 国王は、結婚相手の総合力を推し量るものにするために、ゲームのルールを詳細を決めないオープンなものにしました。

 つまり、スポーツや囲碁将棋のようなゲームではなく、「どのような手段を使っても良いから、相手に参ったと言わせた方が勝ち」というオープンなルールを決めたのです。

 ただし、歯止めとして、対戦する当事者以外の身体や財産に手をかけてはダメ。また、互いに対戦者の身体を傷つける行為もダメと決められました。

 このゲームの主催が国中に告げられると、男達は興奮して燃え上がりました。あの娘と結婚できるなら……と思う男性はとても多かったのです。

 各地で予選が開催されることになり、次々と独身男達がエントリーしました。

 ところが、ここで意外な大物がエントリーしたことが明らかになりました。

 国内の武器商人の元締めの大金持ち、通称

ウォーキング(戦の王)が莫大な手切れ金を積み、妻と離婚した上で、このゲームにエントリーしたというのです。

 彼は既に相当の年齢であるにも関わらず、ハーレムに美女を囲い、毎晩精力的に色事をこなしていると噂される好色爺です。

 誰もが、この男だけは娘と結婚させてはならないと思いました。ゲームで彼を倒そうと心を燃やした男は数知れず。

 ところが、ウォーキング(戦の王)があることを宣言すると、状況は変わりました。

 彼は、対戦相手の家を武器で攻撃して燃やし尽くすと公言したのです。借家の場合は、建物の所有権を大家から買い取った上でそれを実行すると明言しました。

 もちろん、これはハッタリではありません。彼には、それを実行できるだけの武器と資金力があったのです。

 しかし、これは国王が決めたルールには違反していません。国王はルールが甘かったと後悔しましたが、もう手遅れです。

 ウォーキング(戦の王)以外の男達は、全てゲームへの参加をキャンセルしてしまいました。

 この状況で最も心を痛めていたのは、他ならぬ娘でした。精神の清廉潔白を尊ぶ彼女からすれば、汚い脅しを行うウォーキング(戦の王)は最も忌むべき相手でした。それにも関わらず、このままでは結婚させられてしまうのです。

 そんなとき、一人の流浪の男が国に戻ってきました。

 彼は家を持たず、どこにも定住せず、国の内外を自分の足で歩き続けていました。自分の足だけで全てを制覇する彼の名前は、通称ウォーキング(歩く王)。奇しくもウォーキング(戦の王)と同じ名前の持ち主でした。

 ウォーキング(歩く王)は、娘の窮状を知ると、さっそく足で歩いて彼女を訪問しました。

 粗末で汚れきった身なりの男が訪問してきたのを見て、娘の関係者はすぐに追い出そうとしました。

 しかし、訪問者の瞳の美しさから、精神の品格の高さを察した娘は、喜んで彼を家に招き入れました。

 ウォーキング(歩く王)は、娘と出会うと、娘の美しさよりも娘の心の痛みに驚きました。

 そこで彼はこう言い放ちました。

 「ならば私がそのゲームに出て、もう一人のウォーキングを打ち負かしましょう。その後、結婚をする前に私は国を出ます。これであなたは晴れて自由の身です。誰とでも自由に結婚することができます」

 「しかし、相手はあらゆる武器と財力を持った男ですよ。あなたには、武器も財力も無いように見えますが……」と娘は心配げに言った。

 「確かに武器と言えるのは調理に使う万能ナイフ1本で、財産と言えるだけの金もありません。しかし、大丈夫。この勝負には勝てます」

 ウォーキング(歩く王)のエントリーによって、ついに娘の結婚相手を決めるゲームが開始されることになりました。

 ウォーキング(歩く王)とウォーキング(戦の王)の戦いに国中が好奇の目を向けました。何しろ、どちらも有名人です。ウォーキング(戦の王)は金持ちの好色家として有名でしたが、ウォーキング(歩く王)も国中をくまなく歩く物好きとして、国中の人が直接会って話をしたことがあったのです。

 とはいえ、誰もが勝負の行方をウォーキング(戦の王)の圧勝と見ていました。武器も金も比較にならないからです。

 ゲームが開始される前、ウォーキング(戦の王)は様々な武器を用意し、それを使うスペシャリスト達を雇い入れました。

 一方、ウォーキング(歩く王)の方はやはり自分の足で歩き回っていました。ウォーキング(戦の王)が生まれた地方がどこかを聞くと、そこを丁寧に歩き回ってウォーキング(戦の王)のことを聞いて回ったと言います。

 それを聞いた娘は、ウォーキング(歩く王)は敵を知るために丁寧な情報を集めをしているのだと考え、彼に対する評価を高めました。

 一方、ウォーキング(戦の王)の方は、いかに情報を集めようとも絶対的な力の優位が揺らぐことはないとせせら笑いました。

 さて、ゲームが開始される当日がやって来ました。

 ゲームの規定通り、二人は自分の家でゲーム開始の瞬間を迎えました。

 さっそくウォーキング(戦の王)は部下に命じました。

 「あいつの家を焼いてしまえ」

 「ダメです、サー。ルール上彼の家と見なされているのは、実際には彼が宿泊していた宿屋に過ぎません。それは彼の財産ではないので、焼けばルール違反です」

 「ならば、宿屋を買い上げてから焼いてしまえ。私の財産なら焼いてもルール違反にならないはずだ」

 「それも意味がありません。彼はもうチェックアウトしているので、焼いたところで何もダメージになりません」

 「なんだと……」

 その間、ウォーキング(歩く王)はウォーキング(戦の王)の屋敷に向かって着実に歩き続けていました。

 ウォーキング(戦の王)は気を取り直して、部下に命じました。

 「なら、奴の持っている資産を総攻撃だ」

 「無理です」

 「なぜ無理なのだ。最高の武器と、最高のスタッフを集めたはずではなかったのか! 百万人の大群衆に紛れたたった一体の人形だけを、他人を傷つけないで狙撃できると豪語したのは嘘だったのか!」

 「嘘ではありません。お疑いならやってみせましょう。しかし、このご命令は無理なのです」

 「なぜだっっ!」

 「たとえ徒歩でも旅は金が掛かります。彼は身につけているもの以外、資産と呼べるものを持っていません」

 「ならば、身ぐるみを剥げ」

 「それは、対戦者の身体を傷つける行為の一種と見なされ、ルール違反になってしまいます」

 「うぬぬぬ」

 「戦の王よ、しかし悪いことばかりではありません」

 「どういうことだ?」

 「我々は彼を屈服させることはできませんが、彼もまた戦の王を屈服させることはできないのです。戦の王が『参った』と言わない限り、彼は勝者になれないのです」

 「ふむ。ならば持久戦か。先に音を上げた方が負けということなら、こちらの優位は間違いない。こちらには家もあれば資産もある。何年だろうと裕福な暮らしをして待つことができるが、資産を持たない彼はすぐに飢えてギブアップだろう。くっくっく」

 その間にも、ウォーキング(歩く王)は、ウォーキング(戦の王)が雇った戦いのプロ達の間を悠然と歩きました。プロ達はルール上、本人には手を出せないのです。そして、彼の後には対決の成り行きに興味を持った多くの野次馬が続きました。

 やがて、ウォーキング(歩く王)は、ウォーキング(戦の王)の屋敷の前まで来ると立ち止まりました。もちろん、門は閉ざされていて、中には入れません。

 しかし、ウォーキング(歩く王)は慌てず、叫びました。

 「おーい、もう一人のウォーキング! 降参して参ったというなら今のうちだぞ」

 しかし、ウォーキング(戦の王)から返事はありませんでした。

 そこで、ウォーキング(歩く王)は集まった野次馬に向かって話を始めました。

 「もう一人のウォーキングは子供の頃、素っ裸になって小川で泳いでいてね、岩場ですっころんで足の骨を折ったことがあるそうなんだ。もう、わんわん泣き叫んで手が付けられなくて、一緒に遊んでいた子供達が慌てて彼を担いで病院まで走ったそうだよ。もちろん、もう一人のウォーキングは裸のまま。フルチンを村のみんなに見られながらね。小さく縮こまったフルチンがヒクヒク震えていたって、そりゃもう村では何回も話題になってね。みんなで笑ったという有名な話で……」

 そこまでウォーキング(歩く王)が言ったとき、血相を変えたウォーキング(戦の王)が門から飛び出してきて叫びました。

 「や、やめてくれ。降参だ。降参するから、もうその話はやめてくれ! どうせ、もっと他にもたくさんの話を君が得意な足で仕入れてきたんだろう? それも絶対に話さないでくれ。参ったから、もう話さないでくれ! 頼む! もう参ったから!」

(終わり)

(遠野秋彦・作 ©2007 TOHNO, Akihiko)

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