ずっと前にTV放送された映画第1作 超劇場版ケロロ軍曹を今頃やっと見ていますが。
冒頭のシミュレーション戦闘シーンに登場する特撮メカに泣きました。
それは、「特撮メカがたくさん出たから」ではなく、「人気のある凄い特撮メカが並んだから」でもなく、実は「人気メカの陰になりがちな、ちょいマイナーな特撮メカが並んだから」でした。主流派に置いて行かれるマイナーな世界に愛を示したようで、とても泣けました。もちろん、心に暖かいものが込み上がりました。
演出のうまさ §
まず、グレー一色の典型的な「やられメカ防衛隊」的な戦闘機隊の出現。
ここで、そういうぬるい映画だと油断させる演出がにくい。
ガウォークっぽく足を下げる戦闘機の描写で「おや?」と思わせた後、たたみ掛けるメカの連打。
- マットアロー2号っぽい(けど垂直尾翼上の水平尾翼がない。別機種?)
- マイティ号? っぽいけど、明らかに形が違う
- 惑星大戦争の地球防衛艦轟天? (どの轟天かは確定できないが、少なくとも海底軍艦ではない)
- さらば宇宙戦艦ヤマトのアンドロメダっぽい (特撮メカじゃないけどさ!)
これらのメカに共通するのは、本来主役を張れるはずなのに、人気メカの陰に隠れがちの不遇な存在ということ。
帰ってきたウルトラマンでいえば、文句なく主役メカはアロー1号であり、1番人気はリアルタイム当時の私の周辺では文句なくマットジャイロ(だったように思う)。アロー2号はそれらの陰に隠れていました。マイティ号はマイティジャックの主役メカですが、成田亨メカという観点から見れば、やはりウルトラホーク1号という大人気傑作メカの陰に隠れてしまいます。轟天はもちろん海底軍艦の轟天号が圧倒的に支持されていて、他の轟天はどれも積極的に語られる対象ではないでしょう……、特に惑星大戦争の轟天は顕著に。アンドロメダも、デザインの良さの割に、圧倒的なヤマト人気の陰になりがちです。
つまり、圧倒的な「主役」の暴力的な存在感によって過剰に阻害されたメカ達がずらっと出てきたな、と感じたわけです。これは泣けますね。良いです。
踏めない自動車 §
このような、『圧倒的な「主役」の暴力的な存在感』に対する有自覚的な描写は、他にも見られます。たとえば、巨大化したケロロが歩きながら道路上の自動車を踏めないというのは、明らかにそれを示します。たいていの巨大化したヒーローは、自動車を踏まないようになど気を遣いません。この描写は、誰かの大切な私有物である自動車を平然と破壊しても何ら罪にも問われないし、問われるとも思っていない『圧倒的な「主役」の暴力的な存在感』に対する異議申し立てとも言えます。そして、そのような異議申し立ては、ヒーローに感情移入できず、むしろヒーローによって踏まれる側にこそ自分の居場所を見いだす側から見れば、とても心熱くさせるものなのです。
つまり §
主流のお約束を素直に受け入れられない私のような人には、とても素晴らしい映画だった……というわけです。
補足・ケロロ映画として §
この映画で好感を持ったのは、けしてファンサービス映画にせず、ケロロを知らない人が見ても1本の筋の通った作品として作ろうという心意気です。
その際、最大の問題は侵略者と地球人が仲良く暮らす状況が分かりにくいことだろうと思います。それを短時間で説明するのは難しいと思います。
この映画の本質的に優れた部分は、その「短時間で説明できないこと」を映画のテーマそのものに据えて、長い時間全体を通してそれを語ったことだと思いました。つまり最大の弱点をアピール点に変換してしまったわけですね。見事です。