森博嗣原作押井守監督作品のスカイ・クロラのゲーム版をProject Acesが製作中であることは既によく知られています。
更に、押井守監督自身がゲーム版スカイ・クロラをプレイして喜んでいる映像もゲーム版のトレーラーとして公開されています。
かなり押井守監督とProject Acesの相性は良いようです。
しかし、ACE COMBAT 5をプレイ中にふと気付きました。
ACE COMBAT 5に出てくる動物といえば犬のカークに、ムービーは鳥だらけ。エンディングで多数の鳥がずらっと並ぶ印象的なカットを始め、エンディングで街頭の上に留まる鳥など多数。
犬と鳥といえば、押井守監督の典型的なモチーフではないか!
更によく考えてみると、押井守監督がよく使う「現実と倒錯される虚構」も、ACE COMBAT 3の真のエンディングを始め、ACE COMBATシリーズでよく見かけるモチーフです。
つまり、押井守監督とACE COMBATシリーズは極めて相性が良かったわけです。
以下、これを検証してみます。
ACE COMBAT 04のストーリー パートを検証する §
ACE COMBAT 04のストーリー パートの全シーンを、動物に着目して検証しました。
- シーン01 犬を飼っている、空に鳥
- シーン02 野良猫?
- シーン05 野良猫?
- シーン07 黄色13が抱いているのは子犬
- シーン08 同じ子犬と池のカモ、空の鳥
- シーン11 同じ子犬を少年と酒場の娘が連れている
シーン01の犬は、幸せだった少年の生活に犬がいたことを示します。そして、黄色13は子犬を抱き、その子犬は少年と酒場の娘に連れられて一緒に旅をします。一方、野良猫の方は単なる荒廃の象徴として描かれているような感じであり、主要登場人物と絡みもしません。つまり、圧倒的に犬こそが中心をなす動物であり、空を飛ぶパイロット達を象徴するかのように鳥たちが繰り返し描かれていることが分かります。
つまり、圧倒的に犬と鳥なのです。
犬について検証してみましょう。
ACE COMBAT 04は上で見た通り。
ACE COMBAT 5はチョッパーの飼い犬であるカークが繰り返し出てきます。また、隊の名前であるウォードッグはまさに「犬(ドッグ)」です。
ACE COMBAT ZEROでは、隊の名前がガルムつまり地獄の番犬であり、まさに犬です。
鳥について検証してみましょう。
ACE COMBAT 04は上で見た通りですが、それに加えてオープニング映像に登場するのも鳥です。
ACE COMBAT 5は、瓦礫の上や街頭の上の鳥、オープニングでサンド島の上を飛んでいく鳥の群れ、等々、多数の鳥を見ることができます。アークバードはまさに「鳥(バード)」の名を持ちます。「姫君の青い鳩」の主役は鳩であり、まさに鳥です。
ACE COMBAT ZEROは、エンディングでパイロットを鳥によって象徴的に描きます。
ACE COMBAT Xのグリフィス、ACE COMBAT 6のガルーダはいずれも鳥です。
現実と倒錯される虚構 §
ACE COMBAT 3の真のエンディングはまさに現実と倒錯される虚構を描きます。
ACE COMBAT 04は少年と酒場の娘が、黄色13を好きであるにもかかわらず憎んでいるという虚構により黄色13を傷つけます。そして、黄色13を追いかけた少年は、最終的に「それが現実であったか分からない」という心理状況にまで追い込まれます。
ACE COMBAT 5で行われた戦争そのものが、ベルカにより演出された虚構としての戦争です。8492による工科大学の攻撃が虚構であった可能性もあり得ます。また、新型ジャミング装置により、実在しない敵機の虚像が出現するという展開もあります。
ACE COMBAT ZEROはウスティオを奪還してベルカ領内に侵攻した時点で、戦争の大義が虚構化します。更に、「国境なき世界」は虚構の世界に対する虚構の正義を担いで現実世界に迷惑をかけた組織とも言えます。
その他の動物? §
たとえば、ACE COMBAT ZEROのエンディングには牛も出てきます。しかし、ワンカットの風景の中の存在でしか無く、特別な意味を持ったものでは無さそうです。
つまり、ACE COMBATシリーズは圧倒的に犬と鳥なのです。
結論 §
ACE COMBATシリーズと押井守監督の相性は極めて良く、押井守監督作品のゲーム化をProject Acesが手がけるのはある種の必然である。
感想 §
私自身は、早朝帯アニメのチーズスイートホームを録画して毎晩見ている猫派です。しかし、だからこそ犬派の作品に魅力を感じるのかもしれません。
補足 §
スカイ・クロラの原作者(というか、森作品をずっと読んでいる立場から言えば「作者」)である森博嗣さんは犬を飼っています。鉄道模型の本などにその犬の写真が掲載されています。鳥が好きであるかは良く分かりませんが、犬好きであることは間違いないでしょう。また、「現実と倒錯される虚構」はミステリー作品等のトリックに頻出するものだとも言えます。そういう意味で、森博嗣さんもやはり押井守監督、Project Acesと相性が良いと言えるのかもしれません。
疑問 §
ACE COMBAT 5のデモ映像(起動後、何も操作しないと流れるムービー)を、「ほら鳥だよ、犬だよ」と強調しつつ、ACE COMBATを知らない押井ファンに見せたら、「これが押井の新作だ」と思い込む人が出るでしょうか? 何人か出そうな気がしないでも……。