2008年08月04日
トーノZEROゲームプレイ日記スカイ・クロラ イノセン・テイセスtotal 4498 count

意外な矛盾と盲点? プロペラ機のゲームは劣っているという主張はF1ファンをバカ呼ばわりすることと同じ!?

Written By: トーノZERO連絡先

 こういう話を書く必要は、本来なら全く無いのですが。

 まあ気分的な成り行きで。

問題提起 §

 ACE COMBATシリーズを始め、ジェット機のゲームが既にいくつもあってプレイヤー達は既に音速の世界に慣れ親しんでいるにもかかわらず、今更鈍足で時代遅れのプロペラ機のゲームなど出しても、相手にされるわけがないだろう……という主張があったとします。それにも関わらず、そのようなゲームを面白がる者がいたとすれば、物事を知らないバカであると結論づけられます。

 このような主張は、「技術的に古い」ために「速度が遅い」ことを根拠に、既に満足が得られることがあり得ないことを示しています。

 さて、このような主張を「正しい」とすると、実は「フォーミュラ1(F1)のファンはバカである」という結論が得られてしまいます。

 この結論は正しいでしょうか?

「技術的に古い」ために「速度が遅い」F1 §

 フォーミュラ1(F1)は、スピードが魅力のモータースポーツです。しかし、いくら速いと言っても、せいぜい時速300~400km/h程度でしかありません。これは軽飛行機並みの速度域で、旅客機のボーイング747ですら巡航速度(最大速度ではなく)で、時速900km以上が出ます。

 なぜF1が遅いのかと言えば、タイヤによって車体を支え、タイヤを回転させることで前進させるという構造そのものが古いからです。このような構造で自走する最初の自動車は、1769年、フランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが製作した蒸気自動車といわれます。

 これに対して、飛行機は翼によって得られる揚力で機体を支え、プロペラやジェットエンジン等によって推進力を得ます。初めての飛行機は、1903年にライト兄弟によって飛行しています。自動車よりも遙かに新しい技術であり、空気以外に速度を妨げるものはないので、適切な機体形状とパワーのあるエンジンさえあれば、容易に速度を上げていくことができます。

 つまり、飛行機は「技術的に新しい」ために「速度が速く」、逆にF1は「技術的に古い」ために「速度が遅い」と見なせるわけです。

鈍足のF1マシンはなぜ「速い」のか §

 ならば、F1が好きな人たちは「速い」「遅い」の区別も付かないバカばかりなのでしょうか?

 その答えは以下の2つを実際に比較してみるとすぐに分かると思います。

  • ジェット機が高空を巡航している航空路の下にあたる場所に出向き、そこで飛行しているジェット旅客機を見る
  • TVでF1中継を見る

 文句なくF1中継の方が「速い」と感じられるはずです。

 なぜかといえば、人間の感じる「速さ」と、実際の速度は違うからです。比較対象物が近くにあればあるほど、感覚的な速度は速くなります。それゆえに、何もない空中を飛ぶ飛行機と、地面という比較対象物の上を走る自動車では、後者の方が圧倒的に体感速度は速くなります。

ACE COMBATシリーズでの体感例 §

 このような現象は、たとえばACE COMBATシリーズでも容易に体験できます。たとえば、ACE COMBAT 5では高度が高い方がより速度を出せます。高度31500フィートあたりで、どの機種も最高速を発揮します。しかし、実際に飛んでみると、地面すれすれの超低空飛行の方がはるかにスピードが感じられます。比較対象物となる地面が目の前にあって、それが猛烈なスピードで前から後ろに飛び去っていくからです。そのため、「スピード」が欲しければ高度を上げ、「スピード感」が欲しければ高度を下げる必要が生じます。

最初のまとめ §

 つまり、F1ファンは、ジェット旅客機よりもF1の方が「体感速度として」速いという事実に即した人々であり、それをバカと呼ぶのは全く失礼な話だと言えます。

 従って、「技術的に古い」ために「速度が遅い」ことを根拠に、既に満足が得られることがあり得ない、という主張も誤りです。人間が感じるスピード感は絶対速度には比例しません。従って、技術的に古いものの方がより速く感じられることも珍しくはなく、それに魅力があり、ファンが付いていることも珍しくありません。

 これを最初の結論としましょう。

 しかし、話は終わりません。

プロペラ機とジェット機はどちらも空を飛ぶ §

 さて、プロペラ機とジェット機はどちらも空を飛びます。比較対象物が近くにないことは同じです。とすれば、ジェット機の方が「速い」ことは間違いない、と言えないでしょうか? つまり、F1に魅力があることを承認したとしても、プロペラ機に魅力があることまで承認すべきではない、とは考えられないでしょうか?

映画スカイ・クロラのスピード感とは §

 プロペラ機の映画である映画スカイ・クロラを見ていて、十分すぎる迫力とスピード感を堪能しました。普段からACE COMBATシリーズでジェット機を飛ばしているわけですが、それと比較してもスピード感は非常に高い水準だったと思います。

 では、超音速を出せるはずもないプロペラ機でなぜスピード感が出るのでしょうか?

 1つは、交戦距離が近いために、敵機という比較対象物がより近くにあり、その分だけスピード感が高まっていること。

 もう1つは、小さくよく回るため、角速度が大きいことです。たとえば、パイロットの主観視点で見たとき、急旋回でより小さく回れれば、背景に流れる風景の速度は高くなり、体感速度は高くなります。

 特に大きいのはティーチャーもカンナミも失速を利用した空戦機動を使う点です。失速させるということは、速度を極端に落とすことを意味します。それにも関わらず失速状態で重力を使って機体をまわすことで、驚くほど素早く機体は向きを変えます。

最後のまとめ §

 以上から、プロペラ機には以下の2点の長所が存在することになります。

  • 交戦距離が小さい=比較対象物(敵機)が近い=スピード感アップ
  • より小さく回れる=角速度が大きい=背景が流れる速度がアップ

 つまり、ジェット機と比較してスピード感が劣るとは言えません。むしろ、別種のスピード感を体感できる可能性すらあり得ます。

補足 §

 更にもう1つ、無視できない長所がここから見て取れます。

 交戦距離が小さい、ということは、それだけ敵機との距離が小さいことを意味します。それは、敵機をより明瞭に視認できる可能性が高くなることを意味します。ACE COMBATシリーズで空戦を行っていると、まず敵機を形状として視認することは滅多にないし、まして色や形を詳しく見るチャンスはほとんどありません。それを見るには▲ボタンズームを使うであるとか、ACE COMBAT 6で画面左上に出てくる敵機のズームアップの小窓を見るといった対処が必要となります。しかし、激しい空戦中ではいちいちそれを見ていられません。しかし、交戦距離が小さくなれば、敵機の色や形を明瞭に視認しつつ空戦できる可能性が高まります。事実として、ACE COMBATシリーズでも銃撃主体の空戦を行っていると、交戦距離が短くなって敵機を明瞭に視認できるチャンスが増えています。

 これは、せっかくキャラクター性を持った敵と戦っているにも関わらず、戦闘中はそれがほとんど見えないという問題を解決する手段となるかもしれません。

まとめ §

 数字の上では、超音速ですらないジェット旅客機よりも遅いF1が、実際に体感的に魅力的であるのと同様に、ジェット機よりも遅いプロペラ機が魅力的である可能性は十分に高いと思われます。それどころか、ジェット機にはない別種の魅力を備えている可能性すらあり得ます。

 従って、ACE COMBATシリーズに対するイノセン・テイセスは、けして劣った亜種ではなく、別の魅力を提供する新しいサブジャンルを開拓する開祖であると見なされるべきでしょう。

 これは、SEGA Saturnで最初のサクラ大戦が発売されたときの状況と比較できます。サクラ大戦は、蒸気で動く時代遅れのレトロなロボットが活躍するゲームです。しかし、それは超科学ベースの美少女ロボットものジャンルの劣った亜種などではなく、実際にはスチームパンクという新しいジャンルに美少女ロボットものが切り込んでいく糸口になった斬新で鮮烈な作品だったわけです。

 おそらく、イノセン・テイセスはACE COMBAT人気に便乗した亜種ではなく、新ジャンルを開拓する第1弾作品と位置づけられるべきものでしょう、たぶん。

Facebook

スカイ・クロラ イノセン・テイセス

スカイ・クロラ イノセン・テイセス

 ご意見、ご感想、情報提供、検証情報などはFacebookのDeep Strike Acesへどうぞ Facebookにログイン後、「いいね!」をクリックすると主要な文書が閲覧できるほか、メッセージも書き込めます。

このコンテンツを書いたトーノZEROへメッセージを送る

[メッセージ送信フォームを利用する]

メッセージ送信フォームを利用することで、トーノZEROに対してメッセージを送ることができます。

この機能は、100%確実にトーノZEROへメッセージを伝達するものではなく、また、確実にトーノZEROよりの返事を得られるものではないことにご注意ください。

このコンテンツへトラックバックするためのURL

https://mag.autumn.org/tb.aspx/20080804001404
サイトの表紙【スカイ・クロラ イノセン・テイセス】の表紙【スカイ・クロラ イノセン・テイセス】のコンテンツ全リスト 【スカイ・クロラ イノセン・テイセス】の入手全リスト 【スカイ・クロラ イノセン・テイセス】のRSS1.0形式の情報このサイトの全キーワードリスト 印刷用ページ

管理者: トーノZERO連絡先

Powered by MagSite2 Version 0.36 (Alpha-Test) Copyright (c) 2004-2021 Pie Dey.Co.,Ltd.