2008年09月01日
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迷走する史料・仙川駅付近の切通しは開業当初からあったのか昭和2年に掘られたのか?

Written By: 川俣 晶連絡先

 「旧甲州街道『滝坂』・京王線 仙川駅~つつじヶ丘駅間廃線跡」の続きです。未読の方は先にこちらを読んでください。

問題は何か §

 京王線仙川付近の切通しは開業当初からあったのか、それとも昭和2年に完成した新軌道のために作られたのか、という問題です。

史料の迷走 §

 京王帝都電鉄三十年史には関連する記述が2つありました。以下に引用します。

京王帝都電鉄三十年史 p30より

■仙川調布間の新軌道完成

 従来、仙川~調布間の軌道は、仙川を出ると切通し(現在のキューピー食品工場西側付近、大正橋西詰)からすぐ北側へカーブして甲州街道上を滝坂から金子(旧神代村役場付近)まで達すると、ここから今度は街道の北側へ出て布田不動尊付近へいたり、ここで街道南側へ移って、まっすぐ調布停車場に達していた。

(中略)

 この国道併用部分および勾配を除く工事に着手した。たまたま甲州街道の拡張工事が行われたので、これを機会に軌道を街道南側に移設して専用軌道としたのである。工事は、現在のつつじヶ丘駅付近に盛土を施し、ここに軌道を移して、仙川の西側切通しから国領までを一直線に改めた。

p239

昭和2年 12.17 烏山~調布間(5.3km)の軌道位置及び勾配変更改良工事が完成し、新線による運転を開始

 さて、この2つの記述の何が問題かと言えば、上は仙川~調布間なのに、下は烏山~調布間と食い違っている点です。この相違は極めて重要です。なぜなら、工事の対象が仙川~調布間だとすれば、烏山~仙川間の切通しの工事は行っていないことになり、言い換えれば、切通しは開業当初からあったことになるからです。しかし、烏山~調布間と解釈すれば、切通しはこの時に作ったと考えることもできます。

仙川~調布間説の長所 §

  • 公式な文書である京王帝都電鉄三十年史に、既に切通しが存在していたことを前提とする記述がある

仙川~調布間説の短所 §

  • 最初から切通しがあれば、改良を要する極端な急勾配は無かったと考えられる
  • キューピー食品工場西側で切通しから出た瞬間に曲がっていたとすると、全般的な線路のつながりが不自然である。また、現在残る線路跡らしい道路の位置と噛み合わない
  • あるいは、もっと手前から曲がっていたとすると、その間の切通しをわざわざ埋めたことになる

烏山~調布間説の長所 §

  • 理解に苦しむ不自然な要素は無くなる

烏山~調布間説の短所 §

  • 今のところ、これが正しいことを裏付ける証拠の持ち合わせがない
  • 下記推定ラインにて、キューピー仙川工場の南側のラインと路線が並行になり路線の位置を前提に工場を造ったかのようにも考えられるが、この工場の稼動開始は1951年(昭和26年)10月だそうである

補足・推定ルート §

 烏山~調布間説を採用した場合の路線の流れの推定ラインです。

余談・更に空想をたくましくするなら §

 地図を見ていて気付いたのですが、切通し北側に沿った道路が不自然です。太さが変化したり、柵があったり、キューピーの工場部分で途切れていたり。しかし、この道が開業当時の京王線の軌道跡だと考えると、スムーズにラインがつながります。

 このラインは、営業運転しながら既存の軌道を切らず、新しい路線の切通しを作ることができる配置です。その点でも、少し魅惑的ではありますが、何せ根拠となる証拠が何もありません。今のところは、単なる空想どまりです。

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