2008年09月21日
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弥生美術館・乙女のイコン展 ~大正・昭和の雑誌に見る少女画のイコノグラフィー~

Written By: 川俣 晶連絡先

 墓参のついで、という理由もありますが。今日は弥生美術館・竹久夢二美術館の「乙女のイコン展 ~大正・昭和の雑誌に見る少女画のイコノグラフィー~」に行ってきました。ついでに、同時に開催されていた「中原淳一 私の好きな少女 ~没後25年展~」と「竹久夢二 子どもの世界」も。

カフェ港や §

メイデン☆プレート

 昼食は「カフェ港や」で取ろうと思ったので入ってみると、中は割と客が多く、しかも女性ばかり。そして、何から限定メニューが。さっそくオーダーしてみると、既に今日は終わってしまったとのこと。やむを得ず、ハヤシライズをオーダー。

「乙女のイコン」展 §

 竹久夢二らの少女画の始まりから、戦後の後継文化としての少女マンガに取って代わられるまでの全貌が多数の作家の絵と共に展示されていました。それらの作品が誰に対して何を描いたのかという背景の説明もあるため、少女史が間接的に描かれたとも言えます。最後は、少女雑誌に掲載された水野英子や牧美也子のページを展示することで終わります。

 ……そうです。水野英子や牧美也子によって締めくくられるのです。つまり、こうして見ると、いわゆる少女マンガの世界が少女画の世界の直系の子孫であることが明らかに見て取れます。つまり、「漫画」史という視点で見ていると抜け落ちてしまう少女マンガのルーツが見えるわけです。

 更に言えば、竹久夢二の描く美女になぞらえて語られることもある松本零士の奥さんは牧美也子です。おそらくは松本零士も含めてこの「少女画」文化圏の内側にあると言っても過言ではなく、同時に松本美女の影響を受けた世代(つまり私達)も、この文化圏の外延部に位置づけられるわけです。それと意識しているか否かに関係なく、実際にはそのような立ち位置に存在するわけです。

 それどころか、下手をすれば少女漫画的表現の影響を強く引きずっているオタクの萌え文化も、このような「少女画」文化圏の辺境部として包含されてしまうかもしれません。

レズの誘惑 §

 それとは別に印象的なのは、読者の感想が掲示されていたことです。あまりに熱烈に、女性読者が少女画に向ける賛美は驚くほどです。少女画とは、読者である少女がなりたいう理想像であると当時に、賛美される「私とは別に存在する」別人でもあるのようです。であるから、しばしば少女画には2人以上の少女が描かれるものがあり、その中には過剰に親しく身体を寄せ合う少女達が描かれることもあります。

 これは、思春期の少女が持つ「理想の女性への憧れ」と、それが過剰にエスカレートした一種の恋愛感情につながるものなのでしょう、たぶん。

 であるから、少女の絵を少女が見てそこに男の影がない世界もあり得、それは支持されうるのです。

 そして、そのような甘美な理想世界は、大人になるにつれて消えていくはずです。しかし、実際のこの展示に多くの「比較的高年齢層の」女性達が集まっていた状況を見ると、その実在し得ない理想世界への誘惑は、それがあり得ないと理解できる大人になっても完全に消えるわけではないのかもしれません。

 興味深い文化を見たという気がします。

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