2008年10月01日
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コミックブレイド掲載コミック「スカイ・クロラ イノセン・テイセス」第1話感想

Written By: トーノZERO連絡先

 ある日、何気なくイノセン・テイセスの公式サイトを見ていると、ふとページの下の方に見慣れないリンクが張ってあるのに気付きました。何だろうと思ってクリックしてみると、月刊コミックブレイドという雑誌のサイトでした。そして、スカイ・クロラ イノセン・テイセスのコミックが新連載ということでした。

 もちろん興味があったので、買ってきました。

位置づけ §

 当然のことながら「イノセン・テイセス」のコミックスということは、原作小説とも映画とも直接つながりません。繋がるのは、ゲーム版のイノセン・テイセスだけとなります。

 ということは、小説を起点に多方面展開したのではなく、小説→映画→ゲーム→コミックという「伝言ゲーム」の連鎖が発生したことになります。はたして「伝言」は届いたのでしょうか?

 ちなみに、このコミックに森博嗣の名前は(C)のところにしか出てきません。内容には全く関与していないようです。

ゲーム紹介 §

 コミックと連動して、イノセン・テイセスのゲームそのものの紹介ページがフルカラー2ページありました。目新しい情報はありませんが、こういう場で見ると少し新鮮。

感想 §

 結局、伝言は届かなかった……というよりも、より正確に言えば、コミックブレイドという雑誌の性格上、正反対の性格の作品にしなければ掲載しようがなかったのだろうと思います。

 たとえば、「原作小説→映画→イノセン・テイセス」は、いずれも「飛ぶ」「空」「飛行機」が主役です。だから、これらの作品では空や飛行機の比重が大きいものとなります。そして、人物が描かれるとしても、顔のアップのようなビジュアルはまずあり得ず、遠景ないし、やや遠景に描かれるのが基本となります。

 それに対して、コミックブレイドの表紙は主人公である織科真海の顔のアップであり、空は添え物程度に、僅かな余白に書き込まれているだけです。

 飛行機へのこだわりにも決定的な差があります。真海はプッシャーの散華で基地に飛来し、双発トレイラーの機種で出撃しますが、なぜ乗り換えるのか、どう違うのかに対するこだわりはほとんど出てきません。単に「重い」という感想しか出てきません。うんちくと能書きの固まりのような原作小説とは全くの別物です。

 更に、等身が変わったり、描写が突然単純化されるような、萌え漫画的なお約束表現も見られます。これは、「原作小説→映画→イノセン・テイセス」ではあり得ない描写です。

 では、作者が分かっていないから原作の良さを活かせなかったのか……、といえばそうではないと思います。なぜかといえば、「オタクの萌え世界」とはまずキャラありきであり、その周辺の世界観やアイテムも全てはキャラのために後付で用意されるものだからです。極端なことを言えば、キャラは単独で存在し、世界すら交換可能な存在でしかありません。(たとえば、エヴァンゲリオンに対する学園エヴァが典型的な一例)。

 であるから、そのような世界を構成する雑誌に進出するためには、まず真海というキャラありき、という形で再構成するしかありません。そのように構成しなければ、このような雑誌の読者はまず受け付けない可能性がかなり高いと思われるからです。

 だから、新連載はまず表紙で真海の顔をアップで掲載してアピールしなければならず、内容的にも飛行機のうんちくを語るよりも真海の魅力的を多角的に示さねばなりません。どれほど凄い空戦を見せても、それは「キャラ」を中心に進行する世界においては「オマケに凝った本末転倒作品」にしかならないわけです。

 そして、真海の魅力なるものも、ストレートに描くことはできません。オタク的なキャラの記号に分解し、フォーマットに沿って記述されねばならないのです。それが等身が変わったり、描写が突然単純化するという意味です。

感想 §

 従って、このコミック「イノセン・テイセス」第1話の感想は、以下の2つの相反するものになります。

  • コミックブレイドという雑誌に載せるにあたって、非常に上手く作品を改変してアレンジしている。この雑誌の読者が気に入るかどうかは分からないが、かなり違和感の少ない形に落とし込めていると思う
  • でも、本来のスカイ・クロラとは別物だよね

 全く個人的な根拠のない感想を書けば、たぶん映画「スカイ・クロラ」を見に行った層や、イノセン・テイセスを購入する(かもしれない)層は、この雑誌の読者層とはあまり重ならないような気がします。

 しかし、あまりに「重ならない」関係であるがゆえに、両者の邂逅は何か予測もできない「価値」や「魅力」を生み出すという可能性もあり得ます。

 (たとえば、非幼児向けアニメの筆頭とされた機動戦士ガンダムがコミックボンボンに掲載された結果としてMS戦記という大傑作が生まれたような事例もあることですし。ミスマッチが常に悪いわけではありません)

追記 §

 上記を書き終わってから何気なくぱらぱら雑誌を見ていて気付いたのですが、巻末の次号予告にある連載第2回の予告イラストは、真海をやや遠景に置いて、頭上にかなり広い空を描いています。これは、スカイ・クロラっぽいムードですね。第2回はもっとスカイ・クロラっぽさが高まるのかも。ちょっと気になります。

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