2008年10月26日
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神奈川近代文学館・堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世

Written By: 川俣 晶連絡先

 今日は神奈川近代文学館堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世。に行ってきました。

神奈川近代文学館

失敗記その1 §

 元町中華街駅下車後、エネルギー切れ状態だったので、先に昼食を取ることにしました。観光客価格で高いのだよな、と思いつつ中華街方面に行ったところ、日替わりの麺と丼が650円という店を発見して入りました。他のメニューはかなり高く、内装も悪くありません。とりあえず、日替わりの麺を注文。しかし、待ってもなかなか出てきません。どうも材料を切らせたらしく、途中で厨房から人が慌てて出て行って、調達してきたようです。それで、かなり待たされました。しかし、時々気を遣ってお茶を足してくれたり、実際に出てきた麺は予想外に美味しく食べられたので、不満は残らず。

失敗記その2 §

 方丈記私記はここに行く電車の中で読み切りました。

 これがまさに大失敗。

 知らない人の展示を見に行くから面白いのに、知ってしまったら面白くありません。

 しかも、方丈記私記は堀田善衛自身が「私」について書いた本でもあります。

 それと、前に読んだ「路上の人」を合わせると、堀田善衛という人物の骨格が見えてしまった感があります。

 おかげで、堀田善衛本人関連の展示は飛ばし飛ばし見ました。

失敗記その3 §

 この展示は宮崎駿の絵を前面に立ています。そのため、「スタジオジブリがアニメーション映画化を試みるイメージ展示」というのは、宮崎駿に関連する何かの試みかと思いきや大違い。厳密には宮崎吾朗監督が、「方丈記私記」+「定家名月記私記」を原作に若い長明と定家を主人公にした映画企画と、「路上の人」の映画企画のイメージ画を並べて展示したものでしかありません。

 根拠のない印象で言ってしまえば、これはおそらく宮崎吾朗第2回監督作品の映画を実現する布石としてジブリや鈴木プロデューササイドで仕掛けた企画でしょう。このような展示を通して、ぜひ見たいという声が上がれば、それは映画の製作資金を集める力にもなるでしょう。逆に言えば、そういった支援の盛り上がり無くして、宮崎吾朗第2回監督作品の成立は難しいのかもしれません。

 しかし、神奈川近代文学館にはそのような意図はあまり無く、あくまで文学者についての展示を行うことがメインであるようにも感じられます。

 そのような両者の温度差は、あちこちで感じられます。たとえば、「イメージ展示」の位置づけについて、神奈川近代文学館側は「映画化を試みる仮想」と表記していて「現実ではない」と言い切っているのに対して、宮崎吾朗は「準備の準備」と「現実に至るステップ」というニュアンスで書いています。

 というわけで、宮崎駿ファンという立場から見に行った件についてはほとんど失敗。唯一の成果は、宮崎駿画を見たことと、その絵の絵はがき1枚70円を買ったぐらいかも。

宮崎吾朗解釈は妥当か? §

 展示会場には膨大な数の映画企画のイメージ画があるにも関わらず、図録にはほんの僅かな数しか収録されていません。特に登場人物の設定画のようなものは収録されていないし、ストーリーが分かる情報も収録されていません。(カラーページが少ないから、というのは理由になりません。モノクロページに掲載して良い絵もあるし、文字部分をモノクロページに持っていくという選択もあるからです)

 これを見て、「なるほど」と思ったのは、もし私が図録の編集者であれば、同じようにしただろうと思うからです。

 というのは、キャラクター設定とストーリーは「違うな」という印象を私も持ったからです。たとえば長明やヨナのキャラクター設定は私が小説から得た印象と比較して粗野でありすぎるし、鬼が死体をつなぎあわせるようなストーリーは、方丈記私記に記された長明の「現場を見に行くリアリズム」と相容れません。

 つまり、ゲド戦記に続いて「原作に対する無理解」という物議を醸す可能性があるなと思いました。

 しかし、だからといってこれを展示しない訳には行きません。ジブリは主催に名を連ねているし、集客のためには宮崎駿の絵を使わねばなりません。ジブリの名前も集客につながるでしょう。これはジブリあっての企画です。

 であるならば、必然的に図録にはキャラクターやストーリーを抜いて、漠然としたまさにイメージだけを示す絵だけを少数掲載するのが良い選択ということになります。

 ちなみに、長明と定家の映画企画は、面白い映画になるかもしれないと思いました。これは本当。しかし、方丈記私記を原作と言ったらいけないような気がします。

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