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2009年06月04日
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オルランドとトラウマ持ちの砲手

Written By: 遠野秋彦連絡先

 地球から追放された後のオルランドが単独で極めて長期間生き延びた理由はいくつもある。しかし、その中の極めて大きな理由の1つとして、オルランド人工惑星には超天才科学者、狂気の才能、ドクター・キガクがいたことがあげられる。

 当然のことではあるが、当初連合防衛軍として運用された宇宙軍は、純然たる軍隊組織であり、天才科学者の居場所などは無い。というよりも、科学者とは安全な後方で研究を続けるべき立場であり、特に超天才ともなれば後方の補給拠点である人工惑星にすら本来ならいるべきではない存在だった。それにも関わらずドクター・キガクがずっと連合防衛軍の中にいた理由は、連合防衛軍のトップに就任していたオルランド皇帝の無二の呑み友達だったから、とされるが、実際には才能がうとまれて地球から追い出されたという説も根強い。

 事実として、ドクター・キガクはジャンル横断的に自然科学の様々な分野に対して画期的な成果を残しており、明らかに科学の秩序を破壊する者として存在した。うとまれて当然である。

 ちなみに、キガクが多数の成果を出すことができた理由は、必ずしもキガクの才能だけによるものではない。オルランドの初期の実験宇宙艦に同乗して、様々な新しいデータを先んじて入手できたという事実も大きい。それを考えれば、キガクが宇宙に居座り続けたこともあながち不自然とも言えない。

 さて、キガクの最大の功績は重力制御フィールド理論の確立にあるわけだが、実は大多数の人にとって、キガク最大の発明品はハイパー・アンドロイド、通称ハイプということになる。男しかいないオルランドにあって、それを慰めるために作られた美しい女性型の人工物体。それがハイプだ。

 そして、ハイプがオルランドの社会に行き渡り、それなりの安定を示し始めた頃、キガクを訪問する男がいた。

 キガクは当初、その男と会う気はなかった。より正確に言えば、どの男だろうと会う気はなかった。勝手気ままに研究を続ける方が好きだったし、解き明かすべき宇宙の神秘はデータが増えれば増えるほどより解決から遠ざかっていたのだ。

 それにも関わらずキガクが彼に会う気になったのは、「内密に会いたい」と強く願い出ていたからだ。たいていの場合、キガクに対する面会希望は、有名人であるキガクと面識があるという自己宣伝や、好奇心による物見遊山気分であることが多い。つまり、隠すということは通常あり得ず、たいていの場合それは宣伝される対象となる。

 研究室に迎え入れられた男は、人工惑星の奥深くで仕事をする事務職だと言った。ハイプをそれを必要とする軍人に斡旋する仕事なのだという。もちろん、彼も軍人だが、軍人の全てが最前線で戦っているわけではない。

 男は挨拶するとこう言った。

 「祖国防衛戦争の最後の攻撃についてはご存じですね?」

 「100Kクラス戦艦の惑星破壊砲が、ベーダーの母星を破壊した。そのことを言っているのかね?」

 「そうです。オルランド史上最大の殺戮であり、オルランドが地球への帰還を拒絶され宇宙を放浪することになった原因ともいうべき事件です」

 「もちろん、知らないとは言えないよなあ。あの惑星破壊砲の基本設計はわしがやったものだからなあ」

 「では、その射撃を行ったのはどの艦かご存じですか?」

 「知らん。最重要機密事項で、公開はされておらん。奇襲効果を狙った作戦なので、事前には明かされなかったし、ましてあの結果だ。永遠に公開はしないと決定されているし、だからわしも知らん」

 それは嘘だった。キガクは当然知っていた。この作戦に使われたのはパンゲアBSであり、予備艦として後方で待機していたのはゴンドワナBSだ。もっと正確に言えば、この2隻を含め、第1外郭防衛戦隊に属する6隻が実際には人工惑星を離れ、作戦に従事していた。それを知っているのは、それらの艦に乗艦していた者達と、ごく一握りの者達だけだ。

 だが、男はこともなげに言った。

 「その射撃を行ったのはパンゲアBSです」

 「なにっ!? なぜそれを……」

 「私はパンゲアBSに乗艦していたのです。というよりも、より正確に言えば、私は惑星破壊砲の砲手だったのです。いえ。その……。私は、命令され、惑星破壊砲の引き金を引いたのです。私が引き金を引き……、惑星破壊砲は発射され……、ベーダーの母星は……」

 「待てっ」キガクは狼狽して慌てて止めた。

 「私は耐えられないのです。罪の重さに耐えられないのです。分かりますか。私が引いた引き金のために、多くのベーダーが死に、オルランドは宇宙を彷徨うことになったのです。私は、贖罪をしなければ生きていけません」

 「何と言うことだ……」

 キガクはうめいた。

 確かに、考えれば分かることだった。

 発射を命令した者がいて、引き金を引く者がいる。そうでなければ、射撃は行われない。惑星破壊砲は、自動射撃装置では発射しないように設計されているのだ。

 しかし、そういう者がいて、心に大きな傷を負ったことまでは考えていなかった。いや、より正確に言えば考えないようにしていたのだった。

 「そうか。君がそうなのか」キガクはうめいた。

 「そうです。私がそうなのです」

 それっきり、キガクは何も言えなくなった。どのような言葉も言うだけ無意味と思えたのだ。

 だが、男は言った。

 「あの……。実は、私は1つだけ見つけたのです。贖罪の方法を」

 「死んだベーダーは戻って来ないぞ」

 「その件はもう取り返しが付きません。しかし、オルランドの人たちにはまだできることがあります」

 「なんだね?」

 「私を、ハイプに改造してください」

 「なに?」

 「ハイプを斡旋する部署にいて、私はハイプがある種の便利な道具として扱われ、オルランド社会を支える縁の下の力持ちだと言うことを知っています。けして、夢は見ていません。現実のハイプを知っています」

 「それで?」

 「私は、人であることをやめ、そういう存在としてオルランドの社会に奉仕したいのです。もちろん、名もないその他大勢のハイプの1人として」

 「むう……」キガクは考え込んだ。

 まず最初に思ったことは、人間をハイプに改造する、などという作業が技術的に実行可能か、であった。ハイプというシステムは、基本的に女性の形しか取ることができないように作られている。これは、キガク自身のこだわりでもあり、男だけのオルランド社会の要求でもあった。従って、この男の精神を女性型のハイプの身体に転写することになる。それは不可能ではないだろう、ということは容易に予測できた。オルランド人が一時的にハイプの肉体を自分の肉体のように使う前例はあり、その延長線上で永久的に精神を移動させることも可能だろうと思えた。そして、この者は自分が女性型の身体を得ることを前提に話をしているように思えた。

 ならば問題はない。これは実行できる。キガクはそう結論づけた。

 そして、キガクはそれを実行しないという決断を下すことができなかった。技術的な興味という理由もあったが、やはりトラウマを抱えたのは引き金を引いた砲手だけでなく、設計に関わったキガクにもトラウマがあったのだ。

 キガクと周辺のごく身近な者だけが動き、計画は進行した。男は、不可避の事故による殉職というシナリオ通りにオルランド社会より退場、量産されたハイプのうちの1体の中に精神が転写された。

 男の希望をくんで、具体的にどの身体に彼の精神が転写されたのかはキガクにも分からないようになっていた。

 ただの1人のハイプとして、何ら特別扱いされることなくオルランド社会に奉仕することが男の望みだったのだ。

 そして、そのロットのハイプ達が訓練過程を終えてオルランド社会の各所に散っていくのを見届けた後、キガクはそのことを忘れてしまった。

 キガクがそれを思い出したのは、1万年よりは長いが1億年よりは短い時間が経過した後だった。

 キガクはオルランド皇帝と酒を飲んでいて、話がベーダー戦の最後の戦いに及んだ。

 皇帝は、今でも時々あの戦いに許可を出したことを後悔する夢を見ると言った。

 それを聞いたキガクは、あのトラウマ持ちの砲手のことを思い出した。

 「もう時効だろうから」とキガクは砲手の話を語った。

 皇帝はすべてを聞き終わると「それはおかしいぞ」と言った。

 「何がおかしいというのだ?」

 「惑星破壊砲の引き金を引いたのは、パンゲアBSの砲手ではない。いや、艦長を含むいかなるパンゲアBSの乗員ですらない」

 「な、なにっ!?」

 「パンゲアが属する第1外郭防衛戦隊の司令官が自ら引き金を引いたのだ。もし何かの間違いがあれば責任は全て自分が取ると言い、直接自分で引き金を引く許可を総司令部に求めてきた。そして、引き金を引く一部始終はすべて映像に記録されているのだ」

 「まさか……」

 「事実だ。更に言えば、その司令官は責任の重さに耐えられず、1週間後に自決した」

 「なら、あの男はいったい何者だったというのだ?」

 2人はそこで考え込んでしまった。

 「作り話で自分の願望を叶えようとした、ただの性転換願望を持ったマゾヒスト……。ではないかしら?」

 キガクがハッと顔を上げると、皇帝の愛人たるハイプのアヤは、酒とつまみの追加をテーブルに置いて部屋から出ていくところだった。

(遠野秋彦・作 ©2009 TOHNO, Akihiko)

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