私はとことんスーパー戦隊との相性が良くありません。
ゴレンジャーは好きだったし、ジャッカー電撃隊の歌もよく口ずさみます。しかし、最後に納得して好きだったのはサンバルカンであり、その後たまに見ても納得できたことはありません。
その点で、アギトや電王は好きだった平成ライダーの世界とはかなり違います。
ところが、侍戦隊シンケンジャーは納得した上にとても面白く、楽しんでみています。
はたして、いったいシンケンジャーの何が違うのか……と考えてみると、シナリオの素晴らしさや俳優の演技や殺陣の魅力などもさることながら、極めて特異的な特徴があることに気付きました。
それが「可視化される裏方」です。
「可視化される裏方」とは何か §
通常はお約束のシステムによって明示的に示されないことが多い要素です。
- 日常の作業をこなす黒子達
- 戦いの前には幕を引いて名乗りの舞台を整える黒子達
- 直接的または間接的に5人の侍を育成してきた親たちと家の存在
- 天下御免の侍戦隊が「天下御免」であるためには、それが「天下御免」であると承認する世俗権力の存在が示唆される
- 変身後に行われる本名の名乗りは、「変身ヒーロー」の裏方ともいえる「変身前の人間」の明示
つまり、ヒーローが成立するには多くの裏方が存在し、その支援無しには活躍もあり得ないことが明示されています。
広義/狭義の裏方とは §
単純化されたヒーロー世界とは以下の2つの者達から構成されます。
しかし、「裏方」の存在を考えに入れると、実際には以下のような3階層になります。
- ヒーロー
- ヒーローを支える裏方
- 逃げまどうしかない一般人
ここで裏方を少数の協力者と考えると、一般的なヒーローもののドラマの基本的な構成になると思います。
しかし、シンケンジャーにおける裏方は「少数」ではあり得ません。多数の黒子や、侍を育成する少なくとも5つの家、更にはそれらを支援するより広範囲の組織の存在が想定されます。それは少なくとも国家レベルで承認されたものでしょう。
とすれば、実は「逃げまどうしかない一般人」も間接的にヒーローを支える立場にあると言えます。彼らも広義の裏方であるとすれば、別の2層の世界が出現します。
とすれば、ヒーローは「逃げまどうしかない一般人」を助けるために戦っているのではなく、広義/狭義の裏方に支えられて戦いを成立させていると見ることができます。
そして、ヒーローではない視聴者の私は「広義/狭義の裏方」の立場こそが自分の居場所に近いものであり、そこに感情移入することを経由して作品を楽しんでいることになります。
つまり、ヒーローに一方的に助けられる側ではなく、ヒーローを裏から支える側の立場から作品を入ることができ、それはやはり面白いことなのです。
ヒーローの質 §
このことは、ヒーローの質そのものが変ることを示します。
シンケンジャーは、理念としての正義や、漠然とした平和のために戦っているわけではありません。彼らは裏方と社会から期待された存在であり、彼らの期待に応えるために彼らの支援の上で戦う存在です。それは、単に敵だから戦う、宿命だから戦う、正義などの理念のために戦うこととはやはり異質です。いわば、社会的なヒーローなのです。
補足 §
……ということを書いてみましたが、単なる思いつきのメモなので信じてはいかんぞ。
