以下はミーハーがへろへろと書いている文章なので、信じてはいけません。
太平洋戦争とリンクしてヤマトを考え始めたとき、実は重大なことに気付きました。
ヤマト2の「ヤマト・奇襲に賭けろ!」がミッドウェイ海戦をモチーフにしていることは容易に分かります。発進直前の武器満載の航空機を攻撃すると、対艦攻撃機ではないヤマト搭載コスモタイガーでも容易に大型空母を沈められますが、これはミッドウェイ海戦そのものです。
しかし、もう1つ、以下の展開を加えると話が違ってきます。
- 空母を失った戦艦部隊が、アウトレンジから攻撃できる火砲で勝利をもぎ取ろうとして圧倒的な優位に一時は立つが最終的に負ける
実はこれ、レイテ沖海戦とそっくりです。
つまり、ヤマト2のバルゼー艦隊戦は「バルゼー」という名の元ネタとなった「ハルゼー」が連合国側にいて「全世界は知らんと欲す」と言われているぐらいなのでうっかり見落としていましたが、実はヤマト2で「バルゼー」が果たした役割は「負け続ける日本海軍」を体現する仮想の人物であり (対応する実在の人物はおそらくいない)、バルゼー艦隊とは旧日本海軍そのものであると言えます。
つまり、火炎直撃砲とは46cm砲であり、土方艦隊が逃げ込む土星のリングの岩石群とはフィリピン諸島というわけです。
従って、ヤマトの役割は実は戦艦大和ではなく、ミッドウェー海戦で奇跡の逆転劇をもぎ取ってきた空母エンタープライズあたりであり、最後の場面では重要な役割を果たしません。それは囮となった小沢艦隊に釣り出された主力空母部隊が最終局面で現場にいない経緯と付合しますが、ヤマト2では「前回あれだけ猛威を振るった地球の空母部隊がまるで活躍しない」という捻れた描写になってしまいます。しかし、ヤマト2では小沢艦隊に相当する敵艦隊が不在なので、どうしても捻れてしまいます。
(とすれば、やはりここがナスカの見せ場であるべきだったのかも、勝ちに奢った地球空母部隊を釣り出して、バルゼーと土方の決戦をバルゼー優位にするために、残存主力空母部隊を装って「バルゼーさま! Kill 地球人!」と叫びながら空襲で小型の高速空母ごとやられても良かったのかも。そうするとまるで航空戦艦伊勢と日向のように前半が戦艦型をしている地球の空母が連合軍側に対応する陣営にいるという「捻れ」がもっと良く出てきます)
まとめると以下のようになります。
- ヤマト2のバルゼー艦隊戦が太平洋戦争をモチーフにしていることはおそらく確実だろう
- しかし、負けた日本艦隊の立場が敵に割り当てられ、ヤマトがアメリカ海軍側の役割を与えられており、日本海軍を象徴する戦艦大和のシルエットを持っているにしては捻れている
この捻れは白色彗星の出現で突如修正され、勝ったはずの土方艦隊は退場し、降伏を調印するために東京湾にやってきた戦艦ミズーリのように都市帝国は着水します。
つまり、ここで都市帝国が着水することは、戦艦ミズーリが東京湾に入る行為と付合するので、あえて「着水」しなければなりません。
もはや波動砲もショックカノンも使えないヤマトはほとんどの武器を奪われた当時の日本軍に相当しますが、魚雷と艦載機で真上と真下から攻撃するという展開は、「敗戦間際の日本は主力艦をほぼすべて失っていても、駆逐艦と航空機はまだあって戦えるのだ」という話に付合します。とすれば、超巨大戦艦の放つ大型砲は原爆に相当し、攻撃された月は広島、長崎に対応します。
つまり、都市帝国戦は実際には行われなかった本土決戦に相当するものですが、実際は「真上と真下」と教えてくれるデスラーも、身代わりに突っ込んでくれるテレサも日本にはいなかったので、史実ではミズーリ艦上に使節団が乗り込んで降伏文書に調印して終わります。つまり、そこから先は対応する史実がありません。
この認識は、実は「真上と真下」で盛り上がったヤマト2がその後急速にしぼんでいく状況を上手く説明してくれるという点で興味深いと言えます。つまり、東京湾に入ってきた戦艦ミズーリを攻撃するという発想には簡単に至り、本土決戦用に温存した魚雷搭載の特殊潜行艇や航空機を持ち出せば……というところまでは誰でも思いつくのでしょうが、いかんせんそこから先は「思いつき」であって「実際には行われなかった」ものに過ぎません。だから、着水した都市帝国に向かって使節団の乗った船が近づいてくるところまでは描けます。その船が引き返すところも描けます。しかし、その先はもう何もありません。「さらば」と似たような展開を「死すべき運命を改変しながら」淡々と描いて終わるだけです。
以下の謎が解ける §
- 白色彗星が都市帝国の正体を見せるシーンが「さらば」では見せ場なのに、「2」では勝手に正体を見せてくれるのはなぜか → 土方艦隊を敗北させるために白色彗星は必須だが、白色彗星のままでは着水できないから。ミズーリ東京湾侵入をモチーフにするなら着水は必須
- 真上と真下から攻めても都市帝国は逃げ出すだけでまるで大ダメージになっていないのはなぜか → ここから先はモチーフがないから、「さらば」パターンに切り替える必要があるが、それは宇宙でなければならない
- その後、真上も真下も特に弱点とはなっていないのはなぜか → 「さらば」パターンの弱点は真上でも真下でもなく内部だから
つまり、モチーフがここでコロコロと入れ替わっています。
従って、ヤマト2の本質を以下のように語るのは間違いです。
- 「さらば」の物語をより多くの時間を取ってゆったりと語った
実際は以下のようなものでしょう。
- 「さらば」とは似て非なる物語を語ろうとしたが、26話では語りきれないほどの中身があり、詰め込みすぎの感がある
- 「さらば」とは似て非なる物語を語ろうとしたが、「さらば」に引きづられた面も多く、焦点が絞り切れていない
- 白色彗星帝国のモチーフはアメリカである、という単純な理解で見ると破綻する。実際は、場面ごとにモチーフとする陣営が入れ替わる
余談 §
つまりですね。戦艦で優位の地球側が、レイテ沖海戦で航空機を囮で釣って砲戦に持ち込みたい日本海軍側に見えるわけですが、実際には逆です。空母を壊滅させられて、火炎直撃砲のアウトレンジ攻撃に持ち込みたいバルゼー艦隊の方が実は日本海軍的なのです。そのことは、最強の空母部隊を一瞬で失うという展開とセットで解釈すると良く分かります。
戦艦とのどっちつかずの不細工な宇宙空母しか持っていない地球側が日本側で、全通式のエレガントな宇宙空母を持つ彗星帝国がアメリカ側に見えますが、それはこの場面に限っては間違いのようです。
つまりヤマトではなくメダルーザが戦艦大和に相当するわけです。
更に言えば、「バルゼー、もうよい、どけ!」というのも「謎の反転」に対応するのかも。ここで敵には意味不明の理由で帰って行くわけですから。これは「さらば」ですけど。(「2」ではバルゼーはやられてしまうので)
余談2 §
しかし、あの空母の艦載機は肝心な時にどこに行ってしまったのか。全宇宙は知らんと欲す。(偽電じゃないぞ)
いやそうすると、たかが1機のコスモタイガーが索敵に飛んだだけで発見されてしまう空母部隊も不憫だなあ。やはり、ここは「バルゼー艦隊ついに勝つ」ということで、古代や土方が負けてしまうとか。でも、もちろん最後にテレサが出てきて負けてしまう歴史的な結末は変わりません。というわけで、未来人がバルゼー艦隊にタイムスリップして……。