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2010年09月23日
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面白ショートショート『サイコレイパー』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 オレはサイコレイパーだ。

 サイコレイパーは、精神をレイプする。他人の心に入り込み、強制的に記憶を書き換えたり、情報を盗み出したりする。

 この技能を持つ者はけして多くはない。オレはその中でも凄腕と言われたサイコレイパーなのだ。

 もちろん、歴史の表舞台にサイコレイパーの名は出てこない。闇の世界の存在として、一部の者達にのみ口伝される存在だ。

 そして、オレはそろそろ引退を考えていた。もう十分に稼いだし、危ない橋を渡るのはこの位にしてもいいだろう。前回の仕事は本当に危険が多く、1年も山奥で潜伏しているほどだった。これを繰り返しては身が持たない。SPを出し抜いて要人の心をレイプするのは容易なことではないのだ。

 そう。オレは、この1年、髭を伸ばして変装し、山奥でつつましく質素な暮らしをしていた。口座には巨額の報酬が積まれているが手を出せない。大金が動くとそこで足が付くからだ。ほとぼりが冷めるまで金は使わず、じっとしているしかなかった。

 ある日、謎の女が訪ねてきた。

 身体が熱くなるような、セクシーな美女だった。生活を自重していなければ、すぐホテルに誘いたいぐらいの女だった。いや、その場で美味しく頂いてもいいぐらいの女だった。

 女は名乗った。

 「私は彩子。いろどりの彩と書いて彩子」

 彩子と書いてサイコ。

 そして、彼女は質問した。

 「あなたが私の探している人?」

 「どういう意味だ?」

 「もしそうならあなたは私を知っているはずよ」

 「さあな。初対面だ。会ったこともない」

 「そう……。また来るわ」

 謎の女、彩子は去っていった。

 しかし、オレは直感した。彩子はオレが探していた相手だと確信を抱いていた。そうでなければ、また来ると言うわけがない。

 問題は、オレの記憶に彼女がいないことだ。彼女は、オレが彼女を知っているはずだと確信していた。なのに、オレには記憶がない。どういうことだろう。記憶とはそれほどまでにあやふやなのだろうか。

 いや、そんなことはない。オレはかつて抱いた女の顔と名前を全て覚えているほどだ。

 そこでようやく気付いた。

 記憶が改ざんされているのではないか。

 もちろん、記憶の改ざんはサイコレイパーの仕事のうちだ。他人に何回も行ってきた。同じことを自分がされていないと、なぜ断言できる?

 凄腕サイコレイパーとおだてられ、つい油断をしたのではないか?

 もちろん記憶を操作された記憶はない。しかし、記憶の改ざんはサイコレイパーの基本的なレパートリーだ。そんな記憶がないとしも、改ざんの結果無くなっただけかもしれない。

 オレはすぐに自分の過去の行動を洗い直した。日記はここに来てから1年分しかなかった。それより古い日記は都会のオフィスに保管されているが、サイコレイパーにやられたならそれもあてにならない。サイコレイパーは改変した記憶に合わせて日記なども改変してしまうからだ。

 しかし、プロの目で見ればヒントは見つかる。改変は必ず何かの痕跡を残すからだ。

 オレは、都会のオフィスに戻る必要もなかった。ここにある自分の日記の中に微妙な矛盾を発見したのだ。普通なら見落としてしまいがちな矛盾だ。まるでオレが2人いるようで、話が連続していない箇所がある。まるで別人が続きを書いたような感じだ。

 オレは結論を出した。

 オレは記憶の改ざんをされている。サイコレイパーが頭をいじられるなど、普通ならあってはならないことだ。だが、もしされてしまったばあい、気付くことは難しい。記憶が丸ごと入れ替えられてしまうのだからだ。しかし、十分に警戒していたオレを出し抜いて偽の記憶を植え付けることができる凄腕となると数が限られてくる。おそらく全世界に3人だろう。うち2人は女であり、ベッドを共にした関係すらある。彼女らが裏切るとは思えない。とすれば、残った候補は1人。オレはそいつに電話をしようとした。しかし、直前でやめた。記憶が改ざんされているとすれば、どう考えても犯人は自分の記憶をオレから消していくからだ。オレを出し抜ける奴は3人だけというのも、偽の記憶かもしれない。本当は4人いて、4人目が真犯人という可能性が高い。

 だが、4人目はしくじった。重要なヒントをオレに残したからだ。謎の女、彩子はどうやらこの事件に関係しているらしい。そして、4人目は彩子の存在を見落としていた。彩子の存在がクサビになって、偽の記憶が定着できなかったのだ。

 オレは、ニヤリと笑った。誰だか記憶を消されて分からなくなってしまったが、4人目。確かに凄腕だが、オレの方が一枚上手だったようだ。

 オレは彩子の再訪を待ったりはしなかった。山を下りて麓の村でホテルを順番にあたると、すぐに彩子の宿泊先は分かった。

 オレは彩子が泊まっている部屋を訪れた。

 彩子は難しい顔でオレを迎え入れた。

 「何の用?」

 「何があったか教えてくれ」

 「覚えてないの?」

 「ま、いろいろ事情があってな」

 「いいわ」

 机の上には、ついさっきまで電話をしていたようで、電話機が引き出されて置かれたままだった。

 「でも、その前にあなたがどこまで覚えているのか。その話から始めて」

 「どうして時間稼ぎみたいなことをする?」

 「覚えていることを話しても時間のむだでしょ? 話してくれた方が効率がいいわ」

 オレは、仕方なく、サイコレイパーの詳しい話には触れないようにして、記憶を改ざんされた経緯を語った。

 「にわかには信じがたい話よね。普通なら信じないと思うわ。サイコレイパー。他人の心に侵入して心を改ざんする?」

 「でも事実だ。オレはサイコレイパーなんだ」

 そのときドアがノックされた。

 「彩子さん。警察の者です。お呼び頂き来ましたが入ってもよろしいですか?」

 「ええ。犯人がついにみつかりましてよ」

 驚いた2人組の私服刑事が部屋に入ってきたが、オレも驚いた。サイコレイプ行為は罰則規定が無く、刑事はオレを捕まえることはできないはずだ。なのに、この2人はやっと捕まえるべき犯人に巡り会ったかのような顔をしている。

 「レイプ容疑で逮捕する」

 「ちょっと待て。レイプ容疑? 何のことだ? サイコレイプは罰則規定がないから逮捕できないはずだぞ。しかも、逮捕したら与野党の大物政治家も困るはずだぞ?」

 「サイコレイプ? 何のことだ? こちらの令状はそちらの彩子さんをレイプした無職の男に対するものだ」

 「は?」

 「だから、肉体を犯したんだろう?」

 「はい。間違いなくこの男です。変装しても分かります」彩子もうなずいた。

 「馬鹿な、何かの間違いだ。そうだ、口座にはまだ手つかずの金がある。すぐ保釈金を積んで……」

 「おまえの口座には72円しか残っていないのを確認済みだ」

 「馬鹿な。じゃあ、都会のオフィスを売れば数千万円にはなる」

 「ははは。あの放置されてぼろぼろになったビニールシートテントに数千万円の値打ちがあるものか」

 「そんな馬鹿な……」

 彩子が言った。「この男、どうやら逃亡生活中に自分で都合のいい偽の記憶を作って逃げ込んだみたいです。サイコレイパーとかいう職業があると信じ込んでいるようですし」

 「あ、知ってますよ」と刑事の相棒の方が言った。「ほら、テレビドラマでサイコレイパーってあったじゃないですか。5年ぐらい前に流行った奴。美女がいっぱい出てきて、記憶を操作して惚れさせる奴」

 そしてそいつが並べた女優の名前は全てオレが抱いたことがあると思っていた相手の名前そのものだった。

 「しかし、なんでサイコレイパーなんて古いドラマが連想されたんでしょうね?」

 「決まっているわ。この男は、彩子レイパーってワイドショーで騒がれたから」

 「なるほど。サイコレイパーと音が同じですね。だから連想を……」

 「こっちも、そこまで実名出されて大損害なんだからね。落とし前だけはつけてもらうわよ、レイプ犯さん」

 オレは目の前が真っ暗になって倒れ込んだ。

(遠野秋彦・作 ©2010 TOHNO, Akihiko)

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