「実は今日とある本屋のパソコン雑誌売り場を見て腰を抜かした」
「というと?」
「これまで、最近はずっとiPhoneやiPadなどのApple製品一色だった」
「うん」
「ところが今日はがらっと変わっていた」
「どんな感じ?」
「目立ったのをリストアップするぞ」
「ええっ? なんつうか、それいつの話?」
「今日、2010年10月13日」
「でもさ。今時DOS/V製品なんてある?」
「DOS/Vは製品としては影も形も見えないが、互換機雑誌がDOS/Vを名乗って存続しているケースはある」
「でも、今時の客はもう意味不明の雑誌タイトルじゃないの?」
「たぶん、ファミ通がもうファミコンの話を載せてないのと同じなのだろう。よく知らないけど」
「しかし、何とも時計の針を逆回しにしたようなラインナップだね」
「うん、そこだ」
「なになに?」
「Linuxが躍進したという話もあまり聞かない。DOS/Vはもう忘却の彼方。Windowsも別に新しい動きがあったわけじゃない。これは過去のラインナップなんだよ」
「どういう意味?」
「だからさ。この書棚の状況は、iPhoneとかiPadに対する過剰な期待感が引いた後の光景ではないか、という気がする。気がするだけで事実かどうかはしらないけど。たまたまそういう雑誌の発売日が近かっただけかもしれないし」
「期待感は過剰だったの?」
「そうだ、本屋がiPhone本とTwitter本でフェアをやるぐらいだけど、世間のリアクションが十分に対応したかといえば、それは怪しい」
「怪しいの?」
「身近にiPhoneを買ったと自慢する人がほとんどいない。Twitterもまだまだ『なにそれ?』という感覚の人が多い。一般人のリアクションはそんなものだ。ネットの常識、マニアの常識との解離は著しいぞ」
「でもさ。それじゃそこらの街の本屋は苦しいんじゃない?」
「そうさ。だから、そういう本の比重を大幅に落とし始めたとも考えられる」
「ってことはどういうこと?」
「何が売れるか本屋にも分からないから、とりあえずiPhoneブームの前に書棚を戻してみたって感じではないのかな。よくわからないけど」
「笛吹けど客は踊らなかったという感じなのかな」
「たぶん、一般人の感覚を読み違えているのだろう」
「というと?」
「古ぼけて何の新鮮みもないAdvanced/W-ZERO3 [es]ですら。未だキーボードをスライドさせて使っていると、『それなに?』って興味津々で面白そうに見ちゃう人がいるんだからさ」
「ははは」
「結局ケータイでも、通話とメールぐらいで、アプリなんて使う人はマニアだけで、一般人がiPhone見て欲しくなるかっていうと、難しいだろうな」
「欲しくはならない?」
「欲しいと思うかもしれないが、何万円も出すだけの価値があるかというと微妙だろう」
「どこでも地図が見られたら便利だと思うけど、滅多に地図なんて見ないってことだね」
「しかも数百円のポケット地図で用が足りちゃうしね。目的地への道順さえ分かればいいのであって、指先で拡大縮小なんて別に必要じゃないし」
「それで、君はこれからどうなると思うんだい?」
「それはワカラン。というか、この先本屋のパソコン雑誌の棚がどう変化していくのか、知りたいのはこっちの方だ」
オマケ §
「そうそう。AppleがiPhone開発を開放って話を書いたけどさ」
「うん」
「仮にこの解釈が正しいとすると、状況から見て、マスコミの過剰なiPhone/iPadフィーバーが沈静化して殿様商売が難しくなったから制限を緩和したって解釈すると筋が通るね」
「背に腹は代えられないってことか」
「今のままでは踊ってくれない層に踊っていただくには、殿様ではいられないのだろう」
「無理難題をふっかける馬鹿殿の言いなりになるなんてアホらしいと思われちゃ終わりってことだね」
「でも、既に十分に身勝手な馬鹿殿だって言うイメージを開発者にまき散らしちゃったからね。この先どうなるかはおいらにも分からないよ」