「人から教えられてこういうURLを見たのだがどう思う?」
「当たり前のことしか書いてないね。ほんとんど常識レベルの話だろう?」
「そうさ。ほとんど常識レベルさ。でも、一般の世界に目を向けると知られていないというのも事実だぜ」
「うっそー」
「素人さんに聞いてごらんよ。プログラムを作ることとコードを書くことの区別なんて付いてないからさ」
「どういうこと?」
「プログラムというのは、工場の流れ作業のように構成要素を書いて次々に付け加えて、最後の部品を付けたら完成。まあ、そんなものだろ?」
「走らせたらすぐ落ちそうだね」
「テストという概念は無いんだよ」
「でもバグがあるとすぐ怒るじゃない」
「作っているときに注意していればバグなど入らないはずだと思っているのだろう」
「ははは。それは無理。絶対無理。バグなんてどんなに注意を払っても入るときは入る」
「だから素人の要求は矛盾してしまうが、それは珍しいことではない。何せ素人だからね」
「でもさ。意外とパソコン通の人もそういうこと言ってないかい?」
「言ってるさ。通を気取ることと、プログラミングが分かっていることは別だからね」
「どういうこと?」
「百万のパソコンゲームをクリアしたゲームの達人でも、開発経験が無ければ開発の素人だからさ」
「そりゃそうだ」
「あるいは入門書を百万冊読破しても、書かない奴は永遠に開発の素人さ」
「ああ、あるある。書き始めて初めて分かることって多いよね。入門書が教えてくれないハードルの数々」
「あるいは言語の機能を確認する短いサンプルソースだけ書いて役に立つプログラムに縁がないご意見番」
「意見は多いけど、現場レベルではピンと来ない人だね」
「だからさ。パソコンに詳しいこと、パソコンを長い時間使っていること、プログラミングの方法を知っていることは、実際には素人でしかないんだよ」
「当然だね」
「でも、本人はしばしばそれが分からない」
「ははは。それも良く分かるよ。良くある話だよ」
「だから、当たり前の話を、あまり知られていない話として紹介してしまうわけだ」
「なるほどね。一理はあるよ」
けして新しくない §
「でもさ。この手の話ってぜんぜん目新しくないんだよね」
「というと?」
「1980年代中期にもうそういう話があった」
「ええっ?」
「1980年頃までのパソコンマニアってプログラミングの知識があって当然だったんだ。たとえばゲームのリストを見て弾を発射する部分を書き換えてスペースバー押しっぱなしで連射するように改造する、なんてことはあまりも当たり前だった」
「うん」
「機械語まで分からなくても、BASICをかじっているのは当然だった」
「そうだね。そもそも、Runで実行させるのもBASICのステートメントだしね」
「でもさ、1980年代も中頃になると雲行きが変わってきた」
「というと?」
「既製品の大規模なゲームがどんどん出てきて、マニアはそっちを優先するようになってきた」
「どういうゲームだろう?」
「WizardyとかUltimaとかね。日本でもいろいろあったよ」
「なるほど」
「その段階で、既に『こういうプログラムを作ってパソコン雑誌に掲載された』というのがマニアの自慢話にならなくなり、むしろワードナをこんな短時間で倒したという話の方が自慢になってくる」
「なるほど」
「だから話が通じなくて困るという話が、既に1980年代からあったわけだ」
「ははは。目新しい話じゃないってことだね」
更に余談 §
「でもさ。ゲームで遊んでいるだけなら、それはパソコンに使われているだけの人生だよ。やはり何かを生み出さないとさ」
「うん。でも、たとえゲームだろうと作るのは凄く大変だよ」
「だからさ。ANGFでは拡張可能という機能を入れてあるんじゃないか」
「どういうこと?」
「最初から最後までゲームを作ると凄く大変だけどさ。既存のゲームを拡張するモジュールならずっと作りやすいはずだ」
「なるほど」
「だから、1980オタクのヒデオでは、何もイベントが起こらない駅が多数収録されている。拡張すべき余地なんだ。もちろん、ユーザー側の問題として拡張できる隙間として想定されたものだ」
「しかし、そのことが本当に理解されるのかね?」
「さあね。それは分からんよ」