「昨日のスペース1999のラッセル教授と佐渡先生がかぶるという問題。第1シーズンでは森雪相当のマヤが出てこないわけで、文句なくラッセル教授がヒロインという認識。ならばSPACE BATTLESHIP ヤマトも『ヒロインは佐渡先生』として見られるのではないか、という思いつき。その派生形が以下だ」
本題 §
「SPACE BATTLESHIP ヤマトの謎999の時間がやって参りました」
「今日はカメハメから伝授された999の必殺技の1つを紹介してくれるわけですね?」
「謎や、必殺技やのうて謎や」
「というわけで、何が言いたい?」
「SPACE BATTLESHIP ヤマトには、森雪がヒロインとしては固すぎるという問題がある。ガードが堅すぎて、近づくことも難しい。藪ごときが近づいて誘拐できたアニメとは違う」
「古代も古屋も殴られたものね」
「殴られないまでも、加藤達の扱いも冷たすぎる。まともに会話できるのは、子持ちの島ぐらいだ」
「それで?」
「じゃあ、男という馬鹿な動物を受け止める優しさはどこにあるんだろうか」
「相原?」
「相原は実は古代が筋トレしてても呆れるだけでときめいてくれない」
「佐々木?」
「背景ではしゃいでいるだけで、出番はあまりに少ない。というか普通に見ていると印象に残らん」
「じゃあ、何が言いたいのだ?」
「実は盲点であったが、佐渡先生こそがそのポジションではなかろうか」
「ええっ?」
「酒と猫に目が行きすぎていた」
「どういうこと?」
オリンピックベイビー §
「高島礼子について、詳しく調べる機会が今までなかった」
「どうして?」
「しょせん脇役だと思っていたからだよ」
「なるほど。そこが間違った思い込みという奴なんだね」
「しかし、ある日偶然知ってしまったのだ。たまたまWikiPediaを見たときにね」
「何を?」
- 高島 礼子(たかしま れいこ、1964年7月25日 - )
「これがどうかしたの?」
「漠然ともっと若いような気がしていた。しかし、おいらと同い年なのだ」
「ええっ?」
「更に言えば、山崎監督も同い年になるのだ」
「まさか。それが理由なのか?」
「主演の木村拓哉(1972-)はそこから僅かに若くなるが、数年差で同世代なのだ」
「それってどういうこと?」
「古代から見て、ため口で話せる年齢の近い叔母って感覚だろう。佐渡先生は」
「なるほど」
「古代が森雪に行くのはある意味で当然だ。ずばずば本音を見抜かれちゃう口うるさい叔母は恋人にならん。逆に、本当は強い憧れがあるのに失望した屈折のある若い娘の方がいいいだろう。それは当然だ。しかし、昔のヤマトファンの世代はもっと年齢層が高い。1964年生まれでもかなり若い方になるのだ」
「ってことは?」
「観客の目線と古代の目線は同じではない」
「まさか」
「古代の目線は森雪に行くとしても、観客の目線は森雪に行かないかもしれない」
「じゃあどこへ?」
「感情移入して入って行く径路として、佐渡先生は意外とマッチしているのかもしれない。世代的にね」
「うーむ」
「しかも、佐渡先生とほぼ同世代で、しかもより高い年齢の客としたらヒロインになり得るよ」
「そこまで言えるのだろうか」
「言える。その理由もはっきり分かった」
「どうして?」
「印象が大きく違うので見落としていたが、実はRAILWAYSで主人公の奥さんを高島礼子が演じていたのだ」
「君も見て大絶賛の映画だね」
「そりゃそうさ。一畑電車の映画と思わせてちゃんと京王に来て7000系で研修していくんだぜ。でかでかと京王沿線に出番があるご当地映画だ」
「ははは」
「RAILWAYSは、妻と娘がヒロインと言える。主人公が妻と娘の愛情や尊敬を取り戻す映画と言えるが、割とすぐ理解してくれる娘と違って、妻こそが難物で東京から来てくれたときはやはり感動ものなんだ。そういう意味で、筆頭のヒロインだよ」
「なるほど」
「RAILWAYSで文句なく筆頭のヒロインと称することができる女優が、どうしてSPACE BATTLESHIP ヤマトで凡庸な脇役と見なせるのだ?」
「うーむ」
「だからさ。佐渡先生は医者という記号ではないわけだよ」
「そうか」
「それゆえに、沖田が佐渡を見送る最後の台詞は『佐渡先生ありがとう』ではなく『佐渡さんありがとう』になるわけだ」
佐渡対徳川という問題 §
「話はまだ終わらん」
「いったいなんだい?」
「以下は、WikiPediaの高島礼子からの引用だ」
- OLやカーレーサーとして活躍した後、1987年にはレースクイーンに転身。1988年には『とらばーゆ』のCMでデビューする(これがきっかけで『暴れん坊将軍』に出演する)。
- 21歳という最年少でA級ライセンスを取得したことでも知られる。
「カーレーサー?」
「これは重要な意味を示唆する」
「なんだい?」
「戦闘機のパイロットは整備員を大切に扱うという」
「整備に手を抜かれたら自分が落ちて死ぬからね」
「同じように、カーレーサーも整備を行うメカニックを大切にする必要がある。たぶんな」
「そうか。整備に手を抜かれたら自分がクラッシュして死ぬからね」
「で、徳川機関長も、波動エンジンを整備するメカニックの一種だ」
「そうか。一緒に酒を飲むにしても、徳川機関長に理解のある立場を取れるということだね」
「それは重要なことなんだ」
「分かったぞ。徳川に手を抜かれたら自分達全員が死ぬわけだ」
「そのことが実は演技の水準ではなく、リアルの水準で分かっているから自然な演技ができる。本当に自分で分かっているからね」
「うん」
「更に言えば、レースクイーンに転身という経歴も重要な意味を持つ」
「それはどういうことだい?」
「メカで戦う男達をやや距離を置いて見守るという立場も知っているからだ」
「むむ? もしかして?」
「そうだ。SPACE BATTLESHIP ヤマトでの佐渡先生も、通常の命令系統の外側に位置して、若い戦う男女の苦悩を受け止める役目を背負う。立場は同じ船に乗り合わせた運命共同体であるが、特定の配置を持たず当事者ではない。ワープになると走って付くべき配置もなく廊下で誰かを呼び止めて質問するぐらいだ」
「そうか、やや距離を置いてメカで戦う男女を見ている立場か」
「かといって、勝利への貢献が何も期待されていないわけではない」
「貢献? レースクイーンというのは企業の広告塔で、レースとは直接関係ないのではないかい?」
「そうでもない。レースに有利なムードを盛り上げたり、場合によってはレーサーに日傘を差し掛けるとか、そういう仕事が発生する場合もある」
「うーむ」
「メカで戦う男女は『メカを扱う』ことがメインになるが、レースクイーンも女医も実は『メカで戦う男女』という『人を扱う』仕事になるわけだ」
「なるほど」
「しかも、狭き門の専門職でもある」
「医者は分かるけど、レースクイーンも狭いの?」
「特に選抜された容姿端麗の女性しかなれないのだよ」
「そうか」
「あそこまで行くと、単にちやほやされたいだけの女ではなれないだろうな」
「そんなもの?」
「近い仕事としては、イベントコンパニオンというのもあるが、最近は色っぽい服で着飾って立ってるだけでも専門知識で受け答えできるスキルが要求されるというしね。質問されたら答えられるように」
「かなり大変そうだね」
「きらびやかに見える世界の裏側には、苦労の積み重ねがあるものさ。まあ運が良ければ苦労せずに行けるのかも知れないけどね」
オマケ §
「しかし、君は妙にレースクイーンにも詳しいね」
「別に詳しい訳じゃない。サーキットにカメラ持って出かけたこともないしね」
「本当に?」
「本当だとも。じゃあもうちょっと正確に告白してやろう?」
「告白できることがあるんだ」
「あるある。実は2000年前後に、少しレースクイーンのムックを買っていたことがある」
「それはどうして?」
「ちょっと興味があったからだ」
「じゃあ、元レースクイーンが脱いだ、なんて写真集も一杯もってるわけ?」
「それはノーだ」
「なぜ?」
「おいらの興味はレースクイーンというシステム、表現にあるわけで、コスチュームを脱いだらもうレースクイーンではない」
「は?」
「コアなレースクイーンのマニアは『脱いだら意味がない』と考える……らしいぞ」
「ヌードは着衣より価値が上がるんじゃないの?」
「そうじゃないのだ。レースクイーンはコスチュームを着ているからレースクイーンなのであって、脱いだらレースクイーンではなくただの女になってしまうのだ。そういう発想法をする」
「それは君の独りよがりじゃないの?」
「意外とそうでもない。たとえば、矢野健太郎のRace Queen Angelの主人公もそう発想する」
「ええっ? 矢野健太郎って『ネコじゃないモン!』の矢野健太郎か?」
「さすが矢野健太郎だ。本当に濃いマニアの心情を分かっている」
「そうか。じゃあそのうちに読んでみるよ」
「新しい本でもないし、Amazonで中古1円だから安く買えそうだ」
「そうか」
「でも注意しろよ」
「何に?」
「たぶん18歳未満は買えないからな」
「そういう本かい」
「女性が顔をしかめるようなシーンが多発しますが、そこはここで注目すべきポイントじゃないので、ヨロシク」
「昔、トリップ・トラップ・トルーパーでも同じようなことを言ってなかったけ?」
「助けに飛んでくるフィンランド空軍のフォッカーD21にときめくコミックだけど余計なエロシーンが山ほどあるだけだ」
「無駄なエロだねえ」
「商品として売るには余計な要素も必要なんだ」
「そうか」
「でもこっちはAmazonでの中古価格が今見たら¥2,979よりになっていた。定価の何倍だよ」
オマケ §
「『ネコじゃないモン!』といえば」
「いえば?」
「当時はリアルタイムで、けっこう自分たちの世代の夢と重なっている面があったな」
「へえ」
「絵をやりたいとか、カメラマン志望とか、まわりにいっぱいそういう同世代の若い人がいたよ。リアルに」
「なるほど」
「おおむね挫折しているのも漫画通り」
「ははは」
「ちなみに、谷山浩子の『ネコじゃないモン!』のイメージアルバムのLPは持ってたぞ」
「明かされる意外な過去。なんとマニアック」
「でも、佐渡先生なら酔ってこう言う」
「なんて?」
- ネコじゃないモン! ただのネコ(と酒)好きだモン!
「宇宙は大きいのだ。そして果てしないのだ。酒なんて無いのだ。土星行っても冥王星行ってもおまえに買ってやるお土産は売ってないのだ」
オマケ2 §
「ヤマトは父か、ヤマトは兄か、それともヤマトは我が友か」
「ヤマトはネコ派だ」
「は?」
「犬派ではあり得ない」
「犬に居場所はないのかね」
「忠犬はSPACE BATTLESHIP ヤマトの場合斎藤が役目を担う。あらためて動物の犬を載せる必要は無い」
「ははは。結局犬はいるんだ」
「きっついな」
オマケWAYS一畑の夕日 §
「しかし、RAILWAYSは非常に魅力の多い映画であるが、更に1つ加わった」
「ヒロインがなんと佐渡先生!」
「しかも当初は主人公をいたぶるサド気質」
「それはなんか違うぞ」
オマケの感想 §
「それにしても、総力戦の迎撃になったな」
「RAILWAYSまで使って解釈にいそしむことになろうとは」
「あらゆる過去がSPACE BATTLESHIP ヤマトを解釈するために動員されている、のかもしれない」
「まさに決着を付けるときが来た、という感じだね」
「いやいや。アニメのヤマトには決着が付きつつあるが、SPACE BATTLESHIP ヤマトはむしろ開始点だ。可能性が開いている」