「西永福にもこだわっているが、もう1つ成田問題にも最近こだわっているのだ」
「成田? 空港?」
「ちがーう。杉並区の成田だ」
「東京の人口重心と言われている場所だね。でもなぜ成田?」
「善福寺川が鋭く屈曲して北に突出しているからだ。そして、高井戸線の送電鉄塔、変電所、空中から地下に降ろす鉄塔、交通公園、水路跡らしい道路など、面白いものが揃っている」
「そうか」
「地理的に、杉並区の中でこれほど面白い地形は他に無い。また軍事的にもおそらく重要だ。3方を水に囲まれた高地でとても守りやすい」
「そんなに?」
「だからさ。尾崎熊野神社とか軍事的拠点としての効能を期待された神社では無いだろうか、という気もする」
「そうか」
「この尾崎熊野神社の前の道が不自然なのだが付け替えられている疑惑がある。本来は、参道にまっすぐ入る道では無かったのだろうか」
「そこは不詳ってことだね」
「というわけで、前振りは終わった」
「えっ、これが全部前振りなの?」
「そうだ。この突出点の飛び出した場所の延長線上になにがあると思う? 北岸の善福寺川を渡った先に何があると思う?」
「分からない」
「杉並区役所だよ。その他に杉並税務署やその他の施設もその周辺にある。杉並区の政治的中心だ。荻窪が中心のように思われているが、そうじゃない。杉並区の政治的重心は南阿佐ヶ谷にあるんだ」
「えっー」
「だからさ。この突出点はこのあたりで最も青梅街道に善福寺川が接近する場所であり、それが何らかの意味を持っていると疑っているのだよ。そこが杉並区の政治的な中心になったことに対してね」
「でも川沿いじゃ無いじゃん」
「そうだ。あくまで青梅街道沿いに区役所はあるのだ。暴れる川に側に区役所は置きたくないだろう。でも、水に近いことは意味があったはずだ」
「なるほど」
「まあ全ては不詳だけどね」
「わははは」
「でも成田は凄く面白い場所だ。ワクワクするね」
余談 §
「成田の突出部には昔から行ってみたかったのだ」
「そうか」
「で、自転車の機動力で行けるようになった。徒歩では、ちょっと厳しい」
「なるほど」
「ところがはたと気付いた」
「何を?」
「成田の交通公園、実は子供時代に自転車で何回か行ったことあるんだ」
「えっー?」
「正確な位置を把握していなかったが、地図を見れば一目瞭然。しかも変電所の横には交通公園の入り口はこっちと書いてあるし」
「遠くまで行ったつもりがイマイチだったね」
「灯台元倉氏だ」
「灯台もと暗しじゃないのか?」
「灯台守の元倉さんが言ったのだ」
「本当かよ」
「嘘だけど」