「ヤマトの音楽はジャズ系とオーケストラ系の綱引きがあって、オーケストラ系が最終的に勝った(かもしれない)と、というような話は前に書いたと思う」
「うん」
「ところが、The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999のハーロックのディスクを聴いていて驚いた。ジャズテイストバリバリだぜ」
「えっ?」
「うろ覚えなんだが、交響組曲キャプテンハーロックのライナーに、ジャズでやろうかと思ったらオーケストラでというリクエストが来たと書いてあった気がするが、実はそんな単純な話じゃ無い」
「どういうこと?」
「交響組曲キャプテンハーロックをあらためて聞き直して分かった。これは、編成はオーケストラでも、リズムやメロディーはジャズ系がメインなんだ。より正確に言えば、入り口は壮大なシンフォニー風だけど、クライマックスに来ると急にジャズテイスト全開で突っ走る。どうせ偉い人は最初だけ聴いて納得するから途中から変えちゃえって感じだ」
背景の問題 §
「背景にあるのは、ジョン・ウィリアムズのスター・ウォーズ音楽の世界的なヒットであろう。あれでSFは古典的なオーケストラが似合うという変な誤解が広まった」
「誤解なの?」
「そうだ。別に作品の狙い目ごとに似合う音楽が変わっても不自然じゃない」
「なるほど」
「事実として、交響組曲宇宙戦艦ヤマトはジャズテイストの入ったビッグバンドだったのだ」
「あれ?」
「うん。だからさ、世の中の常識通りに純然たるシンフォニーとして交響組曲キャプテンハーロックを作ると、交響組曲宇宙戦艦ヤマトに慣れた客は退屈して寝ちゃうのではないか、という懸念が当然あったのでは無いかと思われる」
「ええっ? 寝ちゃうの?」
「交響曲宇宙戦艦ヤマトは交響組曲のノリで聞きに行くと寝られるぞ」
「えーっ」
「だから、オーケストラでやりたいという要求は要求として、でもそれじゃ客にアピールしないから、形式としてのオーケストラを使いつつ、ジャズっぽくやってしまったのが交響組曲キャプテンハーロックなのかな、と思った」
「まさか」
「実は、交響組曲キャプテンハーロックに入っていないBGMの中にはほとんどジャズというノリの曲まであるんだ。The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999に収録されていた」
「ひぇ~」
であるから §
「だからさ。初期のアニメ音楽の世界には、おそらくジャズ系、クラシック系の2大潮流があって、綱引きをしていた。後からそこにロック系とかエスニック系とかダンス系が加わってくるのだが、実はどの路線も決定的に対立せずに複雑に絡み合って結果としての音楽を作り出していく。その結果、映像よりも遙かに重厚な音楽世界が構築されてしまう。ヤマトは好きじゃ無いが音楽はいい、という人もけっこういるし、おいらもハーロック大好きとまでは言わないが音楽はいいと思う」
「アニメの音楽史はアニメそのものとは別個に語りうるってことだね」
実はヤマト関連で語って良かったハーロックの音楽世界 §
「The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999の解説なんだが、何となく開いてあっと思った」
4-Dは、ピアノとマリンバの音がなまめかしいマゾーンのテーマ。とろけるようなピアノを弾いているのは、ピアニスト・作曲家として著名は羽田健太郎氏である。
「ハネケン!」
「結局ハーロックはヤマト関連で語っても良かったんだよ」
「4-Dって何?」
「交響組曲素材だそうだ。交響組曲でいうと、4曲目のまんなか辺」
「曖昧だな」
「とろけるようなピアノのあるところだよ」
「ちなみに、The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999の構成・音楽解説の腹巻猫さんのサイトは発見した」
「それで?」
「いきなり、佐藤直紀の名前が書かれていて焦った。遠くまで遠征したはずなのにホームグラウンドの名前を見た気分だ」
「どうしてそんな名前が出てくるの?」
「プリキュアの作曲者で、CDの構成・解説・取材を腹巻猫さんが担当したかららしい」
「プリキュア! ぜんぜん君が話題にしてないタイトルだけ」
「うん。だって見てないもん」
「ぎゃふん」
「でもさ。1つだけ分かった。結局、そこも地続きの世界なんだよ」
「えーっ」
「プリキュアは見てなくてもその前にやってるOOOは見てるわけだし」
「地続きねえ」
「ゴセイジャーのアルバムの解説も書いているらしいが、ゴセイジャーはCD買ってないけどテレビでは見てたし。直接の接点は無いけど、立っている場所は連続しているらしい」
「連続してるのか」
「意外と、今回の戦隊映画のクライマックスでゴレンジャーの主題歌が流れた件とか、話が噛み合う可能性もある。まあ相手の趣味もよく知らないので、あくまで可能性だけどね」
「そんな歌が流れたのか」
「しかし、ハーロックの音楽語りには少しだけ意欲が出てきた。ハーロックを語る気は無いが、1970年代のアニメのハーロックの音楽はもっとこだわってみたい」
「それで?」
「まずは、交響組曲キャプテンハーロックのCD発掘だ。音質を比較するには、同じ条件で聴かないと意味が無い。手元にあるのは自前のCDからMP3化してそれを更にAAC化したファイルなんだ。The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999の方はまだ2枚しかデジタル化していないがWMA経由でAACなので条件が違う」
「そこまで行くと悩ましいね」
オマケ §
「ちなみに、The Music Encyclopedia of LEIJI MATSUMOTO 1999の最後に書かれた構成者早川優氏のコメントのコメントの一節に『あの「交響組曲」に針を落とした感動の日』というフレーズがあるのだが、やはりどこかで接点があるんだよ」
「それは交響組曲キャプテンハーロック?」
「まさか。こういう世界で具体名抜きで『交響組曲』と言ったら歴史的にヤマトしかあり得ない」
「ひぇ~」
オマケ2 §
「ハーロックといっても全部フォローしてない。たとえば、松本版ヤマトコミックは2セット持ってるけど、ハーロックコミックは1セットも持って無い。昔、ちょっと読んだきり」
「ひぇ~。2セットってなんだよ」
「文庫サイズのコミックとコンビニ版だ」
「ひぇ~」
「ぬるい部類だと思うよ。これでも。まあ資料的には十分だからこれ以上は求めてないけど」
「ひぇ~」
「1970年代のハーロック音楽へのこだわりは、だから例外的だ」
「そうかもね」
「まあ、もっともSSXの主題歌歌えと言われたら歌っちゃうけどね。俺たちの船出だ~♪」
「ひぇ~」
「まあそういうわけだから、ヤマト関連もけっこうぬるいけど、ハーロックはそれに輪を掛けてぬるい」
「信じられないぞ」
「まあ、むかしむかしと言われると本当ですよ、とこたえちゃうけどな」
「ひぇ~」
「信じないかも知れないけれど」
オマケIII §
「わいは猿や。プロゴルファー猿や」
「それで?」
「私は去る」
「ぎゃふん」
「それではみなさん、さようなら~」
「アンドロメダ終着駅」
「999は別口。ちょっと劇場版2作品の音楽にこだわりがある。大したこだわりじゃないけどね。ただし、ゴダイゴは別」